月曜日の腐った牛乳 その六 【短編小説】
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「お、俺じゃねーよ! 牛乳は残してたけど、それは全部、悠人が『実験するからほしい』って言ってきたから、全部、牛乳渡してたから、俺じゃねーよ!」
一成は、思いもせず犯人候補に挙げられ、あたふたしていた。
「なに騒いでるの、そこ!」
登志子先生が声を上げ、教室は静まりかえった。
悠人は、クラスの問題児で、いつも何か変なことをやっては、登志子先生や校長先生に呼び出されて怒られていた。たぶん「4年4組牛乳事件」の犯人は悠人だと、登志子先生やクラスのみんなは思っていたはずだ。僕も悠人だと思っていた。
僕と一成と結の話はすぐにがクラス中に広まり、悠人は第一容疑者へとなった。もちろん登志子先生の耳にも入った。
「悠人くん、本当はどうなの? 正直に教えて」
登志子先生は、穏やかな口調と、作りものの微笑みで、詰め寄った。
悠人は、一成からもらった牛乳をロッカーの中で腐らせる実験はしていたけど、先生の机の引き出しに、牛乳をぶちまけてはいないと言った。けれど、登志子先生は信じようとしなかった。
悠人が言ったことが、嘘なのか、正直に本当のことを言ったのかは関係なしに、登志子先生は、はじめから犯人は悠人だと決めつけていた。
登志子先生はいつも自分が正しいと思っているみたいで、クラスのみんなと意見が違うときでも、必ず登志子先生は自分のやり方を採用していた。