シライ電子工業の株主総会に出席しました
シライ電子工業の株主総会に出席してきました。
結果としては会社側の提案が可決されましたが、一般株主からも基治社長の解任について疑問があるという声が多数ありました。
私も質問をしてきたので質問の要旨を備忘録として記載します。
私の質問要旨
シライ電子の動きが怪しいと感じられる点が2つあります。
取締役の選任手続きと治夫さんの復帰です。
指名報酬委員会の設置と候補者の決定の順番が逆であり、取締役の候補者決定時に治夫さんが関与していたことが疑われます。
また、顧問契約を今年の1月に解除したにもかかわらず、非業務執行として復帰することは経営判断に矛盾が生じています。
経営の執行と監督が適切に機能しているか確認するために5つの点から回答を求めます。
純利益が減少したにもかかわらず増配を決議したこと
取締役が5名から9名に増えたこと
治夫さんの復帰理由
株主総会の予定日をずらしたこと
相当な期間に渡り、社長に萎縮して他の取締役は業務遂行していなかったこと
会社側の回答要旨
会社側の回答は概ね以下のような回答でした。
株主還元と投資のバランスを見ながら中長期的に考えて決定している
当社は製造業を営んでいるので、各業務の担当責任者が取締役として存在している方が良いと判断した
治夫さんは創業者としてみんなの心のよりどころであり、また、創業から長く経営に関与してきたので助言をして欲しいから
会社を取り巻く状況を加味し、この日しかないと考えたので、適法なプロセスに従い、最終的には取締役会が株主総会日を決定した
善管注意義務に違反する行動と思っていない。事実、会社のためを思って前社長を解任した。このような権利行使こそが義務を果たしている証拠である
回答に対する評価
回答に対して再反論したかったのですが、質問は一人一回に制限されており、自由に発言できる状況ではありませんでしたので、以下のとおり回答に対する私の見解を述べます。
結局、第55期の増配の理由については述べられていません。抽象的な配当方針を述べるにとどまり、なぜ4円増えて26円になったのかについて、業績を踏まえた具体的な理由が述べられませんでした。
株主のご機嫌取りではないかという私の疑惑は晴れませんでした。他の株主からも質問がありましたが、シライ電子工業は執行役員体制を採用しているので、業務執行は執行役員に任せ、取締役会は執行の監督を重視すべきというのが近年のスタンダードな理論です。
社外取締役の割合が減るという点、他の株主の方も素晴らしい質問でした。
それにもかかわらず、取締役会の業務執行機能を強化しようとするのは、会社側が中期経営計画で説明した「機動的な意思決定」という話と矛盾します。
コーポレート・ガバナンスに対する洞察が不足していると感じましたし、矛盾している説明も残念に感じました。結局、治夫さんに助言を求めるようです。1月に顧問契約を解約しているにもかかわらず、3月に取締役復帰の発表していて、その理由とし「助言を求めるため」ということらしいです。
経営判断の矛盾に会社側は気づいていないのでしょうか?
治夫さんという大株主の意向が強く裏側にあるように思いました。取締役会が決定するのは形式的な話であって、実質的には社長や総会担当の役員が決めています。これは株主総会実務を知る人であれば当然の感覚でしょう。
会場の予約をはじめ、諸々の準備の都合がありますので、予定日を変えることはとても困難なのです。
したがって予定日を変えるというのは非常事態であり、会社側にとって重大な「何か」があったと思われます。
重大な「何か」とは基治さんの株主提案だと思いますが、これについては会社側の説明はありませんでした。他の株主から基治さんの解任について質問がありまして、五藤さんは「相当期間に渡り、基治さんから威圧的な態度を取られ、業務に支障が出た」と言っています。
具体的にいつからいつまで業務に支障が出ていたのか、何がどのように支障があったのかについては説明されておりません。
まさか基治さんが会社に入社した頃から怖くて何も言えなかった、なんてことはあり得ないので、要は五藤さん達と基治さんの方向性が違うようになったということです。
基治さんを社長にして、基治さんと同じ夢を一度は見たはずなのに切ないですね。
総会を通じて感じた経営陣の声
本日、会社の説明、特に五藤さんの受け答え等を見ていましたが、五藤さん自身はある程度優秀な方だと感じました。
しかし、優秀だからこそ矛盾に気づかないはずがないので、ご自身の説明に矛盾がある点について、更に違和感が強くなってしまいました。
総会の中で会社から中期経営計画の発表や質疑応答で五藤さんの声を聞きまして、
「ああ、この人はこれ以上会社の成長を望まないんだな」と強く感じました。
資本主義の中で勝ち抜いていく、成長を続けていくのはとても厳しいことです。
楽天の三木谷さんや、サイバーの藤田さん、海外ではアップルのスティーブ・ジョブズなどを見ても、めちゃくちゃ厳しい人ばかりです。
それについていけない人もたくさんいます。
きっと基治さんも思いが高じて厳しい態度になることがあったのでしょう。
その態度を受容できるかどうかは価値観の問題なのだと思います。
五藤さんは基治さんの成長志向についていけなくなったのではないかと思います。
別の角度からも考えます。
人の気持ちとして、自分の功績を超えられることは悔しいものがあります。
治夫さんは、自分が創業したシライ電子を、孫とはいえ他人の基治さんに超えられることが許せなかったのでしょう。
顧問契約の解約も孫から必要とされなくなったと誤解して寂しい気持ちになったのだと思います。
要は五藤さんも治夫さんも「シライ電子の成長は望まない」という気持ちの面での一致が大きいのではないかと思います。
配当政策にもそれが現れていまして、
成長のための投資よりも株主に還元することが大事なようです。
特に印象的だったのは五藤さんが繰り返し「一丸となって」と発言している姿でした。
一丸となって現状維持を重要視する経営にしたいということかなと感じました。
株主も従業員もそれを求めていると認識されている様子でした。
一度は同じ夢を見た基治さんという仲間の首を切ること、孫にもかかわらず嫉妬してしまうこと、
大きなお世話ですが業が深いように思われ、五藤さんや治夫さんの今後について私は心配です。
総括
ひとまず今回のシライ電子工業の株主総会は終了しました。
現時点では会社側の現状維持優先の考えが支持されたということだと思います。
しかし、本当に現状維持でよいのでしょうか?
もはや内需だけでは先細ることが長期的には明らかで、グローバルで戦わないといけないにもかかわらず、中国の従業員からも愛され、海外事業を担当していた基治さんがいなければ、現状維持も難しいのではないかと思います。
また、基治さんは新規事業にも果敢に挑戦していたので、本当に残念です。
上場企業の経営者は戦い続ける宿命を背負っていると思うので、シライ電子の今後が心配でなりません。
他の株主の質問で気づいたのですが、シライ電子の従業員が減っているようです。
労働市場からも選ばれない会社になると、加速度的に経営は悪化します。
選ばれたからには五藤さん達には1年間しっかりと働いてもらいたいと思います。
ところで、今回の総会で、私は修正動議を提案しませんでした。
修正動議のネタも考えていましたが、次回総会以降に会社法304条ただし書きの規定を会社側に利用されることを警戒して、自重しました。
今後も基治さんは活動されると思いますので、基治さんがこのnoteを見ていればぜひ私にも連絡ください。
一緒に次回総会に向けて株主提案を練りたいと思います!
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