第2話
「いらっしゃいませ、あのー失礼ですがどのようなご用件で」
真壁が困りながら、トミーと橘に向かって言葉を発した。
先ほどの真壁とは違い、明らかに嫌な態度を見せている。
「えーっと、服欲しいねんけどー、、、」
トミーはそう言いながら、胸元から出した札束を近くのテーブルに叩きつけた。
真壁は、びっくりした顔を一瞬見せたが、すぐにプロの対応に戻った
「大変申し訳ありません、かしこまりました」
「いやーええねん、すまんのー仕事帰りで寄らせてもらったから、なー麻美」
一連の動きの意味がわからず呆然としていた橘だったが、すぐ答えた
「さすがに、一回家帰るよねー、ごめんなさいねー」
「ほんまやな、ハハー、ほなら麻美好きなもん選んでな!」
橘は、一瞬戸惑ったがすぐに答えた
「やったートミーありがとうー」
「ちょっと誰かこの子に似合う服探したってー」
トミーは奥の女性従業員に声をかけた。
「お客様へのコーディネート、私真壁がさせていただいてよろしいでしょうか?」
真壁は改まってトミーへ尋ねた。
「おーたのんますー」
真壁は数あるスーツの中から、最高級のグレーのスーツをトミーに勧めた
「お客様、こちらは当店でも限られたお客様のみに販売させていただいております、いかがでしょうか?」
「おーカッコええやん、3ピースで頼むわ、あと靴も見繕ってなー」
「かしこまりました、何かお飲み物をお持ちいたします」
「じゃあアドベック、ロックで」
「かしこまりました」
アドベックを飲みながら、トミーはスーツの最終の寸法を修正してもらっていた。
一方橘も、間も無く新しい服に着替えるところだった。
「麻美ーどうやー決まったかー?」
「うんーもう決まって、着替え終わるよー」
そう言いながら、試着室から橘が出てきた。
まるでハリウッドのレッドカーペットを歩く海外女優のようなセクシーなドレス、背中が大きく空いて、程よい高さのハイヒール。
「うわーめちゃめちゃ綺麗や」
アドベックを飲みながらトミーは続ける
「オレももうちょっとで修正終わって、着替えるからちょっと待ってて
トミーは橘にアドベックを渡した。
「オッケー、ねえトミー、この服似合うかなぁ?」
トミーは試着室へ向かいながら答えた。
「多分お前しか似合えへんわー」
真壁が試着室へ誘導し、スーツを手渡した。
数分してトミーは最高級のスーツに身を包み、試着室から出てきた。
「トミー、かっこいいよ!」
橘はトミーの飲みかけのアドベックを飲みながら言った。
「ありがとう、じゃあ真壁さん、お会計してー」
「はい、少々お待ちください」
トミーと橘は店のソファーに腰掛け、会計を待つ。
真壁が会計用のバインダーを持ちやってきた。
「お客様、178万円になります」
橘は少し驚いた、なぜなら彼女はここの店員で店の全ての商品の値段がわかるからである。
どう高く見積もっても100万円前後だった。
トミーはなんの疑いもなく札束二つを渡した。
「じゃあこれで、釣りはいらんから、スタッフのみんなでなんか食べてー」
「ありがとうございます」
真壁は深々と頭を下げた。
トミーはソファーから立ち上がり、出口へ歩き出した。
橘もその後を追う
「トミー様!」
真壁がトミーを呼び止めた
「あのー先ほどお召しになっておられた服はどのようにいたしましょう」
トミーはとても満足そうな顔で答えた。
「あー捨てといて、悪いなー」
真壁も同じく満足そうな顔で答え頭を下げた
「かしこまりました、ありがとうございました。」
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