雨が降ったら
久しぶりにまとまった雨が来た。花の色が鮮やかになった。
暑くてなかなかに腰の重かったベランダにも、するりと出ることができた。湿気た窓のガラスを拭くと、いつもより汚れの落ちがいい。勢いがついて、網戸も拭いた。
雨風が強くなった。網戸のそうじは途中で切り上げて部屋に入った。
ばらばらと窓に当たる水の音をききながら、本を開いた。講座用の資料をまとめなければならない。本を開いたのに、窓の外が気になって、なかなか読み進まない。
あきらめて、本を替えた。水の当たる音をききながら読むなら「月の影 影の海」がいい。雨の音の中で晴れをつかみにいく感覚が、このストーリーの底に流れている。
この秋(10月11月)に新刊が出るという。楽しみにしながら、読み返す。
気づいたら、雨がやんでいた。静かになった。ベランダに出ると散らずに残ったらしい鮮やかなピンクの花が見えた。
ただ、それだけの一日。
雨が降った日のこと。