第3話
トミーと橘は銀座の街を歩いていた。
「あのー」
橘は声をかけた
「あー麻美ちゃん、ごめんなー付き合わして、その服よかったらもらってあげて、ほんまに似合ってると思うし」
「あ、ありがとうございます、でもどうしてこんな」
「あー話せば長いねんけど、どっかお茶でもしよか、真壁っちには言うてあるし」
「あ、はい」
銀座の純喫茶に二人で入っていった。
「マスター、ホット、麻美ちゃんわ?」
「私も同じので」
「はいよ」
マスターは競馬新聞を読みながら答えた。
トミーと橘は店の奥のテーブルに腰をかけた
「実は真壁っちとオレは30年以上の付き合いやねん、といーか飲み友達やな」
トミーは話し始めた。
2019年、東京、上野
まだまだ若いトミーは泥酔していた。
その横で同い年くらいの男が、顔を伏して寝ていた。
「なーママー、俺の夢聞いてくれる?」
長靴にワークパンツにシャツ、仕事着のままトミーはママに話した。
「もーまた夢の話?トミちゃん好きだよねーその話、私も好きだけど」
ママはトミーより10個ほど年上だが、とてもそんなふうに見えないくらい綺麗だった。
「オレはねー、この服のまんま銀座のブランド店入って、適当に服決めてもらって、あとはこれ全部捨てといてーって言ってやりたいねん、ほんまにこの安月給でアホみたいに働かされて、でもこの夢を叶えるには最高に良い制服やと思うねん」
トミーは若干呂律が回っていないが、聞き取れなくは無いほどの周り具合で答えた。
「ほんでそのままの足で、、、」
「あのー!!!」
同い年くらいの男が突然顔をあげて、話し出した。
「俺にその夢手伝わさせてくれませんか?」
その男こそ、真壁だった。
トミーと真壁の出会いはここからだった。
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