寒かった
十勝の田舎町で暮らしている。僕はきのこ農家だ。今年は栽培スケジュールを変えてみた。すこし余裕を持たせ自由な時間を謳歌してみたのである。加えて夏には怪我をしてしまい、半月ほど農作業から距離を置いてしまった。
それの影響を受けたのは冬。準備の遅かった薪は、若干だが湿気っていた。乾燥時間が不足していたのである。薪ストーブの温度は上がらない。ハウス内気温も低空飛行。きのこの成長スピードが遅くなる。収穫量は激減した。
対策は用意していた。少量だが乾いた薪はあった。それを焚きつけに使う。さすれば、しょうしょうの湿り気があっても薪は燃える。だが、使い方を失敗していた。乾いた薪を温存し過ぎていた。もっと使えばよかったのである。
薪の積み方にも問題があった。古い方から使えないのである。つまり、最後に積んだ薪から使わなければならない。一番乾いてない薪からだ。これはどうにもならない。だが、徐々に乾いた薪になっていく。そのうち焚きつけようの薪は要らなくなるはずだ。それは確認できている。温存の必要もないのだ。
そのことを忘れていて、2週間ほどハウス内は寒かった。収穫量も減るわけだ。すると考えもネガティブになる。次の案が浮かばない。僕は今、農園の存続のために動いている。課題は山済みだ。それをひとつづつ崩してる。けれども収穫量が少ないと止まってしまうのだ。
農家の所得は上がりにくい。その原因は様々だ。単価が上がらない理由も、単に営業不足なだけではない。在庫を持てないことも、その原因のひとつだろう。現に、芋類等で上手く在庫を作っている農家さんは稼ぎもいいらしい。ならば、きのこも在庫を持てばいい。営業が上手くいかないのであれば、営業で使える手札を増やすことも必要だと思う。
僕は乾燥椎茸の再生産を進めていた。以前は効率の悪さで撤退した。灯油を使う大型の乾燥機では、きのこを大量に用意しないと、グラムあたりの経費が膨らんでしまう。日々のコツコツとした生産には不向きであった。
故に小型の電気乾燥機を導入することにした。試験機なのでamazon購入。だが、ここでトラブルが発生した。予定日になっても乾燥機は届かない。僕のネガティブも最高潮のときだった。選択を間違ったのかもしれない。注文はキャンセルして、別の乾燥機を注文した。すると、遅れていた乾燥機が届いてしまった。しぶしぶ返品。時間だけが過ぎていく。ネガティブなときは運も無いようだった。
とはいえ、ハウス内気温は回復した。収穫量も回復。僕の気持ちも踊り出す。そのタイミングで乾燥機は届いた。予定よりも少し早かった。ポジティブなときは運もあるみたいだ。
導入した小型の電気乾燥機はトラブルが多かった。だが、ポジティブな僕にとって、それは問題ない。多少のトラブルも楽しんでいたと思う。解決できないものもあったが、それは他の部分で頑張るつもりだ。
それよりも栽培を続けることが大切だ。毎日の収穫量は僕の気持ちに直結している。そう、豊作が続けば何でもできる。就農してから5年が経った。またすこし農家という身分に染まってきたのかもしれない。