社内生成AIサービスの圧倒的な育ち方
この記事は #Ubie 生成AI Advent Calendar 2024 11日目にエントリーしています。
はじめに
2024年、Ubieは生成AI(Generative AI)活用において新たなステージへと踏み出しました。私たちはPatient Centricityを目指す上で立ちはだかる障壁に真っ向から挑んでおり、その一環として生成AIを用いた業務変革を推進しています。本稿では、私がファーマイノベーション事業本部(以下、PI)にてBusinessPartnerとして展開した一連の取り組み、その中で生まれたエンジニアリング上の革新、そしてユーザー主導のカルチャー醸成を通じて、Ubieがどのようにして生成AI活用を推進しているか具体事例をご紹介します。
(生成AIをの利活用推進するきっかけは 前回の記事 をご参照ください)
BusinessPartnerとしての挑戦 : 生成AI活用の架け橋
PI領域でBusinessPartnerを務める私が直面したミッションは、生成AIを単なる「技術トレンド」ではなく、実務の本質的な変革ツールとして根付いていくことでした。その背景には、PI特有の膨大な情報量や商談準備プロセスが存在することでの工数増大がありました。
その中で、どのようにメンバーの業務における課題を情報収集し、それに寄り添ったソリューションがうまれていったかご紹介します。
インタビューによりビジネスプロセスの解像度を上げる
PIでは、医療文献からの疾患調査、お客様との大事な会話の整理整頓、社内知識資源の横断的活用など、多様な業務が複雑に絡み合います。この領域に生成AIを効果的に組み込むには、何よりも現場ニーズの正確な把握が不可欠でした。
私はBizDevメンバーと毎週定期的なミーティングを開催し、ビジネスプロセスの全体像ヒアリングから各ステップにかかる時間の情報、それらの詳細をヒアリングして改善ポイントを探りました。
ひずみチャンネルにより課題を収集する
弊社では何か業務上の違和感や気づいた点、課題を「ひずみ」と呼んでいます。この「ひずみ」は業務の滞りを指す良質なProduct Backlog Item(PBI)となるため、余すところなく収集したいところです。
そこでまず私はもともとあった#pi-zatsu-hizumi というSlackチャンネルに所信表明をすることでドシドシ教えて欲しい旨をアピールしつつ、具体的にSlackチャンネルに投稿された後は間違いなくハンドリングできるようJira Service Managementを利用して自動的にチケットが起票する仕組みを導入しました。
ひずみの起票フロー
ユーザーから直接投稿される or Emoji により転送される
Jira Service Management によりチケット起票される
Slackスレッド内で会話するとJiraにもSlackにも記録される
ステータスをJiraで管理し、クローズまでトラッキングする
「お茶会」により最新機能をすぐに試してもらう
すでにPI組織では日々のコミュニケーションを大事にする「お茶会」という仕組みがありました。週に1回は雑談をして、偶発的に知ることができる情報から作業効率が上がることを狙いとした癒しの時間です。
この開催者に許可を得て、生成AIのソリューションについてざっくばらんに会話したり、最新情報をお届けする憩いの場所としてセッティングさせてもらいました。
定期インタビューやSlackでの情報収集に加えて、リラックスした環境で行う「お茶会」では、ユーザーの生の声を収集することができました。効果を目の前で体験してもらい、「ここが良い!」というポイントをユーザー間で共有してもらうことで、生成AIソリューションに対する理解と期待値を高めることができました。
アイディアソンにより生成AIの利活用を想起してもらう
普段の業務を遂行する中で、課題を発見することはあっても生成AIソリューションにいきなり結びつけるのは難しいことがあります。
そこでグループワークという形で普段の課題を収集してもらいつつ、「生成AIで解決するとしたら?」について普段利用していたり紹介してきたソリューションを踏まえて解決できないかをMiroというホワイトボードサービスを利用しながら整理しました。
最後に全員で投票を行い、投票数の多かったチームに記念品を贈呈するゲーム要素を取り入れることで、メンバーは楽しみながら生成AIを想起するきっかけを得ることができ、運営側としても良質なPBIを得ることができました。
エンジニアとの共創によるスピーディな実装
現場から抽出されたニーズが、エンジニアリングによって迅速に反映されることによってフィードバックループが高速に回りました。ここはエンジニアメンバーのすごいところなのですが、#pi-zatsu-hizumi にてメンションをするとすぐにヒアリングの上課題解像度を高めてアクションをとってもらいました。
不具合修正ならASAP、機能改修であっても翌日にはリリースされることが多くあり、ユーザーの記憶やニーズが新鮮なうちに取り掛かれるため社内の生成AIサービスの定着につながりました。
実際に @sys1yagi(八木さん) のアドベントカレンダーからもリリースされたソリューションの多彩さが窺い知ることができますが、私がワガママをいったことによりリリースいただいた機能も多くあります。
ユーザードリブンな進化:多様な職種から生まれるアイデアの波
生成AI普及の推進力となったのは、上述の活動や元々醸成されていたカルチャーを通して現場のユーザー自身が主体的に「活用の可能性」を切り拓いていった点です。初期段階から「試してみる」「シェアする」という文化を醸成することで、新たな活用法が次々と生まれました。その結果、生成AIソリューションの利用割合は実に社員の85%を上回る状況です。
また当初は生成AIを念頭に置いていましたが、業務プロセスの見直しや生成AI以外のサービス活用、システム整備によって改善できることも多くありました。結果として、それらを組み合わせることで業務プロセス効率化の活路を見出したケースもありました。
先駆者たちが切り拓いたユースケース
営業担当:提案資料作成のテンプレート化や顧客QAの自動要約で、商談準備時間を大幅圧縮。
研究開発担当:最新の医学文献を生成AIにより高速に要約・分析し、プロジェクト着手までのリードタイムを短縮。
カスタマーサクセス担当:顧客対応ログから有用なインサイトを即時抽出し、サポート品質を定量的に改善。
まだまだ伸び代のある生成AI活用
これだけキラキラした内容を記載していますが、生成AIの利活用については発展途上と言わざるを得ません。全社での利用状況こそ社員の85%を上回る状況ではありますが、業務プロセスで必ず使うように生成AIソリューションを組み込んだり、利用できるユースケースの認知が十分ではなく、その効果も本来の生成AI活用による効果のポテンシャルから鑑みると限定的です。
今後はそれらの伸び代を踏まえて、ビジネスプロセスを整理するチームと改めてタッグを組み、生成AIをそのプロセスの中で必ず利用するよう組み込んでいく所存です。
また認知が不十分な領域については、Notion DBを活用してナレッジを展開し、メンバーが気軽に情報にアクセスできるように改善していきます。
今後の展望
Ubieにおける生成AI活用は、まだ道半ばです。今後は、より高度なタスク自動化、部門間連携を強化した横断的ソリューション、新たなビジネスモデル創出など、挑戦するフィールドが無限に広がっています。
この新しい世界を一緒に形作るため、私たちはBizDevメンバー、LLMエンジニア、Business Architectといった専門人材を積極的に募集しています。あなたが最先端技術を用いてビジネス変革を起こしたいと願うなら、ここにはそのための「材料」と「自由度」が揃っています。新たな価値創造に向けて、共に挑戦していきましょう。
おわりに
Ubieの生成AI活用の成功は、BusinessPartnerによる問題定義・架け橋としての機能、ユーザーによる主体的な現場改善、そしてLLMエンジニアによる圧倒的な技術革新という「三位一体」の結晶です。この相互作用こそが、これからの医療・製薬業界におけるPatient Centricityを形作る一端となるための事業推進力となっております。