シマリスが教えてくれたこと~たまごボーロの記憶
ここに、ガラス瓶に入ったたまごボーロがあります。このたまごボーロ、実は26年前のもの。1998年9月12日。うちの初代シマリスりすこが、亡くなる前の日にケージの隅に隠していたたまごボーロです。
腫瘍になり、当時のこととて治療の手立てもなく、口腔内にできた腫瘍だったため(のちに調べて扁平上皮癌だとわかりました)、ものを食べるのも大変で。知識もなければ、小動物用のパウダーフードなどもなく、手に入るものでなんとか命をつないでもらっていた、という状態でした。
そのときに選んだもののひとつがたまごボーロ。人間の子どもが食べるやつですね。今だったら人間用のお菓子は選ばないですけど、昔のことなのでしょうがないですね。舐めるなり、ちょっとかじるなりしてくれればいい、とケージの中に入れていたんです。
その日、気がつくとケージの隅をゴソゴソしています。とても痩せてしまって体力だって残っていないだろうに何をしているんだろうと見ると、ケージの隅にたまごボーロを隠しているんですよ。
シマリスが食べ物を隠すのは、後日、掘り起こして食べるためです。どう見ても将来があるとは思えない、明日、命を終えてもおかしくないような状態なのに(実際に翌日に亡くなったんですが)、どうして将来のためにそんなことをしているんだろう。
動物は諦めないんだ。そう思いました。もう死ぬかもしれないから貯食なんてしても無駄だし、なんて思わない。今だけを考えて生きている。
とても大きなことを最後に教えてくれた、と思いました。動物ってすごいなと。
そして亡くなったあと、ふと、たまたまあったガラス瓶にそのたまごボーロを入れ、今に至ります。
一部色が変わっているところがあるもののカビが生えたりもしていないみたいなんですよね。コルク栓がちょうどよく湿度をコントロールしてくれているのかもしれないけど。でもなんとなく、「教えたことを忘れないでね」と言われているような気もします。きっととっくの昔に別のシマリスに生まれ変わって、どこかのおうちで秋冬には攻撃的になり、冬には冬眠をしているのかもしれないですけど。
もちろん今では、そんな単純に「動物は生きるのを諦めない」なんて言えるわけじゃないことも知っているし、その言葉は諸刃の剣だとも思っているけれども(ペットの安楽死を否定するものではないです)、あのときの、死を前にしてもなお今を生きようとしていたシマリスの姿は、強く心に残っているのです。きっとこれからも忘れないんだろうな。
動物たちの今を支えていきたいですよね。
ではまた。
トップ画像は初代シマリスのりすこです。プリント写真をスキャンしたので、味がある(?)仕上がりになってしまいました。