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月曜日の腐った牛乳 その七 【短編小説】

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 登志子先生のいう正直さとか、正しさとか、本当って、何なんだろう……
 結局、登志子先生は、自分の考えていることと違うことをクラスのみんんが言うと、自分を守るように必死になって、僕たちクラスのみんなは間違っている、と言い、僕たちを正そうとする。要するに説教をはじめるのだ。

「おれじゃないって、言ってるじゃん! なんで信じてくれないんだよ!」
 あの悠人が泣き出してしまった。
 悠人はいたずら好きだから、僕が先生の机に置いた牛乳を目ざとく見つけ、忍者のように先生の机に忍び寄り、引き出しに牛乳をこぼすことぐらい簡単にやってのけると考えていた。僕も悠人を疑っていた。悠人の涙の原因は僕にもあると思った。

 さすがに登志子先生も、犯人が悠人ではないと思ったようで、口先だけで悠人に謝ると、考え込んでしまった。
 登志子先生は犯人探しはしないと言っていたけど、今じゃ先生もクラスのみんなも、犯人が誰なのかを必死で見つけ出そうとしているように見える。みんながみんなを疑っていた。

「4年4組牛乳事件」は振り出しに戻ったようにみえた。

「もしかしたら、登志子先生の自作自演じゃない?」
 昼休みは、誰かのひと言から始まった。
 クラスは「登志子先生の自作自演説」でいろめきたった。

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