リセットした

十勝の田舎町で暮らしている。僕はきのこ農家だ。就農して3年目。いろいろと挑戦させてもらっている。栽培も順調なので、品種も早生から旨味重視のものに切り替えた。この秋から本格的にそのきのこの収穫がはじまる。

おそらく収穫量は落ちるだろう。けれども、それでいいのだ。原木栽培のきのこが美味いというわけではない。賢い消費者は分かっている気がする。”原木栽培”の名前にあやからず、最高を目指したいのである。

とはいえ、販売力を強化しなければ意味がない。加えて、副業的な収入の支え的なものもほしい。昨年はカレンダーを作ったが好評だった。しかし写真販売もやりたいが、いい案が浮かばない。ポストカードも然りだ。どうしたもんだろう。

そんな折、NFTのブームが来ていた。すこし触ってみたが参入のハードルは低いと感じた。知識とPCでの操作が必要だが、どう考えてもきのこ栽培の方が難しい。それと比べれば朝飯前だ。僕はNFTを発行することにしたのである。

結論から言うと大失敗した。経費の回収はゼロ。大損とまではいかないが、いい勉強代になったと思う。原因は僕の準備不足と認識不足。NFTに対する考え方が世間とずれていた。悟ってからの撤収は超速。おかげで後腐れなく済ませられた。運も良かった。それだけは上手くいったのである。

ただ、精神的なダメージは大きかったと思う。失敗したことより、準備不足になることが分からずに進めたことは僕らしくなかった。少なからず盲目になっていたと思う。その原因を遡れば、やはり本業の不振があげられる。どうしたものか。

時間に余裕もなくなっていた。これは一度リセットした方がいいのかもしれない。気が付けば小さなことをやり過ぎていた。いま一度、スタートに戻ることが得策な気がしたのである。

実は近くの支援学校の生徒さんを受け入れていた。軽度の障害者にとっては、丁度いい働き口らしい。正直に言うとマンパワーの足しにはなっていなかった。準備の必要性を考えればマイナスだろう。それも少し前にお断りをしていた。僕の余白が無くなっていたからだ。おかげでNFTの準備を出来ていた節もある。

そんなこともあったから、他の事業も整理した方がいいと思った。具体的にはSNS、ブログ、web通販、加工販売、直売所、DMの送付。これらを止めた。かなり悲しかったが、このまま続けていても、伸びしろはないだろう。とにかく一旦リセットする。次のことは焦らずに考えることにした。

朝の出勤は早い。まずはハウス内と森の榾場の観察だ。そしてきのこの写真を撮る。それが終わってから収穫をして出荷センターに卸す。発生操作をして、森の榾場で天地返し。榾木を1本づつひっくり返していく。夕方になったら撤収。夜ごはんを作って食べて、寝る前に写真を編集してHPにアップロード。なかなかに楽しい暮らしをさせてもらっている。

焦ることはない。いまは今の暮らしを楽しむ。久しぶりにPCゲームもはじめた。フィルムで撮ったりもした。やはり写真は楽しい。もうすこし写真に向き合う力を強くしてみようか。そんなことも思いはじめたのである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?