見出し画像

今日も水やり【偽装エッセイ】

 遠くで雷がなっているのは聞こえている。耳元で蚊が鳴いているのも聞こえている。図書館の本を延滞していることもちゃんと分かっている。どんなにしっかりと掃除機をかけても髪の毛が落ちていることも知っている。吉村萬壱の小説が理解できないことも受け入れている。それでも面白いと思ってしまう不思議さも楽しんでいる。

 雨が降れば庭の植木鉢や畑に水やりをしなくて済むので、雨雲が近づいてくれることを期待している。僕が住んでいる地域は四週間も雨が降っていない。小雨すら。しかも気温は三五度を超える日がつづいている。毎日水をやっても畑の野菜は枯れていく。それでも毎日やっている。

 今日一年ぶりに髪の毛を切った。坊主頭から放置していた頭をとうとうカットした。野生み溢れる小汚い髪型から、藤田嗣治ふじたつぐはるの様なおかっぱヘアーになった。おかっぱ。ぱっつん前髪は一度やってみたかった髪型だった。モヒカンブームが去ったいま、おかっぱ。ぱっつん前髪ブームが僕に来るかもしれない。せっかくなので眉毛を剃り落としても面白いかもしれないというと、妻に猛反対された。まあ、彼女の好みに合わせる必要はないが、なにかと面倒なのでやめておく。過去に一回剃り落としたときうるさかった。

 僕のテーブルには相変わらずルービックキューブがある。三か月と二週間、毎日触っている。今では全面を毎日二、三回以上は揃えている。気晴らしにとてもいい。文章を書き、ルービックキューブを全面揃え、また文章を書く。本を読み、ルービックキューブを全面揃え、また本を読む。

 雷の音が聞こえなくなった。リアルタイムの雨雲レーダーをチェックすると先ほどと予測が変わっていて、どうも我が家の庭には雨が降りそうにない。やっぱり今日も水撒きが必要なようだ。蚊にだけは刺されたくないから、服装は厳重だ。では行ってきます。

いいなと思ったら応援しよう!