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何もかもが異色の作品(「殺しが静かにやってくる」のネタバレあり)


先日「殺しが静かにやって来る」という映画を見た。
原題は「Il grande silenzio」、イタリア語で「大いなる静寂」という意味らしい。
個人的には直訳したタイトルの方がカッコいいと思ったが、マカロニウエスタンの作品は意訳が過ぎるだろと思うような作品がたくさんあるので、まだマシな意訳だなとも思った。
(例:マカロニウエスタンの大名作「続・夕陽のガンマン 地獄の決斗」の原題は「The Good, the Bad and the Ugly」で直訳すると「善玉、悪玉、卑劣漢」となり、もはや意訳の域を超えている。)
この作品の監督はマカロニウエスタンの巨匠セルジオ・コルブッチ。そして、音楽は映画音楽界の巨匠であり、マカロニウエスタンには絶対欠かせないエンニオ・モリコーネという黄金の布陣。

あらすじ
「1898年雪深いユタ州スノーヒルの町。ロコ(クラウス・キンスキー)率いる賞金稼ぎの無法者集団がいた。彼らは賞金首はおろか無垢の人間をも手にかける冷酷非情さで人々から恐れられていた。無抵抗の夫をロコに殺された未亡人ポーリーン(ヴォネッタ・マギー)はある男に復讐を依頼する。雪原の彼方からやって来たその男の名は“サイレンス”(ジャン=ルイ・トランティニャン)。賞金稼ぎのみを獲物とし、彼が通り過ぎた後には“死の沈黙”が 訪れることからその名が付けられた凄腕の殺し屋だった。一方、スノーヒルの町はロコとその一団、そして彼らを利用して町を牛耳る悪徳判事ポリカット(ルイジ・ピスティッリ)に支配されていた。ポーリーンの家に招き入れられたサイレンスはロコを挑発し、決闘の機会を伺うが、狡猾なロコはなかなか応じない。そんな中、サイレンスの凄惨な過去が次第に明らかになっていく。彼は幼い頃に無法者一味に両親を殺され、自らも声帯を切り裂かれ声を奪われた。そして彼をそんな目に会わせた一味のひとりが他ならぬポリカットだったのだ。ついにポリカットへの復讐を果たすも深手を負ったサイレンスにロコとの対決の時が迫る─。」(Filmarksより引用)

タイトルにもある通り、この作品はとにかく異色だ。
どこか異色かざっくりまとめると、
・あらすじにもある通り、主人公は喋ることが出来ない。
・舞台は冬のユタ州。一面白銀の世界。
・主人公の愛銃はモーゼル。
といった感じ。
ここまで色々異色だと感じたところを書いてきたが、一番異色なところは主人公を含め、主人公サイドの人間が全員死ぬというバットエンドだと点だろう。
このエンディングを見た時に久しぶりに映画を見て落ちこんだ。
主人公のサイレンスは劇中で利き手の右手を負傷して銃が撃てなくなってしまう。
ここまでは割とどの映画でもある展開なので、きっと見ている側をあっと言わせるような逆転の一手を打ってハッピーエンドで終わるかなと思っていた。
しかし、この映画では待ち構えていた賞金稼ぎ達にあっさり左手も撃たれて、サイレンスはあっけなく殺されてしまう。
そして、賞金稼ぎ達に捕まっていた人達もサイレンスの恋人も殺されてしまう。
これまで見てきた西部劇は最後は必ず主人公が逆転して終わっていたのでこの映画を見た時に衝撃を受けたと同時に、確かに世の中は結局ずる賢くて汚い奴がが勝つよなとも思った。
あと、モリコーネの音楽もずっと物悲しい感じがして、この映画の雰囲気づくりに一役買っている。

コルブッチの「豹/ジャガー」はあまり刺さらなかったが、この作品はとても楽しめた。
「豹/ジャガー」では男の熱い友情を描いておきながら、「殺しが静かにやってくる」では世の中の無情さも描けるコルブッチは作風が広いと思った。


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