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上粕屋比比多神社(子易明神)(伊勢原市)

というわけで、もう一つの比々多神社にやってきました。

大山へ向かう県道611号沿いにある。

駐車場がちゃんと用意されているのだが、これが非常に止めにくい。道に対して入り口がほぼ並行になっているため、伊勢原市街地方面から来ると、逆V字に曲がらないといけない。

最初はそうしようと思ったが無理だったので、一度スルーしてUターン。今度は大山方面からトライしたが、そうすると前向き駐車になり、バックで出なければいけなくなる…

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見取り図

考えた末に、もう一度スルーして、伊勢原市街地方面からやってきて、一度路肩に車をとめ、バックで入れた。


交通量が微妙にあるので、少し冷や冷やものだったが、うまくいった。よかった。


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まっすぐ止めるのもなかなか難しい駐車場だった

なお、この駐車場、横のガードパイプを指標にすると車が斜めに止まってしまう。こんなガラガラなのだから、斜めに止まっていてもいいだろう、と思っていたが、一応、後から他の人の車が来たときも考えて、自分の車をまっすぐに直した。


それは結果的には正解だった。このあと2台車が来て、駐車場は一時全部埋まった。


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駐車場から道路を渡る

駐車場から見ると新東名高速道路の高架橋を作っているのが見えた。ちなみにここに来る時も新しくできた伊勢原大山インターを使った。


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新東名の建設現場を望む

駐車場から県道を横断して神社に向かうと、ちょうど裏から神社に入る形になる。


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本殿

そうすると、拝殿の正面へ向かう途中の境内にこんな案内板があった。


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歌川国経筆の絵馬の案内板

どれどれと見てみると…


神奈川県指定重要文化財 板絵著色歌川国経筆美人図絵馬 この絵馬は厚木市上荻野出身の浮世絵師歌川国経によって描かれました。花魁を中心に左に新造(花魁付きの若い女性)、右に禿(花魁に仕える十歳前後の少女)が描かれています。絵馬の額面右上には「東都 一陽斎歌川豊国門人国経画」と絵師名が、右下には「上荻野 願主神崎半兵衛」、左下には「綱島佐七、神崎長左衛門、斎藤伝右衛門」と奉納者の名が記されています。奉納した人々もまた、国経と同じ厚木市上荻野の人であったことがわかります。歌川国経は、本名を斎藤源蔵といい、安永六(一七七七)年に生まれました。長じて、浮世絵界で名筆といわれ、美人画、役者絵を得意とした歌川国豊(一七六九~一八二五)の門人となりましたが、絵師としての活動は少なく、作品はわずかしか残されていません。この絵馬は、国経が二十六歳の時に描いたものといわれています。国経は、文化五(一八〇八)年に三十二歳の若さで生涯を終えています。日向の浄発願寺の入口には、国経を偲ぶ六角形の供養塔が今も静かにたたずんでいます。平成十七年三月伊勢原市教育委員会

…ということで、歌川国経うたがわくにつねという浮世絵師の筆なる絵馬が当社にはあるという。しかもそれは県の文化財の指定(昭和35年11月4日)を受けているというのだ。

なお、案内板にある「著色」に「ちょしょく」とルビがふってあるが、たぶん本当は「ちゃくしょく」と読むのだと思われる。美術史詳しくないんで、わからないけど。


あと厚木市上荻野と書かれているが、これは現代の私たちにわかりやすく、そう書いたもので、当時は相模国愛甲郡上荻野村になる。


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これがその絵馬なのだが、どこにこの絵馬があるかは書いていなかった。


32歳という若い生涯…奇しくも今の私と同い年。


 


 


この短い生涯、そして死を迎えた32年目の年を彼はどう生きたのであろうか……


 


しかし、彼の作品はあまりないというし、ネット上では情報がほとんどなかった。


 


なぜだか知らないが私は彼に強く惹かれた。


 


案内板によれば、彼の伊勢原の浄発願寺に供養塔があるのだという。


浄発願寺自体は行ったことはあるのだが、当然知らなかったので、その供養塔は見たことがない。


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いつかまた浄発願寺に行ったならば、歌川国経の供養塔を見てみたいものだと思った。


 


 


拝殿前まで来た。


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拝殿

ここでも鈴緒は使用停止。


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鈴緒

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神社庁からの指示らしい

まさか新型コロナウイルスは神様との縁さえも奪ってしまうのか…


そう思いながら賽銭を入れて大きな柏手を打つ。


わが身は何も祈らねど、祈るは国家安康…と思っていた時だった。


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拝殿内

拝殿内をふと見ると、絵馬がいくつか見える。その中に……


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さきほどの案内板の絵馬が…!

あった!


これがさきほどの案内板にあった県指定の重要文化財、歌川国経筆の浮世絵の絵馬だ!


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こうやって普通に見れるとは…

ちょっと遠いが、普通に見ることができる、ということに感動。


案内板にあった通り、花魁とその付き人の三人の美人を描いた美人画だ。


それにしても浮世絵の絵馬、というのも自分の感覚では珍しいし、面白い。


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拝殿内には他にも絵馬が

拝殿内には他にも絵馬があった。


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何の絵だろう?

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こちらも何だろう?

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これは…絵馬?

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御影(おすがた)?

さらに拝殿内には比々多神社の御影(おすがた)と思われる掛け軸もあった。


お札になっていたら欲しかったなー


 


入り口まで行ってみる。鳥居越しに新東名の高架橋を望む。


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鳥居越しに新東名の高架橋が建設中

三ノ宮比々多神社が「冠大明神」の神号を持っていたのに対し、こちらは「子易明神」と称されている。


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入り口

「子易」とは「子安」とも書き、安産、子育ての神であることが想像される。


案の定、入り口にはそう書いてあった。


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子育て安産の守護神と。

実際、こんな小さな神社なのに、そして止めにくい駐車場なのに、車が次々と来て、お参りに来る人がコンスタントにいたのには驚き。


そして例外なく、参拝客は家族。いずれも子どもを連れている。


小さな生まれたてのような赤ちゃんを連れてきた若い夫婦を見て、心が和む。


彼らもみんな地元の人なんだろうけど、今もこうして地域の信仰の中心となっていることがわかる。


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本殿

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拝殿の柱

拝殿の柱に何か書いてあった。


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説明書きには……

細くなった向拝<ごはい>の柱(由緒) 参拝者が子宝安全を願い少しずつ削り持ち帰ったため、細ったもので向かって左が男子、右が女子出産祈願と言う。今の柱は三代目と言われている。現在は社殿保存のため削ることを禁止し、肌守りに神供米を付けて配付している。 テレビ放映(テレビ東京いい旅夢気分 BSそこが知りたい NHK小さな旅 すくすく赤ちゃん テレビ東京おしかけスピリチュアル)


 面白い風習だね。


小さい神社だったが、見どころは多かった。来てよかった。


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拝殿

(終わり)


 

◆おまけ

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ホームセンターや百均で買い物。こういうローカルな郊外型店舗に立ち寄ると埼玉で暮らしていた時のことを思い出す。


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一人旅なので、家にいる妻に内緒で豪華なランチ。ちなみに来たのは、また伊勢原・板戸の麺処サガミ。ここに来るのはたぶん4回目。


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妻に内緒であることでバチがあたったのか、帰ろうと思ったら猛烈な雨。


車まで走って戻ったが、結構濡れた。


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帰り道も結構な雨…


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そして帰りも新東名。伊勢原大山インターから乗りました。


(おわり)


 


※地元の伊勢原市文化財行政関連の文献やホームページに、この神社は「上粕屋比比多神社」と表記されているため、記事のタイトルも「子易比々多神社(伊勢原市)」から→「上粕屋比比多神社(子易明神)(伊勢原市)」に変更しました。なお、同市三ノ宮所在の比々多神社は伊勢原市のホームページでも「三之宮比々多神社」となっているため、こちらの記事はそのままになっています。(2022年5月19日追記)

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