戦略ごっこ 【MC編】
07 STP,ブランドイメージ,パーセプションのエビデンス
7-1 ブランドイメージはマーケティングではなくシェアで決まる
個々のマーケティング活動ではなく浸透率やシェアと連動して上下する。
つまり、ブランドイメージ→購買ではなく、購買経験→イメージを生む。
〜コラム〜
シェアの異なるブランドのパーセプションは単純に比較できない
最低でも、顧客・未顧客は分けて分析すべき。
パーセプションを分解すると、
評価属性(使いやすい、香りが良い):ブランドと属性を関連づける割合が、顧客は高く、未顧客は低い。シェアと連動するため、未顧客への訴求軸にはなりづらい
記述属性(メイドインジャパン):ブランドと属性を関連づける割合が、顧客富顧客で大きく変わらない。未顧客への評価軸になりうる。
→自社の記述属性を顧客のゴールに対する価値に再解釈して、文脈と結びつけて想起を促すことがポイント
ただし、コモディティ化した成熟市場のベネフィットは、どちらにも取れる場合がある。企業側は自社特有の記述属性としても、消費者側からはカテゴリーの基本品質……
7-2 ブランドパーソナリティはマーケターの「豊かな想像力」の賜物にすぎない?
ペルソナ、購買ファネル、ブランドパーソナリティ、欲求階層説……それらすべて「そんな人、現実にはいない問題」や「そんな買い方はされない問題」
7-3 「独自の位置付け」という幻想:事実ベースで見抜くポジションイング戦略の盲点
差別化
→説得力 ベネフィットが得られるのはこのブランドだけ
→ブランドを買うべき理由
→競合に対する優位性
→ポジショニング確立
この態度変容は、現実の消費者行動に即していない。
1, 競合との差別化
ファクト:顧客の大半は差別化されていると思っていないし、そう思わなくても買っている。
2, 「このベネフィットは他のブランドから得られない」という説得力
ファクト:消費者がブランドをどの属性と結びつけるかは確立的に変わる。
→ある属性が消費者の中で1社とだけユニークに結びつくのは極めて稀
連想の一貫性は約50%程度
仮に一部の消費者に短期間、"深く強い"パーセプションを形成できても、売上やシェアにつながるかは別問題
3, ブランドを買うべき理由
ファクト:既存顧客には有効な面も。ただし未顧客には別の切り口が必要。
→「買う理由」で購買行動が起こるのは一部の既存顧客やヘビーユーザーであり、大半の消費者は「買う理由」あるいは「買わない理由」のような難しいことを考えていない。
4, 競合優位性
ファクト:どこと競合になるかは、ポジショニングではなくシェアで決まる。
7-4 ブランドはSTPで成長するわけではない:「薄く広いパーセプション」が鍵
他社の成功事例を振り返る際に、外部から見るとつい特に目立っている施策の効果のみへ目が行きがちだが、実際は水面下で複数のチャネルを使い分けて顧客層の異なる層へ比重複リーチを広げている。
たとえば、「徳次のベネフィットAを軸にしたコミュニケーションが功を奏した、ターゲットを絞り込んだポジショニングでファンを増やしたのが成功要因だ」
→やはりSTPが重要。ターゲット絞り込みやポジショニング確立へ投資
※疑うべきポイント※
本当にSTPのロジックで成長しているのか?
広範なカテゴリーニーズに対するメンタルアベイラビリティを築いているからこそ強い
つまり、1つのポジショニングだけでなくどの軸で見ても、その層に対してもポジショニングできている=
未顧客の獲得に「強いポジショニング」ではなく「薄いパーセプション」重要=間口の広さ
7-5 カテゴリーエントリーポイントの管理:結局のところ、単純に「間口の広いブランド」が強い
パーセプションの強さにこだわるより、パーセプションの広さを目指した方が賢明。
カテゴリーエントリーポイント(CEP):購買文脈とブランドのリンク
ブランドを選ぶ前に形成され、購買の選択肢を考えるきっかけとなる思考のこと
参考_CEP調査結果
・CEPは平均6.4個
・CEPが一つしかない人は1〜2割合(ライトユーザーが多い)
これらを踏まえて、カテゴリーポイント戦略の基本的な考えは、
「ブランドと結びついたCEP数の増加」「ブランドとCEPの結びつきを強める」
→想起の向きから考える既存顧客へのメッセージと未顧客へのメッセージ
メッセージの出しわけ 例_しゃぶしゃぶドレッシングの場合
A:安全な材料で作られていて安心感がある
→カテゴリーの一般的な評価視点であり、ブランドへの入り口は増えない
「実際の購買文脈では、何を起点にどのような向きで早期が起こるのが自然か」
たとえば、
・暑いからさっぱりしたものが食べたい
・時間がないからささっと食べられるものがいい
など"文脈的な手がかり"が重要。
・何からブランドを想起してもらうか、どこに新しい入り口を作るか=見顧客(CEP、ボリューム戦略)
文脈起点の発想、つまりCEPに切り替えることが大切。
B:サラダやとんかつにかけても美味しい ※これは既存にも効くためます広告用でも◎
・ブランドからどんなベネフィットを想起してもらうか=既存顧客(マージン戦略)
STP型のマーケティングでつくっていくのがベスト
→顧客がどんなプレファレンス(好み)を持っているか、どんな側面が価値を生んでるのか調査_差別化ポイントに落とす_ターゲットを絞り込む_買うべき理由を訴求する
C:野菜エキスのうまみが濃い:サラダやとんかつにかけても美味しい
7-6 CEPを探す:W'sフレームワーク
6W1Hの思考ツールで、さまざまな角度から広範囲に購買文脈を探れる
→デプスインタビューやアンケート、SNSリサーチ、ワークショップ、ブレストにも有効
🌟自社ブンドありきではなくカテゴリー視点で考える
例_台所用洗剤の場合
Why なぜそのカテゴリーを使うのか、どんなゴールのために採用するのか?
→前日の洗い物を済ませる、キッチンが汚いと気分が下がる
→食事後に洗い物を済ませる、台所の清潔感を保つため、食器を洗い終わりようやくゆっくりしたい
When カテゴリーを購買/利用するのは1日の中でいつか?
週や月、季節による違い、平日/休日による違いなどはないか?
いつもの行動が変わるのはどんな時?イベントやアニバーサリーの影響は?
→まだ家族が起きていない朝、早朝。夜に洗い物を済ませておいた方がいいのはわかっているけど、そんな気力も体力も残っていない
→食事後、無くなりそうなタイミング、夜ご飯は即座に、朝ごはんはつけおきの場合も(時間がないから)
イベントごとや、他人がといるときは洗うタイミング戸惑う(洗ってからゆっくりしたいor片付けてからデザート?誰がやる問題)
Where カテゴリーはどこで利用されるか、リアル/デジタルの区別はあるか?いつもと違う場所で利用することはあるか?それはなぜか?
→キッチン、子育てや家事の間に1人になれる場所
→キッチン/リアル、キャンプ場、洗濯の食べ物汚れ
While カテゴリーを利用する前、あるいは利用した後に何をしているか?どんな行動の最中にカテゴリーニーズがうまれるか?
→家事や仕事に取り掛かる前、音楽を聞いたりして1日のペースを作る
→食事後や調理中、音楽や映像を見ながら
With/For what そのカテゴリーを使うとき、他にどんなカテゴリーを同時に利用するか?
カテゴリーが利用できないとき、何で代用するか、どんな行動をするか?
それらは利用行動にどう影響し、どう体験を変えるか?
→コーヒーを入れていることが多い
→ipadやスマホ、テレビ、ポッド、電子レンジ、洗濯機
With/For what 買うのは誰で、利用するのは誰か?
利用するときに誰がいるか、誰かと一緒に使うか?
行動に影響を与える第三者はいるか?
誰のためにカテゴリーを利用するのか、自分だけか?
→1人。掃除をしている間は無心になれる
→1人。もしくは家族や友人と。だいたい自分が洗い担当で相手に拭きと収納を依頼する。自分や家族、友人のため。食事を終わらせる、リセットできる。
How feeling カテゴリーを利用する前はどんな気分か、利用前後でどのように変わるか?
利用している最中はどんな気分か、どんな感情を持っているか?
何が行動を増やすのか、あるいは減らすのか?(物理的、心理的な報酬はあるいは罰)
→台所は1日に何回も行くところだから、綺麗だと行くたびに嬉しくなる。
→洗い物を勝手出る感謝される。料理は苦手だから代わりに役割を果たす。
7-7 CEPに優先順位をつける:メンタルアドバンテージ
CEPのポテンシャルを分析し、どのようなロジックで優先順位をつけるか
・CEPに適した製品やサービスを提供できるか
自社の強みと、CEP価値のリンク
・CEPと競合ブランドのリンクの強さはどの程度か
競合が強いメンタルアビリティを確立しているCEPは避けたい
・CEPごとに購入頻度や利用金額に差があるのではないか
企業にとって各CEPの価値は等価ではない
・ブランドA
・ブランドB
・ブランドC
・ブランドD…
<CEPのポテンシャル評価のポイント>
・なるべく間口の大きなCEPを選ぶ
(特に小さなブランドほどカテゴリーとの結びつき強化→記憶深化)
・カテゴリーニーズが空いていたら真っ先に獲る
・「ヘビーユーザー専用」CEPに注意
(ライトユーザーの反応がない特殊なCEP→顧客層や地域、時期が限定的)
・そのCEPにおける消費者のゴールが自社の強みとリンクしているか
・10ポイント以上の競合が複数存在する場合、そのCEP厳しいかもしれない
・小さなブランドや導入機はアドバンテージの高いブランドに"寄せていく"のも手
・競合のメンタルアドバンテージが高くても未顧客にチャンスあり
・10ポイントを超えたら低頻度のローテーションへ
→アドバンテージの大半が既存顧客によるもので、未顧客層ではメンタルアベイラビリティが弱いというケースも。
例えば、間口の広いCEPを狙い、あえてアドバンテージの高い競合に寄せていくなど。基本的に「強みを伸ばす」のであって「弱みを潰す」のではない。
フォーカスするCEP 短期目標1つ、長期目標1つが無難。
平均的な事業会社でも年間で取り組めるCEPは3つ程度。
7-8 CEPでの早期を設計する:リトルーバルデザイン
フォーカスするCEP決定→ CEPとブランドのリンクを強化する施策を検討
広告メッセージやクリエイティブ、顧客体験に落とし込んでいく。
必ず取り入れるべき"想起のトリガー"
「状況的な手がかり」「利用文脈のゴール価値」
「状況的な手がかり」
コミュニケーションやCXの設計においては、利用文脈ごとの再解釈が必要。
購入時の前後文脈を「状況的な手がかり」としてメッセージやクリエイティブの中に配しておき、カテゴリー消費のエピソードとブランドを結びつける
ブランド名やベネフィットだけを覚えさせようとしてもうまくいかない…
環境的文脈依存記憶:物理的な環境のみならず、心理的な環境も記憶に影響を及ぼし、特に両者の組み合わせがポイントになる。
人は「いつ、どこで、誰と、何をしているとき、どんな状況で買った」という文脈が影響する。
文脈単位の想起をデザインすること=リトリーバルデザイン(記憶からブランドを取り出すこと)が重要。
「利用文脈のゴール価値」
コミュニケーション設計において大切なのはCEPで消費者が見たいものを見せること。欲求に駆動されたゴールを見つけ、そのゴールに対する価値としてブランドを提案すること。
購買時、人は「商品カテゴリー」から取り出すというよりは「ゴール由来のカテゴリー」から取り出している。
消費者のゴールとブランドの結びつきが「強く、より大きな報酬が期待できるほどWTP「willingness to pay(支払い意欲額)」が高まる。
ゴール価値=報酬系は将来売上との高い相関がある
好きと欲しいでは脳の処理の仕方が違う。
7-9 オルタネイトモデルによるブランドの「再解釈」
では、リトリーバルデザインを実際の施策開発に活かすには?
→オルタネイトモデルが有効
「状況的な手がかり」「利用文脈のゴール価値」を見つけて、メッセージに落とし込む
<リトリーバルデザインの要諦>
「状況的な手がかり」CEPを象徴的に表す場面、環境、状況を取り入れる
「利用文脈のゴール価値」ブランドを消費者のゴールに適した価値として再解釈する
まず、企業側の訴求ポイントをそのまま伝えるのではなく、
下記ステップで利用文脈における顧客価値になるように再解釈していく。
「マーケターの合理」と「顧客の合理」
顧客の合理を"矯正"したり、こきゃ喜雨の合理に合わない”正しさ”を前面に出しても受け入れてもらえない。
例えば、
マーケターの合理かつ正しい順序:体調不良→肌荒れ
体調不良に対処することが価値では?
メッセージ「1日疲れた体と心に、マルチビタミンのご褒美!」
顧客の合理:肌荒れ→体調不良
朝イチに肌のハリやツヤを実感できることが価値
メッセージ「あさイチに潤いのピークを持ってくる肌ケア登場!朝の余裕が1日を決める」
意見:メディアや権威のあるブランドであれば、啓蒙や新たな気づきを与えるメッセージも可能なのでは…?
7-10 「ブランドの一貫性」についての誤解:消費者は混乱などしない
ブランドメッセージを増やしすぎると消費者が混乱するのでは?
このブランドはいつ、どういう時に使うのか迷うのでは?
→消費者のブランド選択は生活の中でのカテゴリー需要から生まれるので、そも生活文脈と結びついていないブランドはそもそもコンライン以前に想起すらされない。
例_海での利用文脈と山での〜の場合も衝突することはまずない。
仮に山での想起が弱いのであれば、海のCEPが混乱を生んでいるのではなく、単に「山の広告料が足りていないだけ」
メッセージをコロコロ変えるとブランドの一貫性が崩れるのでは?
→広告予算が分散され、各々の広告規模が小さくなりどれも中途半端になる
から。
一方で、「独自のブランド資産(DBA)の一貫性」は極めて重要
特にIMC(統合マーケCP)では各タッチポイントでの一貫性は重視されるが、異なるキャンペーン間での一貫性は看過されがち。
視覚的な資産や言語的な資産、スタイルの一貫性などのDBAは慎重に扱う必要がある。
ブランド価値の解釈が新しいことは良いが、DBAは徹底して同じであるべき
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