愛していると言ってくれ
うららかなお天気の日に子どもと天王寺をぷらぷらと散歩していたら、わたしたちの後ろを、ことばをオウム返しして遊ぶパパさんと娘さん(推定4歳)が仲睦まじく歩いていた。
パパ:「ラッキーパパー」 娘:「らっきぃぱぱぁー」
パパ:「センキューパパー」 娘:「せんきゅうぱぱぁー」
パパさんのことばを娘さんがキャッキャッと楽しそうにマネしていた。
が、パパさんが「だいすきパパー」と言ったとたん娘さんは無言になった。パパさんが「だいすきパパー」「だいすきパパー」と繰り返すも、娘さんは無言のままだった。
「だいすきパパーって言ってるよ、言ってるよーーー」とパパさんの願い虚しく、娘さんは黙ったままだった。しばらくしてパパさんと娘さんは道を曲がり、わたしたちから遠ざかっていった。
あんなに幼いのに落としどころを心得ているとは。最近の若者はおそろしいなと感心していたら「ああいうことばは言わせるんじゃなくて、自然に言ってもらうべきやんね」とわが子がボソリと正論を述べた。
ちがうぞわが子よ。パパさんはかわいい娘に愛していると言ってもらいたいだけなのだ。その姿がどんなにダサくてもだ。たしかにちょっとカッコわるいなと母も思ったけれど。
パパさんはあの後、ちゃんと「だいすきパパ」と言ってもらえたのだろうか。言ってもらえていたらいいなと思うし、でもやっぱり娘さんにはニヤリと笑って黙ったままでいてほしい、と思わなくも、ない。
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