ずっこけ歴史巡行④人生の思い出つくり編
こちらのつづきです。
無事に巡行を終え、我々一行はすぐさま帰路のバスに誘導された。歴史衣装を身にまとった人たちが、ごくふつうの住宅路をぞろぞろと移動する姿はなんとも滑稽である。太秦の撮影所の休憩時間みたいな光景。往復するバスはすでに到着しており順番に入っていく。スタッフの人に刀を外され、「つけてたら邪魔になるんでね〜手に持ってバスに乗ってください」と刀を手渡され、急に令和の時代に引き戻される。バスの中を見渡すと平安、鎌倉時代の貴族や武士たちが真顔でちょこんと席に座ってる姿がシュールすぎた。しかも、みんな長丁場でぐったりしているし、後ろを振り返ると、兜に甲冑姿の熊谷直実が無言で通路真ん中の補助席に座ってるのだ、狭そうに。歴史人物たちの修学旅行、みたい。
どんどん時代を引き戻されていくかのように、着替え場所の中学校にバスは向かう。わたしはひそかにバスの中から考えていた。(だからバスの中ではあまり喋らなかった!)全部着替えてしまう前に、刀を持ってポージングを決めた写真を撮ってみたい!うずうずとはち切れんばかりの願望を胸にバスを降り、館内へ入った瞬間、侍女役のCさんに振り返り、意を決して「最後に一枚撮りたい写真があるから撮ってほしい!」と懇願した。Cさんはまるでその言葉を待ってたかのように、「うん、わかった、いいよ!」と爽やかに承諾してくれた。白拍子姿で刀を構えるという、人生で一度きりの機会を思う存分堪能し、最後の最後まで楽しみ切ったのだ。
衣装を着替え、最後はドーランを落とす作業。これが思いのほか取りきれない。役者さんは毎回こんなことをしてるのか。お互いにぴかぴかのすっぴんになり、「じゃ、おつかれー」と仕事終わりみたいにCさんとさわやかに別れ、自転車をゆっくりこいで帰路に着いた。
唯一心残りだったのが、あの天使のようなアムステルダムのクリスティ(ずっこけ歴史巡行①参照)の完全体を見ずに、しかも写真を撮れなかったことである。後日Cさんとそのことに気づき、二人でがっかりした。あまりの疲労でクリスティまで頭が回らなかったのだ・・!
後日会社が一緒であるCさんが、「会社の掲示板に写真が載ってたー!」とクリスティの完全体侍女姿を見せてくれた。かわいすぎて悶絶。日本でたくさんの思い出をつくれて本当によかったね、と気分は母心。
Cさんとはたまたま今年PTAの役員が一緒で、今回参加できて楽しかったねーと終わってからLINEで語り合った。お互いにノリが合う人になかなか出会えないので希少だとも。
わたしの心のアルバムにも、今回の思い出をペタッと貼りつけた。人生終わる間際まで、たくさんの思い出を貼り付けて楽しく生きてゆきたい。