動物との「ふれあい」って大切ですか?
ふれあい施設が増えているけれど
動物とのふれあい施設が増えている印象があります。最近だと東京ドームシティに大型施設ができたようだし、ペットカフェも多いですね。
動物とのふれあいは癒やされます。それは本当だと思います、実際ね。
でもそれは、ふれ「合い」になっている場合に限られるだろうと思うのですよ。施設が「触れ合い」を謳っているかどうかということではなくて、ふれられる動物とふれる人との間に通い合うものがあるのかどうか、だと思うのです。家庭で飼われているペットと飼い主さんとのふれあいは「触れ合い」ですよね。そこには信頼関係があるから。ペットはなでられて安心するし、その様子を見て飼い主さんも幸せになる。相互に愛情と安心と信頼が通い合うから、お互いに癒やしになる「触れ合い」ができるんだと思うんです。
動物介在活動のふれあいも、活動者側が動物へのケアを万全にしているならば、とてもよいものなのだろうとも思います。
では、ふれあい施設の動物とお客との間で、愛情と安心と信頼をやりとりできるんだろうか?
動物は「この人はお客さんで、自分の職務はこの人にさわられて、この人をいい気分にして帰らせること」だなんて思わないですよね。見知らぬ人に体をさわられるのはこわいことだと思うし、ストレスもあるでしょう。
自分をさわってくる生き物に対して、自分にとって敵なのか味方なのかを五感を駆使して判断しているんだろうなあと思います。逃げられないですからね。その場に慣れようとするんじゃないでしょうか。慣れようとする、というより、あきらめる、な気もしますけれど。
戦うか逃げるか固まるかあきらめるか
追い詰められたときに取る行動を「fight or flight(闘争か逃走か)」行動なんていいますね。あと「freeze(固まる)」もあります。
行動学や心理学的に正しいのかはわからないですが、「あきらめる」も付け加えたい気もします。ふれあい施設の動物が「ふれあえる」のは、あきらめているからなんじゃないかと思ったりもするんですよね。無力感というか。そんな動物たちをさわっても楽しくないよね…。
「あきらめる」もfから始まる言葉で揃えたいところですが、forgetだとちょっと違うか。オンライン英英辞典を見たら(ロングマン現代英英辞典)、「to stop thinking or worrying about someone or something(誰かや何かについて考えたり心配したりするのをやめる)」「to not care about or give attention to someone or something any longer(誰かや何かについてもう気にかけたり注意を払わなくなったりする)」という意味もあったので、forgetもアリかも。「fight or flight or freeze or forget」。悲しいなあ。
さて、動物を利用すること自体、否定しないですし、否定する立場にもないんですが、人間には動物をいろいろな形で利用できる(あえて言えば)能力があるわけじゃないですか。だからその能力は使わなくてはならないですね。つまり、さわられる動物のことを考える、ということ。
それができなければそれは「触れ合い」ではなく、一方的な「おさわり」です。
むしろ「動物触れ合い施設」ではなくて「動物おさわり施設」という名称にしてくれたほうがいさぎよくていいです(冗談ですよ)。
動物の管理もお客さんの管理も
「ふれあい施設」です、というのなら、「おさわり施設」ではないのだといえるだけの管理(動物の管理だけじゃなく、お客さんの管理)をしてもらいたいものです。動物種の選択や、どういった接し方が動物のストレスにならないのか、お客への指導、監視(言葉はきついけど、これができないと動物に安心と安全を提供できない)など、やるべきことはきっとたくさんあります。
特に子どもには適切な接し方をきちんと、何度でも教えてあげてほしい。「もし君が、知らない人から急にぎゅーってされたらどう思う?」「動物にも、君たちと変わらない気持ちがあるんだよ」などを。動物はぬいぐるみではないんだとちゃんと理解させてほしいです。
「ふれあい」に使う動物の種類は、いわゆる家畜化されているものに限定したほうがいいと思うんですよねえ。ミーアキャットに餌やり体験したりカピバラをさわったりすることで得られることって何なのだろうか。
モルモットになら餌やり体験に使っていいのか、うさぎならさわってもいいのか、というのはまた別のこととして(彼らに対して配慮しなくてはならないことも多々あるよ)、家畜化されていない動物が「身近で親しみのある対象」になるのはいいことなんだろうか。
衛生面の問題(共通感染症)はないんだろうか、家畜化されている動物ほどにわかっているんだろうか。咬傷事故のリスクはないんだろうか。動物側はストレスを感じていないんだろうか。
ほかにも気になるのは「野生っぽい動物を身近に感じちゃうこと」じゃないでしょうか。そうなると、野生動物との適切な距離感が取れなくなってしまうこともあるわけで。
昨今の、いろんな動物がたくさんいるタイプの「ふれあい」だと、ある動物をさわってからほかの動物を次々にさわるのも、大丈夫なんだろうかと気になります。感染症のリスクもだし、ある動物のにおいがほかの動物を刺激することもあるし。
どうなるだろうか、ふれあい規制
動物愛護管理法は改正のたびに厳しくなっていて、特にペット販売業者への規制は進んではいます(悪質な業者はいなくならないが…)。
一方では、「ふれあい」に関しての規制はどうでしょう。動物種による向き・不向き、お客さんに指導すべき内容(人員の配置)、動物へのストレスを回避するための方法など、規制すべきことはたくさんありそうに思います。
いま環境省では、犬猫以外の小動物について動物取扱業での飼養管理基準の作成が進んでいます。
ふれあいは動物取扱業ですから、この規制の範疇になるわけです。どういったものになるのか注目されますね。パブリックコメントが実施されるものなので、意見を伝えるチャンスもあります。
相互コミュニケーションになっていない、動物は雑に扱ってもいいんだと誤解させるばかりの「ふれあい(という名のおさわり)」なんてものはなくなったほうがいいと思いますけどね。
8月あたりから書き始めていたのに今頃のアップになってしまいました。
この間、読むべき記事がネットにあったのでどうぞ。
規制待ったなしだよなあ。
コツメカワウソ、スナネコ…日本で続くアニマルカフェ人気の裏にある野生動物の悲劇
野生動物のペット化問題 前編
足錠がついたサルやフクロウ…虐待に近い展示も。野生動物カフェやふれあい施設問題
野生動物のペット化問題 後編
ではまた。
トップ画像はイラストACより。