月曜日の腐った牛乳 その五 【短編小説】
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教室は、一日中、落ちつかに雰囲気だった。誰かがこの騒ぎを「4年4組牛乳事件」と名付けた。休憩時間は、「4年4組牛乳事件」の話で持ちきりだった。
犯人を探す探偵ごっこをする人や、犯人をこっそりと褒め称える人、牛乳の腐った臭いに気分を悪くする人まで色々だったが、僕は気が気じゃなく会話に入れなかった。
事件が動いたのは給食の準備をしているときだった。
午前中、お腹が痛いと保健室で休んでいた健が戻ってきていた。給食の配膳の列で、僕の前にひっそりと並んでいた。
「なあ、星太。お前は犯人、だれだと思う?」
後ろから、一成が話しかけてきた。
「ぼ、僕にはわからないよ。それに先生が、犯人探しをしちゃいけないって言ってただろ!」
「お前、今日、学校に来るの早かったよなあ。犯人、お前じゃねえ? あやしいぞ」
一成は、にやにやしながら僕の肩に手を回した。僕は動揺してしどろもどろになった。
「星太くんじゃないわ!」
一成の後ろにいた結が、話に割り込んできた。
「星太くんは毎日牛乳を残さず飲んでいたわ! それよりも怪しいのは一成くんよ! 牛乳いつも残して隠してたでしょ! あ……」
結はいっきに言い終わると、余計なこと言っちゃった! と思ったのか首をすくめ両手で口を押さえた。