室生寺その2(宇陀市)
というわけで紅葉に彩られた石段を上ると、日本史の弘仁・貞観文化の建築の分野で必ずと言っていいほど登場する室生寺の金堂が現れた。無論、国宝の指定を受けている。
記憶する限り弘仁・貞観文化の建築は高校等で使う主要な資料集には、この室生寺の金堂と五重塔しか見たことがない。この時期の現存建築は極めて限られているのであろう。
予備校では室生寺のような山岳寺院が密教の山岳修行の代表例であると教わった。非常に印象深い建築であるだけに、実物を目にした時に感動は言葉に言い表すことができない。
屋根は柿葺かと思っていたが、銅葺のようである…
これは一時的な措置なのかわからない。境内には葺き替えへの協力を呼び掛ける看板があったから葺き替えを行うつもりなのかも。
なお、金堂も近世に外に張り出す形で礼堂(らいどう)の部分を追加している。写真手前の寄棟造りの屋根が不自然に膨らんで外に張り出しているのと、下部の石段が二段になっていて、懸造になっているのはこのためである。
追加された礼堂の部分から金堂内部の諸仏を見ることができる。こんな貴重な建物だが、このように歩けるのだ。
内部に安置されているのは、こちらも弘仁・貞観文化の代表彫刻として紹介されることの多い国宝の木造釈迦如来像(一木造)や十二神将の一部等の諸仏である。
金堂に安置されていた仏像のうち何体かは2020年開館の宝物館へ移らされている。
建物内部の構造や柱の関係で仏像は見えにくい。内部には入れない。だが、言うまでもなく平安時代初期の貴重な建物であるし、山岳修行の密教寺院の雰囲気を強烈に伝えてくれる、素朴ながら実に美しい仏堂だ。
なお、金堂の傍らには弥勒堂がある。
こちらも中世の建築(鎌倉時代)だが、近世に大幅な改造がなされている。重要文化財の指定を受けている。
内部は弥勒菩薩像および神変大菩薩(役小角)像が安置されている。
金堂脇の階段を上がっていくと、これまた国宝の本堂(灌頂堂)があった。
教科書や資料集には載っていなかったので、この建物の存在は知らなかった。弥勒堂と同じくやはり中世の建築で鎌倉時代後期(延慶元年(1308)の建立)である。
金堂も良いが、中世の建築にかかるこの堂もなかなか素晴らしかった。
室生寺の境内の主要な伽藍は平安初期の金堂と五重塔と、中世の弥勒堂、本堂(灌頂堂)とラインナップが凄まじい。
そのうち3件が国宝指定である。
さて、本堂の脇を上っていくと、いよいよその五重塔に到達する。
(続く)
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