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1月読んでよかった本|終わった人

1月の半分くらい体調不良ゆえ、ひきこもりの日々でした。おかげさまで?20冊超読みまくれました。虐待毒親系のドキュメントレポから子育て系、文芸誌など幅広く手を付けましたが、そのなかでグッと感情を揺さぶられた1冊をご紹介させてください。

終わった人|内館牧子

大手銀行の出世コースから子会社に出向、転籍させられそのまま定年を迎えた田代壮介。仕事一筋だった彼は途方に暮れた。生き甲斐を求め、居場所を探して、惑い、あがき続ける男に再生の時は訪れるのか?シニア世代の今日的問題であり、現役世代にとっても将来避けられない普遍的テーマを描いた、大反響ベストセラー「定年」小説。

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出世第一主義、自意識過剰の意識だけ高い痛い系おじさんの定年後成仏物語です。表面的な学びで言うと、

  • 他人に人生を決められるのは危ういこと

  • 組織に評価される道を目指すのは脆いこと

でした。
組織の中で働きならがも
自分はどう自己実現をしたいか
といったテーマが生まれます。


ですが、わたしはその類の気付きよりも、
主人公に対する嫌悪感がやばかった。(語彙力)

オジサンに闇堕ちして欲しいくらい嫌悪感が
強かったのに、最後は絶妙なハッピーエンドで
胸糞悪さがより増しています。
(口が悪くごめんあそばせ!)


なぜここまで嫌悪感を抱いたのか…
きっかけは彼の傲慢で差別的な言動でした。

自慢のキャリアで他人を見下し、独断で進路を決めたわりに失敗するもアイロンがけは俺の仕事でないと拒否。娘ほどの年齢の女性に肩入れするも振られ、腹いせに嫌がらせ。夫婦関係も拗れだし、諸悪の根源は自分にあることを認めた割には大事な意思決定は妻に丸投げ。家族の話はまともに聞かず、たまに会った同級生には素直になるところ。
ああ、本当に「終わった人」・・・。

けど、わたしがここまで嫌悪感を抱いたのにも、
理由(無意識の価値観)があるはずです。

①他者へのリスペクトが無いところ
→他者へのリスペクトは人間関係構築の基本と思っている

②アイロンがけを拒否する
→言動の不一致は避けるべきである

③若い女性を追いかけ、思い通りにならなくて嫌がらせ
→いつまでも主人公であり続けたい幼稚な精神は卒業すべきだ

④家族の話はまともに聞かない
→身近な人を大切にすべきだ


こうした私の価値観を、
主人公の定年おじさんに無意識ながら
押し付けた結果、彼に対する嫌悪感が
募ったのでしょう。

・・・で、この嫌悪感はもしかすると
実際は彼に対するものでなく、
こうすべきなのにできていない自分に
対しての苛立ち
である可能性が高い。
自己投影というのでしょうか。


「自分はどうなのさ?」

と、感情を揺らされる小説は本当に面白い。
自分の中にある「終わった人」を
丁寧にひも解いていきたいと思います。


おしまい

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