去年古本イベントでピンときて購入して以来、長らく読めていなかった一冊。スイミングの送迎の待ち時間に読もうとカバンに何度も忍ばせておいたが、ぱらぱらとめくってはすぐに本を閉じた。がやがやと騒がしい場所で読める本じゃまったくなかった。夜のみんなが寝静まっているであろう、深い時間帯に、たったひとりで読むことですらすらと読み進められた。120の掌編は、共感などとは程遠いようで実は近いかもしれない、物語。
抜粋して少し紹介。
むかしある人が、浮浪者とすれ違ったときに、「私もこの人と同じだ」とシンパシーを感じた、と言っているのを聞いて、そうだ、と思ったことがある。ごく普通の人に見えたとしても、世の中の主流じゃない人間なのだと
感じることがある。そこで世界と自分を切り離したくなるが、それではおもしろくない、それで終わらせたくない、と客観的に観察してみる。アメリアのいうとおり、痛みからユーモアが生まれる瞬間がくる。人間のさみしさは、自分を置き去りに生きる行為からやってくる。だからわたしはそういう人たちのことを書きたいし、読みたいのだ。