感情を描いて内省と対話をする技法〜 エモグラフィ&エモーションマップ
自己紹介
こんにちは、タムラカイと申します。
「世界の創造性のレベルを1つあげる」をミッションとして、対話の場や仕組みをデザインしたり、個人や組織に寄り添って未来へ進むためのお手伝いを仕事にしています。一部の人にとっては「グラレコの人」という印象が強いのですが、自分にとってはあくまで上記のための手段の一つという位置付けだったりします。
自分自身、普段は会社員として働きながら、個人としてラクガキコーチという肩書きでコミュニケーションのワークショップや研修を開催したり、グラフィックカタリスト・ビオトープというチームの発起人だったり、最近は教育系NPO法人SOMAの理事であったり、ともすればとっちらかってるようにも見えるのですが自分の軸はこのあたりにあります。
ちなみに僕の考える「創造性」とは、絵を描くとか何かを作るというものだけを指すのではなく「自分(たち)で自分(たち)の進む道を創るという姿勢・態度」のことで、こういう世の中だからこそあらためて必要なものだと思っています。
何が起こるかわからない世界に、自分のできること
さて「こういう世の中」です。
自分もワークショップや講演で「VUCA」などと言ってきましたが、今ほど世界規模で状況が刻々と変化し、不確実で不安定な状況はこれまでなかったかと思います。
テレビやメディアには決して明るいとは言えないニュースがあふれ、誰もがざわざわとした気持ちを抱えているように感じます。ネットでは「あいつが悪い!これがダメだ!」と、原因・悪者探しと吊し上げを見る頻度が増えた気がします。不安な感情に心を支配されてしまう気持ちはよく分かります。僕自身、先日は言い知れぬ不安を感じて急に眠れなくなったりもしました。
でも「こういう世の中」だからこそ強い感情に流されるのではなく、自分が今何を感じているのかを意識して、冷静に現状と対峙し前に進むべきだと思っています。
最近よく耳にする「メタ認知」や「セルフマネジメント」と言われる考え方に通じるものですが、僕はこれを「描く」という手段を使って実践してきました。今回ご紹介するのは、これらを他の人でもできるようにとデザインした「エモグラフィ」と「エモーションマップ」というメソッドになります。
使用するのは紙とペンだけですので、是非気軽にやってみてください。
人間は様々な感情を”同時に”抱えて生きている
人は普段意識していなくても同時に様々なことを考え、感じています。
仕事の不安、週末の楽しみ、今日は何を食べようか、来週の子供の誕生日は何しよう…などなど、自分にとっていいものも悪いものも混ぜこぜになっている、それが普通の状態なのです。
ただ、このことを意識していないと人は強い感情に流されてしまいます。
今のような緊急事態には不安や怒りなどがその分かりやすい例でしょうし、平時であっても本当はつらいと感じているのに、その感情に蓋をして無理をして心や体を壊してしまうという例をいくつも見てきました。
今回ご紹介するのは、そういった普段は無意識化にある自分の感情を取り扱うためのものになります。
感情を表現する技法「Emography(エモグラフィ)」
まずは感情を意識し、取り扱えるようにする必要があります。
「うれしい」「悲しい」「イライラする」など感情を表す言葉は様々ありますが、人の感情は言葉の数を遥かに超えて存在しています。そこで言葉ではなく描くことを手段として感情を扱えるようにするのが、「エモグラフィ」です。
簡単に説明すると、口、目、眉を組み合わせることで表情を描くというもので、基本のセットは5*5*4で100通り、この基本が分かれば様々なパーツを組み合わせて簡単に顔の表情が描けるようになります。文字のような記号の組み合わせにすることで、誰でも簡単に描けるようにデザインしました。
これだと100通りの表情のみに見えますが、例えば眉毛や口の角度を1度変えるだけでも、微妙な表情の変化が作れますし、ポイントは「口、目、眉の組み合わせ」ということなので、そこさえ押さえればほぼ無限の表情を生み出すことができます。
詳しい説明は以前に書いたこちらの記事をご覧ください。
「Emotion Map(エモーションマップ)」で思考を深める
「エモグラフィ」を活用する手法の1つとして作ったのが「エモーションマップ」です。
人は言葉を手に入れたことで様々な思考が可能になりましたが、このことは逆に思考が言葉に縛られるという結果も生み出しました。
言葉から連想できるのはすでに言葉になっている概念のみになります。そこで表情から感じる感情というフックを用いて言葉を引き出すのがこのエモーションマップの特徴です。
また、表情があることで自分で見返した際や他者と共有した時に、内容が伝わりやすいというメリットもあります。
書き方は紙のセンターにテーマを、その周りに表情と吹き出しを描き、セリフを埋めていくというものです。テンプレートではざっくりと喜怒哀楽の表情が入っていて、残り2つは自分でランダムに表情を作るような構成になっています。
セリフは「あ!」や「おおー」のような一言ではなく、少し説明的に自分が感じる感覚を言語化することがポイントになります。
サンプルはこんな感じ。
それぞれの表情を自分の感情として向き合うことで、自分との対話(内省)が可能になります。また複数人で行う場合には、描いたエモーションマップを回し読みすることで、それぞれの想いを多面的に把握することができ、より深い対話が可能になります。
また紙の上の自分を俯瞰することで、物理的にメタ認知的な視点になることもできます。
「正解」ではなく「解釈」の時代
何が起こるか分からない状況で重要なのは、用意された「正解」を早く正確に出すことではなく、一人一人が置かれた現状を把握して判断して「解釈」をすることです。
「解釈」をするためには、今現在"わたし"がどのような状態かを知ることが必要不可欠です。そして自分を知ることで他者である”あなた”を思いやることができるようになります。
今回はメソッドのシェアがメインになってしまいましたが、別途マインドセットなどについても発信できればと考えています。こちらのnoteの発進頻度をあげることもそうですし、オンラインでのワークショップやセッションなんかもやっていければなと。
日々色々なことが起こる世界の中で、日々揺れ動く感情をケアする方法として今回ご紹介したメソッドが役立てば幸いです。
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記事で使ったスライドのPDFをこちらに置いておきます。
ツイッターでも日々思ったこと(文字通り”わたしの解釈”)などをつぶやいていますのでよろしければ是非。
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