5/7お滝さん採集記
子供時代、家から10分くらいの場所に地元の人達から"お滝さん"の愛称で呼ばれていた小さな滝のある山があった。
僕の地元はとても田舎で家の裏は見渡す限り田んぼしかない。
小学校までの通学路もただただ田んぼ道を真っ直ぐ歩くだけ。
田んぼの中を流れる用水路ではフナやタナゴを捕まえていた。
幼少時代の僕はカブトムシとクワガタ以外の虫に興味がなく、毎日のように学校から帰ると魚採りをしていた。
"お滝さん"では夏になると地蔵盆や子供会の納涼祭やラジオ体操が行われていた。
僕はラジオ体操が終わる度に"お滝さん"でサワガニとクワガタを探した。
地元を離れて12年。
最近ふと子供時代を思い出していると、
クワガタを探していた時に木に白黒のツヤツヤしたダンゴムシのような虫がくっついていたような気がした。
"お滝さん"にはコクワガタやノコギリクワガタはおらず、今思うと捕まえていたのはネブトクワガタだったように思う。
あれはタマヤスデだったのではないだろうか?
そんな思いが過ぎったのは昨晩のことだった。
そして。
5/7の朝、僕は"お滝さん"に居た。笑
懐かしさに耽りながらトンネルを潜り、
足を踏み入れた先に広がる世界は子供の頃から変わって居なかった。
"お滝さん"の本体。
"お滝さん"の中をぐるって一回りしてから、
さぁ、目指すは白黒のツヤツヤした虫!
一直線に記憶を辿り山へ。
、、、、、
、、、、、
ない。
木がない。
どれだけ探しても木がなかった。
杉と竹の中に3本だけクヌギの木があったはずなのだが、見渡す限り杉と竹しかない。
"お滝さん"から離れていた間に伐採されていたようだった。
僕は家庭の事情で
子供の頃に実家というものを失った。
その時と同じような気持ち。
帰りたくても帰る場所がない。
帰りたいのに帰れない。
とても寂しい気持ちになった。
少しの間、
傷心しながら佇んだ。
足元には元クワガタの木だったであろう朽木が転がっていた。
触るだけで壊れてしまいそうだった朽木をそーっと動かしてみた。
そこにはタマヤスデだと思われる虫は居なかったが、艶々とした真っ黒なダンゴムシが居た。
シッコクコシビロダンゴムシ(艶ありタイプ)
シッコクコシビロダンゴムシは全長9mm程の小型のダンゴムシだが、艶ありと艶なしの2タイプが見られる。
艶なしタイプは少し山に入れば容易に発見できるのだが、艶ありタイプと遭遇するのは人生で2度目だった。
更に通常艶ありタイプは艶なしタイプと比較すると小ぶりな事が多いと言われているが、
"お滝さん"の艶ありタイプは10mmを越えていてとても大きかった。
周囲を探してみても目的の虫には出会えなかったが、シッコクコシビロダンゴムシとの出会いはとても嬉しい出来事だった。
子供の頃に何度も来たはずの場所だったが、
こんなダンゴムシが棲んでいるなんて知らなかった。
寂しい気持ちにもなったが、
少し目線を変えて見てみると見つかる生き物も変わるということを再認識できた採集となった。
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