水面(みなも)に映る、「今」をみつめる
ゆらゆらと、
やさしくささやく波に耳を傾ける。
小さく、消えてしまいそうな音。
それでも確かに、私たちの足元にやってくる。
一定のリズムで刻むその音は、
私たちの鼓動と共鳴して、
懐かしさと安心を、からだの内に届けてくれる。
何を語りかけているのだろう。
他愛もないことかもしれない。
太陽と、風と、海と、雲と。
それぞれが、顔を合わせて挨拶しているような。
そんな日常を思わせてくれる、島の穏やかな海。
からだと呼応する音は、安らかで耳心地がよく、
いつまでも、聴いていたかった。
*
水面は、空を鏡のように映して、
どこまでも、青が広がっている。
さざなみが、それをぼかしていく。
はっきりと何かは見えない。
それでも確かに、映し出している。
雲間から日差しが降ると水面は煌き、
別世界のように美しいけれど、
そこに映るのは「今」の世界だけ。
未来ではなく、
過去でもなく、
理想の何かでもなく、
別の何かでもなく、
「今」をじっくり、ぼんやり、見つめさせてくれる。
島には、そんな仕掛けが意図せずたくさんあるようだ。
そんな場所を、ひとつでも見つけることができたなら。
きっと心は、安心して眠るんだろうな。
*
穏やかな波のように、微笑み、語りかけ、
期待するでもなく、見放すわけでもなく、
「今」をみて、全てを肯定してくれているかのように、見守り佇む。
そんな、島と海の雄大な自然のように、
大切な人が、安心して眠れるように、
あたたかな人間になりたいと、心から思います。