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そいつがあまりに邪魔だったので五キロの鉄アレーで XX した【ショートショート#28】

「前に貸した小説をいいかげん返せよ!」

 俺ん家で一緒に飲んだいた、大学の友達の下口が、借りてもいない小説を返せといつまでもうるさかったので、部屋にあった五キロの鉄アレーで頭を殴った。

 下口はごつんと、おでこからテーブルに倒れこみ、アルコールのせいもあるのか、頭からは勢いよく血がテーブルの上に流れ出た。ホラー映画のワンシーンみたいで、つい血の広がりに見とれてしまった。

「あ、血が……」
 テーブルから流れ落ちそうになる血に、俺は、はっと我に返る。

 血が垂れて畳が汚れるのは嫌だ! 急いでバスタオルを持ってきて、下口の頭の周りに、もんじゃ焼きのようにどてを作った。

 何度か痙攣をした時に、畳に血がこぼれ落ちたが、素早く台拭きで拭き取り、大事には至らなかくてほっとした。

 まだこの部屋に引っ越して間もなく、畳は張り替えられてたばかりで青々としている。俺は、それが汚れなくて安心した。

 それにしても血の匂いは臭く、せっかくの青い畳の匂いが台無しだとイラつき、下口に血を拭いた台拭きを投げつけた。

 下口は、はじめこそ息をしていたが、四度目の痙攣のあと胸の動きが止まった。

 下口の出血が止まると俺は、血を大量に吸ったバスタオルを洗濯機に入れ、洗剤をいつもの三倍入れてスタートボタンを押した。

「こいつ、どうしようかなあ。」
 急に自分がやってしまったことに後悔しはじめた。いつもそうだ。

「あと片付けが、めんどくさい……。それに、警察にも捕まりたくない。めんどくさいな……」

 死んだ下口をどうしようかと、ぐだぐだ考えている間に俺は寝てしまい、気づいたら昼前になったいた。二日酔いで頭が痛い。

 俺は夢を見ていた。俺は幼稚園にいた。知らない友達から「お前は、やせたガリガリのサルだ!」とからかわれていた。涙が頬をつたう感触で目が覚めた。手のひらで涙を拭うと、立ち上がり、まだテーブルに倒れ込んでいる下口を見下ろした。

「お前の後始末は、ちょっと待っていてくれ。その前に買い物に行ってくる」
 そう伝えると、俺はホームセンターに向かった。

※※※

 あれから一年がすぎた。俺は警察に捕まっていない。

 今日の朝食はトマトとリーフレタスだ。俺は下口のお陰で家庭菜園にはまっている。いろいろな野菜を浴槽で育てている。下口は良質な堆肥として野菜を育て、俺の体の一部として今も生きている。
 非常に肥えた土はあと数年は、野菜をたくさん生み出してくれるだろう。

 それまで食事に関して、全く興味がなくインスタントものばかりを食べ痩せこけていたけれど、家庭菜園にはまって以来、手料理も覚え、体の調子も上がり運動まではじめた。下口が居る浴槽に足を向けて眠れない。

 次、堆肥を加える時は、少し小柄な人にしようと思う。

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