2025年、Vertical AIへの理解がビジネスの命運を握る
こんにちは、株式会社BLUEISHの代表取締役CEO兼CTO 為藤です。
最近ではVertical AIやOpenAIのo1とo3が話題になっていますよね!
私はo1 proを毎日使っていますが、今までのLLMとは明らかに違い、「思考の性能」が格段に高まっていることがわかります。次世代のOpenAI o3がとても楽しみです。
もしo3が登場すれば、LLMの思考の性能はAGIに近い領域に入ってくると思われます。そうなると次に重要になってくるのは、データの正確性でしょう。
こうした背景からか、以前に「AIと言うだけで信頼性に欠けるイメージを持たれることもあるため、あえてAIという言葉を使わないようにしている」という話も耳にしますがこれも1~3年以内には解決されるのではないかと感じています。
この様にLLMの「思考の性能」が進化していき、2025年は本題となる「Vertical AI」と「AI Agent」が本格的に社会実装され、スタートアップとして企業の競争力を大きく左右する年になると考えられています。これらの技術は、業界に特化した高い付加価値を生み出し、さらに自律性を持つAI Agentとの組み合わせによって、ビジネスのあり方を根本から変革していくと予測されます。
先んじて活用し、この波に乗るためにはどのような理解や戦略が必要なのか、さまざまなソースを参考に解説していければと思います。
※ちなみにビジネス向けで且つソースを軸に執筆したので解説の影響でむちゃくちゃ長いです!!
まずはAI Agentを改めて解説
AI Agentとは?
「AI Agent」にはいくつかの定義がありますが、ひとことで言うと、これまで人間が担ってきた判断や意思決定を、AIが多角的に分析し、自律的に実行できる概念的フレームワークのことを指します。
Anthropic社やMicrosoft社が示している定義が特にわかりやすいので、ここではそれらを参考に解説していきたいと思います。
<Anthropic社の顧客観点での定義>
<Anthropicでの定義>
<Microsoftでの定義>
Anthropic社では「自律性と動的な制御能力を持つシステム」としてAI Agentを定義しています。
Microsoft社では「環境を認識し、推論し、計画を立て、決定を下し、行動を起こす能力を持つ自律的なシステム」としてAI Agentを定義しています。
<LLMとAI Agentの違いは?>
こちらはとても簡単です。Execution / Actionができるか否かです。これはさまざまな論文でも同様の事が言われています。
SaaS is Dead、MCP、Agentic Workflow
2024年後半に話題となった「SaaS is Dead」「MCP」「Agentic Workflow」この3つのキーワードが「AI Agent」「Vertical AI」と深く関わっていく為、先に解説します。
1. SaaS is Dead
昨年11月頭頃から「SaaS is Dead(SaaSは終わった)」というフレーズが大きな話題を呼びました。しかし、これは「SaaSが消滅する」という意味ではありません。むしろ、従来の単機能・単領域のSaaSから次のステージへと進化していることを示すキャッチコピー的な概念です。
具体的には、SaaSが「単なるソフトウェアの提供形態」を脱し、AIやAPI連携を組み込んだより複合的なサービスへ変化している、という流れを指します。たとえば、AIを活用してユーザーのデータを高度に分析し、必要に応じて外部サービスともシームレスにつながるような仕組みが登場してきています。
そのため「SaaS is Dead」という言葉は、「SaaSが次なる形、つまり“AIなどと統合されたより高度なサービス形態”へと進化している」ことを強調しています。最近ではこれを「SaaS is Function」と呼ぶ動きもあり、ソフトウェアがサービスとして提供されるだけでなく、サービスそのものがAIや多様な連携機能を前提に設計される時代が近づいているとも言えます。
2. MCP (Model Context Protocol)
「MCP(Model Context Protocol)」は、11月頃にAnthropic社のClaude向け新機能の一つとして話題になった概念です。LLM(大規模言語モデル)と“コンテキスト”とのやり取りを標準化・拡張するためのプロトコルを指します。
ちなみにAnthropic社がこのMCPをオープンソースとして公開しています。
これAI界隈では「革命だ!」と騒がれる程のものです。
※ここでの「コンテキスト」とは「LLMが適切な出力を生成するために必要となる追加情報や指示」を指します。
<MCP公式より>
ではMCPは何が出来るのか?
こちら公式が提示する一般的なアーキテクチャです。
<この図をわかりやすく解説>
・「Host with MCP Client」(Claude、IDE、ツール類)が中心となって動作します 。
・3つのMCPサーバー(A、B、C)が接続されており、それぞれが異なるデータソースと連携しています 。
・サーバーA、B → ローカルのデータソースにアクセス
・サーバーC → インターネット経由でリモートサービスにアクセス
・すべての通信はMCPプロトコルを通じて行われます。
ここでの「データソース」や「リモートサービス」ですが、「ローカル環境のファイル」「Google Drive」「Slack」「Notion」「Google Maps」等さまざまななソースに該当します。
この図からつまり、MCPは「AIの手足」として機能し、これまで人間が手作業で行っていた多くの作業を、安全かつ効率的に自動化することができます。
現在はまだ明確な業界標準規格があるわけではなく、「LLMにどのようなコンテキストを与えて、どのように返答を得るか」を体系的に整理しようという提案・アーキテクチャ的な段階にあります。将来的にはAnthropic社以外の企業や開発コミュニティでも対応が進む可能性があります
このMCPがAI Agentと深く関わってくる事になると私は考えています。
3. Agentic Workflow
「Agentic Workflow」は、4月ぐらいから話題にはなっていました。その頃は世の中的にまだAI Agentが注目されていませんでした。
要は、WorkflowとAgentの特性を組み合わせた新しい概念です。
では、Agentic WorkflowがどういうものかAnthropic社の研究論文ベースで説明します。
<従来のWorkflowとAgentの違い>
<Agentic Workflowの特徴>
「自律性と構造化の融合」
事前定義された枠組みの中で、AIが自律的に判断して行動
「動的な制御」
タスクの達成方法を状況に応じて柔軟に変更可能
「プロセスの最適化」
AIが自ら最適なワークフローを構築・調整
このアプローチにより、構造化された業務プロセスと柔軟なAI制御を組み合わせた、より効果的なタスク実行が可能になります。
Vertical AIでの4つの主要カテゴリー
2024年後半、「Vertical AI」がかなり話題になりました。とはいえ、「Vertical AI」なのか「Vertical AI Agent」なのか、さまざまな情報が飛び交っていて混乱している方も多いかもしれません。Vertical AIと Vertical AI Agentは一応同じ概念を指していますが、若干異なる文脈でもあります。
そこで、これらの言葉も改めて整理してみたいと思います。
<Emerging Wedges in Vertical AI Startupsより>
ここでは「Vertical AI」の文脈がとても強いです。
Vertical AIは、特定の業界や分野に特化したAIアプリケーションを指します。
Vertical AIは4つの主要カテゴリーがあります。
※私はこの図がとてもわかりやすかったので是非とも皆さんにも見て頂きたいです。
Vertical AIでの3つのビジネスモデル
Bassemer Venture Partners での説明では「Vertical AI Agent」の文脈がとても強いです。Vertical AI Agentは、Vertical AIの概念にAI Agentの特性を組み合わせたものになります。
それではここでの「Vertical AI + AI Agent」の解説をしていきます。
<なぜ ”Vertical AI” なのか?>
<AI時代を象徴する3つの新しいビジネスモデル>
①コパイロット(Copilots)
【上記の引用から要約】
・ユーザーの「隣」にいて、作業を大幅にサポートするAI。
・たとえば、コードを書いているときの自動補完や文章の要約など、「人がやる作業の効率」を劇的に高める。
・料金設定 は、従来のクラウドソフトウェアと同様に「1ユーザーあたり(月額いくら)」などが基本。
・例)MicrosoftのCopilotはOffice 365の既存料金に追加30ドルかかるが、それでも業務効率が上がるため、多くの企業が導入を検討。
② エージェント(Agents)
【上記の引用から要約】
・特定の機能や仕事をほぼ自動で完結させるAI。
・コパイロットが「人間を手助け」するのに対し、エージェントは「人間なしでどんどん動く」イメージ。
・例)営業リードの探索・アポ取り、顧客サポート電話の自動応答、採用の候補者管理など。
・料金設定 は「人件費の削減分に見合う価格」を取ることが多く、たとえば「1人雇うより安い金額で24時間働く」モデル。
③AI活用型サービス(AI-enabled Services)
【上記の引用から要約】
・従来、人間が行っていたサービス業務を、AIを使ってより安く・早く・確実に提供する形態。
・例)法律事務での書類作成(示談交渉書など)を自動生成したり、医療請求関連の手続きを自動化したり。
・料金設定 は従来のサービス企業より安価かつ高マージンを狙える。1案件いくら、といった成果物ベースでの課金が多い。
<新時代のVertical AIリーダーたちの価格モデル>
【上記の引用から要約】
・利用量や成果物ベースに注目が集まっている。
・さらに、サブスク(定額)プラン や 段階的な料金プラン(Tier制) と組み合わせることで、「基本収益 + 使われるほど増える追加収益」という形をとる企業が増加中。
・例)翻訳AIの DeepL が「ユーザー数+翻訳ファイル数」をベースに課金するなど、わかりやすい仕組みが増えている。
<Bassemer Venture Partnersによる”Vertical AI”まとめ>
「Vertical AI」の企業は、横展開型AIやSaaSで培われたノウハウを活かせる部分も多いが、業界特有の課題や競合 をどう攻略するかが重要。
既存の大手企業もAI機能を続々と取り込んでくるため、差別化や防御力(参入障壁)の構築が必須。
投資家や創業者視点では、機能的価値・経済的価値・競合状況・ディフェンシビリティ を総合的に見極める必要がある。
BLUEISHが2024年後半で動いていた取り組み
BLUEISHでは2024年後半、今後の競合優位性を高めるために以下4つのポイントを軸に活動を進めてきました。
1. 業界特化型のAIワークフローの開発
さまざまな業種ごとに求められるワークフローを最適化し、効率と専門性を高める取り組みを実施。これにより、アナログ作業を含む、既存のシステムや業務フローとの連携がスムーズになり、クライアント企業により高い付加価値を提供できるようになりました。
2. BPO企業とのパートナーシップの構築
業務効率を支援するBPO(Business Process Outsourcing)企業との提携を強化することで、既存の業務プロセス設計はBPO企業に任せて、AI活用部分に集中する事が出来た。
3. AI-UXの磨き込み
AIワークフローを構築する上で既存の業務プロセスをそのままAIにするのではなく、AIならではの流れがある為、AIの体験設計を意識したUI/UXの最適化が重要だった。
4. データ資産の再評価
自社が保有するデータはもちろん、クライアントやパートナー企業との連携データも含めて価値を見直し、顧客専用の分析基盤を構築。AI導入の基盤づくりを強化することで、今後のサービス拡張に備えています。
2025年のビジネスシーンをリードするために
BLUEISHでは、これらのVertical AIの情報を踏まえ、2025年のビジネスシーンではこれまでの取り組みに加え、以下の4つのアクションも加えていく予定です。
1. Vertical AIとAI Agent戦略の明確化
業界特化型AI(Vertical AI)と自律的AI Agentの組み合わせにより、企業や社会の課題を最適に解決する戦略を策定します。BLUEISHの強みを活かし、革新的なソリューションを生み出すことで、新たな価値を提供していきます。
2.AIの透明性の担保、AIの倫理的ガイドラインの整備
AIが生活や業務に及ぼす影響が拡大する中、データの扱いと意思決定プロセスの透明性がとても重要です。リスクやバイアスを最小限に抑えるため、透明性と責任あるガイドラインと運用体制を整備し、信頼される企業としての責務を果たします。
3. 人材育成の積極的体制構築と投資
AI技術はもちろん、技術・ビジネスの両面で力を発揮できる人材を育てるため、社内外のリソースを活用し、学習と研修の機会を創出します。これにより、組織全体の専門性と総合力を高め、BLUEISHが誇るイノベーションを生み出し続けます。
4. LLMのデータの正確性の担保
冒頭でもお話ししたようにLLMの「思考の性能」は今後のo3の登場で格段に上がる事がわかります。その上で重要なのが「データの正確性」です。とは言え、現段階では世の中的にもまだ難しい部分も多々ある為、限りなく正確に近づけるアプローチもしくは人間のアクションが必要だと考えています。
これらを踏まえた上で誤情報や不正確な出力を制御・検証する仕組みを強化や信頼性の高いデータソースと品質管理を徹底し、「人間の確認・補完」を取り入れながら、お客様にとって安心して利用できるAIを提供します。
いかがでしたでしょうか。今、話題となっているVertical AI。2025年に向けて加速するAI技術の進化を見据え、さらに柔軟かつ戦略的に取り組みを展開していければと思います。
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