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今日をめいっぱい楽しんだ

「女性一人では、入りづらいお店に立ち寄ってみたい」

2年ぶりに会った友人のリクエストで、長らく立ち寄っていなかった新橋の街を歩く。

車一台、ようやく通る道。赤ちょうちんがいくつも、通りに並ぶ。右も、左もにぎやかに。ビールジョッキ片手にした、サラリーマンのグループが、あちこちで楽しそうに話をしている。声が通りまでとどいて、空気もわんわんと楽しく震える。

「お祭りの日みたいね」

地方の小さな町から来た友人は、そう、ため息をついた。どの店先も楽しそう。どこに入ろうか、迷ってしまう。

道いっぱいに、似た色合いのスーツを着た人が駅に向かう。その流れを横切ったり逆流したりしながら、友人とふたり。これから入る店を探して、街を歩く。

一軒のやきとん屋で、お店のおねえさんと目が合った(らしい)。お店の中は、ほぼ満員。透明なビニルシートでおおわれた、店先の席に、ちょこんとある席が二つだけ空いていた。ビールケースで出来ている。そこに案内され、友人とふたり。小さくなって座る。

「なんだか、テーマパークに来たみたい……」

メニュー表をひっくり返してみたり。ビールケースのイスを持ち上げてみたり。テーブル代わりの板をなでてみたり。友人は、たのしそうにそわそわし続ける。

それを見て、わたしも楽しくなった。友人の「そわそわ」が私にも伝染した。

「お酒を飲まなくても、この空気だけで酔っ払えそうね。たのしいね」

せっかくだから、とホッピーを頼んで、2人で分ける。半分飲んだだけで、もう、気分はすっかりできあがった。周りの声をかき分けるようにして、ふたり、近況を話す。あっという間の、2時間だった。

店を出て、新橋駅に向かった。

「次は、ガード下で立ち飲みをしてみたい」

随分と、新橋の街で飲むことを気に入ったらしい。くるくると、跳ねるように回って、はしゃぐ友人を見て。明日の研修が心配になる。

明日の朝、彼女は起きられるのだろうか。

それでも、あれだけ。時間と街をたのしく味わえたなら、明日のことは、まあいいか。

今日を、めいっぱい楽しんだ。久しぶりに、たくさん話できてうれしかった。次、会うのは来年の春。友人の結婚報告(になる予定)のときだ。

来年の春を、友人とふたり、たのしみにする。その日も、今日くらい、今日以上にたのしくなりますように。

#友人 #再会 #赤ちょうちん #今日の楽しみ #日記 #予祝

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