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「まぼろしの市街戦」:現実を見つめる視線

第一次世界大戦をテーマにした、ユーモアと風刺とウィットに富んだ作品「まぼろしの市街戦」。フランスの名匠フィリップ・ド・ブロカ監督が、1967年に製作した映画だ。この4Kデジタル修復版をアップリンク渋谷で観てきた。

戦争の狂気や愚かしさを笑い飛ばすかのごとく、ユーモアを交えて描いた名作。第1次世界大戦末期、敗走中のドイツ軍が、占拠したフランスの小さな町に時限爆弾を仕かけて撤退。進撃するイギリス軍の兵士プランピックは、爆弾解除を命じられて町に潜入するが、住民たちも逃げ去った町では、精神病院から解放された患者とサーカスの動物たちが解放の喜びに浸り、あたかもユートピアのような生活が営まれていた。

戦争を舞台とした映画でありながら、最初から最後までひょうひょうとした明るさとユーモアが漂う、なんだか不思議な作品だった。

これでハッピーエンドか……と思われる場面が何度かあったが、それでも終わらせない。あくまでも、ユーモアのある表現で、戦争の愚かさを突きつけてくる一面もある。

最後には、舞台となっている街を占領しようとやってきた、フランス人兵士とドイツ人兵士が相撃ちする場面がある。そんな兵士たちを見て、精神病院で暮らす女の子は「変な人たち」とつぶやくのだった。

もう一つ、とくに印象に残っているのは、街で時限爆弾が爆発するのをとめるために派遣された主人公の男性が、生命の危険を回避するため、精神病院の人びとに街の外へ出ようと呼びかけたときのことだ。精神病院に暮らす人びとは断固として街の外に出ようとしなかった。街の中でも隔離された病院に暮らしていた彼らは、自由に街に出られるようになってもなお、最後には病院に戻ることを選択した。そして、彼らはそこで仲間とともに暮らすことに幸福を感じているようだった。ここにはどんなメッセージが込められているのだろうか……と考えさせられる。


絵が美しくて、こころを彩り豊かにしてくれるような映画だった。

2018.12.16 鑑賞

花を買って生活に彩りを…