【アルバム制作日記#2】料理と楽曲制作は似ている
◆ドア修理の間に
先月の半ばくらいに居間と寝室とを隔てる引き戸がブッ壊れた。
どうやらレールの上を走る樹脂製の車輪が経年劣化で砕けたらしく、扉を開けるたびドッドッドとハードコアテクノのキック高速連打音の如き爆音がするようになってしまった。
日頃とても鼻歌とは言えない音量で歌いながら生活している俺だが、流石に開け閉めするたびにこんなパーカッシブな轟音が響くのかと思うと上階の住民に申し訳なく、扉を開けっぱなしの生活を強いられていた。
そこにきてここ数日の寒暖差である。
暑いうちは「風通しがいいやね」なんて余裕ぶっこいてきたが、寒くなると話はまったく別で、とても寒い。
たまりかねて管理会社に連絡、そして今日の午前中は業者さんが直しにきてくれたと言うわけだ。
午前中は予定を入れず、業者のオジサンの作業を見守っていたのだが、なんだかとっても仕事がしづらそうな雰囲気になってしまった為、仕事部屋に引っ込んでアルバムの構想を練ることにした。
先日、アルバムのテーマを「上京」「回収」に決めたところだったが、もう少し絞り込んだほうが良いなと思いあれこれ考えた。
昨年の初めにリリースしたEP『Tamon's』。あれはタイトルの示す通り、徹底的に自分のために作ったEPだった。
歌詞もジャンルもバラバラだが、一貫して自分が聴きたい音楽だけを表現した、たいへん独りよがりな6曲。
だけど「誰かのために作るよりも自分のために作った方が結果的に誰か(自分みたいな人=Tamons)に響くだろう」と言う思いで制作した。
結果「All the young danshis」とか言う個人的名曲が生まれ、共に青春を過ごした高校時代の友人はこの曲を聞いて涙していたし、概ね狙い通りだったので、今回のアルバムは「Tamon's」の精神的続編にしようと思い至った。
つまり今回も好き勝手やらせていただきます、と言うことです。どうぞよろしく。
そんなことを考えているうちにドアの修理は終わり、ホバークラフトかと思うくらいなめらかに開閉するようになった。オジサンも心なしか誇らしげだった。
ありがとう、オジサン。
◆ 料理と楽曲制作は似ている
【18.東京】(詳しくは#1を参照)の制作は続く。歌詞とメロディ、コード進行、大まかなアレンジは既に出来ている。
麻婆豆腐に例えるとひき肉と豆腐と豆板醤その他調味料、鉄鍋におたま、ざっくりとしたレシピまで揃っていて、さて、あとはどうやって美味しく料理したものかと言う段階である。
「じゃあもう作ったら出来るじゃん」と言われたら「いえいえ、ここからなんですよ」と言いたい。
ここからが料理人の腕の見せ所である。
木綿豆腐に醤油ベースで汁っぽく作れば給食風麻婆豆腐になるし、絹ごし豆腐に豆板醤&甜麺醤、牛ひき肉をカリカリになるまで炒めて花椒を加えれば本格的四川風麻婆豆腐にもなる。
完成系をイメージして、どうすればそこに辿り着くのか?どんな調理法か?隠し味は?どこに自分らしさを出すのか?
これを考えるのが非常に重要で、そこにその人らしさが出るのである。
ではこの曲の完成系は?どんなイメージか?
それは……。
それはまだ書けまへん。焦らしますねぇ〜。
ただひとつ言えるのは、今の日本の若手シンガーソングライター(34歳は若手に入りますか?)でこれをやろうとしているのは、恐らく俺だけだろう。もし思いついてもやらないと思う。そんなチャレンジをしておりますの、あたし。
しかし、こういう正攻法じゃないやり方はセオリーがないから非常に大変である。
しかも本来、しっかりとした音楽的教育を受けた人がやるようなことを感覚と雰囲気だけでやろうとしているので非常に苦労している。
だが、楽しい。
もしこの曲をシングルカットしたら世間はどんな反応をするかしら。イタズラ心に火がついた。
◆根暗ソウル
そういえば、今年の初めにYouTubeの配信で書き初めをした時、「根暗ソウル」と言う言葉を書いたっけ。
「ソウルミュージック」といえばセクシーでスウィートな色っぽい曲が多い(歌詞もアレンジも)。髙橋はソウルミュージックが非常に好きだが、セクシーさのかけらもない人間(※1)なので、かなり背伸びをしてもソウルは出来ない。
でも当時、ソウルにめちゃくちゃハマっていたので、そこで作った概念が「根暗ソウル」である。意味としては、まあ説明をするまでもないっすよね。読んで字の如くです。
一応このテーマで『Drive』と『僕らの純情』と言う曲を作ったし、アルバムを作るとして、楽曲の半分はこのテイストで行こうとか思ってたが、すっかりその気持ちもどっかに行ってしまった。
恐らく今回のアルバムは非常にいろんなジャンルの曲が収録されると思う。「根暗ソウル」もそのひとつくらいに思っておくつもりである。
眠い。寝る。
(※1)
髙橋はサラリーマン時代、一緒にチームを組んでいた後輩に「先輩に決定的に欠けているものがわかりました」「なんだと思いますか?」「それは"色気"ですよ!!」「先輩に色気が無いせいでいつも一緒にいる私まで色気がなくなるんですよ!!」「どうしてくれるんですか!!」とブチギレられたことがある。
いいなと思ったら応援しよう!
![髙橋多聞](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/45353105/profile_4284e7dc377cee44932da562dc787599.jpg?width=600&crop=1:1,smart)