沈黙はさざなみとなりあらわれる流されてゆく言葉の破片 交わされることのなかった言の葉は化石のように沈んでいく 感情を静かに置いてぼくたちは真冬の月を胸に浮かべる 廃園の朽ちゆくのみの美術館ぼくたちの墓の彫刻は見ゆ 厳かな冬の雷鳴鳴り響く祈りとならず呪いへ変わる ぼくら二人の影の王国も沈めるね永遠などはひとつもなくて うたびとは造花にまみれ生き絶える遠き冬の雷小夜の天使刑
追憶の雪野は雪月花の乱れ隣にいないあなたを想う 雨が止み微かに曇る空を見た世界は続きカナリヤが飛ぶ 人それぞれが造花のようで柔らかく闇の奥へと溶けてゆくのみ 月のひかりに柊の花が照らされてあなたを守り時は満ちたり 永遠が幻なことに気づいたよあなたの瞳をじっと見つめる あなたには生きてほしいと祈ってる翳した手から光が漏れる 感情が静かに進む湖で時は止まりて白鳥の眠り 古のパピルスから欠けた脆きロゴスを悼む冬の言語忌
光の雫が零れ落ちたる冬の雷窓から覗くスピノザの瞳 崩れゆき滅ぶ運命の帝都には冷たき雨が降り注ぐのみ 凍蝶をやさしく覆うあなたには天使の翅がかつてはあった うたびとの肺に咲くのは赤き造花幽かな炎燃えるかのよう 手を繋いだ無効の日の朝薄れゆく記憶の中であなたは笑った 雨に濡れ闇に包まれ光なく(You will)never dance tonight 街を歩く翅なき天使らが見上げる人亡き後の夜空の幻視 真善美信じていた僕を包み込む夕陽の一瞬の紅
少年が黒鳥の羽を拾いつつ空を見上げた世界の始まり 掌に光の欠片散りばめて見えない明日を思い描けり 薄明の中で目覚める漠然と夢の波間を漂いながら 世界が生まれ現在までの瞬間を想像する今ここにあるイリヤ 彼方へと向かっていくのはいつまで?星の導きから放たれるまで 灯火を絶やさないよう日常を生きていたいと強く願えば 僕たちの今日も明日も塗り替えて世界を彩ろう指先で たましいが重なり合って震動するひかりを介する生誕と祝福
私の生まれた街は海の近くにある。私は朝凪とともに生まれた。 私の住む街の近くにある海は、洗礼堂と言われている。何故そう呼ばれているのかルーツはわからない。ただ、シモーヌ・ヴェイユから来ていることは確かだ。 私は洗礼堂とともに生まれ育った。でも、特に信仰はない。海で泳いでいると心が洗われたような気持ちになる。 「凪」友人の新里凛の呼ぶ声がする。凪は私の名前だ。朝露凪。これが私のフルネーム。 なあに、と答えた。 「ねえ、今夜洗礼堂で泳がない?」 「いいよ」と承
早朝。僕は掃除用具を載せたバンを運転して、10階建ての公共住宅へと向かう。到着すると、まずはゴミステーションの中のゴミ袋の整頓をする。ゴミ袋の間にボロボロの人形が挟まっているので回収する。アパートに持ち帰って修理するのだ。 整頓が終わると、掃除用具を携えて清掃を始める。ブラシに掃除用の薬品を染み込ませ、共用通路を清める。一階が終われば次は二階……と上へと向かっていく。途中、おばあちゃんに声をかけられる。僕は手を止めず挨拶する。おばあちゃんは今日も元気そうだ。 掃除を終
黙深くパロールの雪降りしきり言葉にならぬ言葉が積もる 声が出ないわけではない思いだせぬ白雪に消える無言の轍 聞こえるだろうかあなたには私が吹雪の中の慟哭の音が 朝焼けのレモンの黄色鮮やかにあなたのすべてがそこにあるように 名も知らぬ内なる花は今日も咲くどう生きていこう星の片隅で 少女の手から鳥が飛び立っていく空白は埋められず広がる 悲しみの果てには何があるのだろう苦しみと悔い、冬凪の日々
少年が黒鳥の羽根を拾って空を見上げた世界の始まり 掌に光の欠片散りばめて見えない明日を思い描く日々 薄明の中で目覚める漠然と夢の波間を漂いながら 雨の夜光の海が反射するまぼろしの中をきみは泳ぐ 世界が生まれ現在までの瞬間を想像する今ここにあるあるイリヤ 彼方へと向かっていくのはいつまで? 星の導きから放たれるまで 僕たちの今日も明日も塗り替えて世界を彩ろう指先で 朝に見た空は光で満ちていて再び歩き出す彼方へと たましいが重なり合って震動するひかりを介する生誕と
海中の洗礼堂に三月の雪が降りあなたに見せたかった パロールが壊れし後の世界には壊れたたましひが集ふといふ 耳に咲く紅梅の赤鮮明にあなたの影は樹のごとし 白か黒か問われないことオレンジの夕陽を浴びてカナリアが歌う 硝子の空を真っ逆さまに落ちてゆく晩年の燕、真昼の月の死 まぼろしを語ることなくうたにするムスカリの咲く内なる花野 きみが今漂うように目に見えぬ二番目の光があふれてゆく
追憶の雪野は雪月花咲き乱れ隣にいないあなたを思う 廃園に降り積もる雪白き彼岸で讃美歌(キャロル)呟く 雨が止み微かに曇る空を見た世界は続きカナリヤが飛ぶ 人それぞれが造花のように柔らかく闇の奥へと溶けてゆくのみ 感情が静かに進む湖で時は止まりて白鳥の眠り 色彩は壊れた光の痕跡 芸術家は光を操る 古のパピルスから欠けた脆きロゴスを悼む冬の言語忌 月の光に柊の花が照らされてあなたを守り時は満ちたり 永遠が幻なことに気づいたよあなたの瞳をじっと見つめる あなたには
本心を嘘に隠してやり過ごす朝はまたもや嘘をつく 雨 屋上でアステリズムを見上げている星のポリフォニーが響き渡る 努力(コナトゥス)を心掛けつつ今日もまた職場へ向かう変わらぬ朝(あした) 祝福をされることはないそれでも砂漠の日々を生き抜いていく 夜もまたひとつの太陽だと知ったこれでまた私は生きていける 宇宙の風よあなたの魂を呼び覚ませ私はあなたとともに在りたい 名が名が刻まれたはるか遠くの墓標にはまだ行けず雪が降り続いている
光を失った。再び見ることができることを祈りながら歩き続けている。私は光の巡礼者なのかもしれない。東北の地方都市から海外の砂漠まで辿り着いたがまだ光は見えない。いつか光に満ちた地に到達できるだろう。今はそれを信じて巡礼のような旅を続けるだけだ。
朝、目が覚めて部屋の窓を見ると、満開の桜が咲いていた。着替えて食事を済ませ、近所の公園へ向かった。 公園の入口の坂道を登りながら周囲を見渡すと、桃色の波が広がっていた。 坂を登りきり、自動販売機でペットボトルのお茶を買い、ベンチの中央に座った。 前方には桜を目当てにしたご老人、子供連れの家族、カップルなどがスマートフォンやデジタル一眼レフを構えて撮影しているのが見える。 空を見上げると、やや黒がかっている青空が広がっていた。 赤い公園のprayを口ずさみな
黙深くパロールの雪降りしきり言葉にならぬ言葉が積もる 声が出ないわけではない思い出せぬ白雪に消える無言の轍 何回も伝えたかったこの思い形にならず沈みゆくのみ 聞こえるだろうかあなたにはわたしが吹雪の中声抑えた慟哭の音が 闇の底を見つめていた深淵は終わることのない永遠の闇 朝焼けのレモンの黄色鮮やかにあなたのすべてがそこにあるように 祈りからすべては始まるこの世界で光に触れる影を曳きながら 名も知らぬ内なる花は今日も咲くどう生きていこう星の片隅で 少女の手から鳥
無意識の夢と現のあわいにてラピスラズリの蝶が舞っている 肉体は魂の舟 遺伝子の川を漂うGeneのさざなみ 至福の日々を過ごすきみに花束を天使の集うスピノザの海 最期の地は何もない極地なり灰色の風が吹いている 無能力は生のすべてを阻害する絶対的な悲しみあふれ 悲しみの果てには瑠璃の悲しみの彫刻があり集められゆく 朝方のぼやけた意識の心象の花野で猿が僕を見つめる 月光がきみの御髪をかがやかす時は止まりて波音きこゆ 海彼通信コメント ◼️黒塚さん、生死の認識論だろう
目の前の景色はすべて生き地獄鬼などおらず人の業なり 死者たちの黒き葬列が私たちを誘ってゆく夜の果てへと 夜明け前のカゲロウたちは闇へと溶けて夢を漂う 老境の名もなき王が月の砂漠を征くエーテルの風が吹く 千の天使がバスケットするはつあきの私の不安が躍動する コスモスが広がっていく白昼夢宇宙に咲く一輪の華 かなしみを黒壇の黒で塗り潰す白から黒へ闇が訪れる 紅葉の赤は人から流れた血の赤パレスチナに降る赤い雨