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「今日は最悪の日だった」/一杯のコーヒーで気分を上々にする

イタリアのナポリに、カフェ・エスペーゾという第二次世界大戦後からはじまった風習があるのだという。余裕のあるひとがカフェでコーヒー2杯分を払い、一杯は自分が飲み、一杯を見知らぬだれかのためにレシートを置いていく。言わばごちそうする助け合い。
昔は貧しいひとが利用していたそうだが、いまは「今日は最悪の日だった」と思ったひとが見知らぬだれかからコーヒーをごちそうになって、気分が上々になって帰っていくひとも多いとか。
「今日は最悪の日だった」めちゃくちゃある。つい最近は一時停止違反で7000円持ってかれた。最悪だ。「僕、真横でしっかり見てましたんでね」と正義という名の刀をバッサリと振り下ろす警官の死んだ魚みたいな目。一回くらい見逃せよ!むしゃくしゃして歩いてると、なにも知らないセールスの兄ちゃんが「お姉さん、ちょっと見てってくださいよ〜」と通り向こうから能天気に呼び込みしてきて、舌打ちして無視してやった。あの兄ちゃんが悪いわけではない。そのあと、自転車やバイクの人たちが続々と切られていて、最悪加減がすこし減った。でも、しばらくは引きずった。違反金を郵便局で支払うとき「今年最後のお祓いや」と神社に賽銭するかのように崇高な想いで7000円差しだした。こういうとき、カフェ・エスペーゾがあったら。「今日は最悪の日だった」と言いながら、コーヒーを飲みたい。

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たみい
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