バンクシーは本当に「資本主義」を否定してるのか?
こんにちは。たまです。
2021年、品川で行ってる「バンクシーって誰?展」に行ってきました。
バンクシー、ご存知でしょうか?
バンクシーとは、イギリス出身の匿名アーティスト。社会風刺的な作品が多く、そのうち反資本主義をテーマにした作品があります。
でも、わたしの頭では、「資本主義」自体の何が悪いのか、ちゃんと理解できなかったんですね…。
そもそも、「資本主義」といった社会システムをわかってなかったので、勉強してみました。
最後までお付き合いいただければ幸いです。
バンクシーって誰?
バンクシーとは、イギリス出身の匿名のストリート(簡単に言うと落書き)アーティストです。ステンシルという画法を使って、公共物にも構わずアートを残しています。
法律違反を犯しながらもアートを残していることから、「芸術テロリスト」とも呼ばれているようです。
また、落書きだけではなく奇抜な活動も有名。
有名美術館で勝手に作品を展示
パレスチナの分離壁の目の前に、世界一長めが悪いホテル「ザ・ウォールド・オフ・ホテル(THE WALLED OFF HOTEL)」を建設
1億5千万円で落札された瞬間にシュレッダー
バンクシー作品はシニカルなものが多い
シニカルとは、皮肉的ということ。描かれる場所の選定から、描く対象物を相反するものにするなどで、メッセージを出しています。
例えば、兵士がピースマークを描いてたり。
平和の象徴とされる鳩が防弾チョッキを着ていたり。
少女が爆弾を抱いていたり。
とても皮肉的ですよね。ちなみに、こういった現実を無視したかのような芸術運動を「シュール(シュルレアリスム)」というそうです。
バンクシーの主張
バンクシーの作品は、社会問題に対する風刺的なメッセージが込められています。
資本主義
パレスチナ・イスラエル問題
格差
児童労働
暴力やテロ
人種差別
でも、ちょっと待って。「資本主義」ってあるけど‥
資本主義の何がだめなの?
資本主義とは、個人が自由に資本(:お金や工場など、価値を生み出す仕組み)を持つことができ、資本を持つ人が労働者を雇って生産、商売をすることができる社会システムのこと。
日本ももれなく資本主義国家ですね。1910年ごろ、日露戦争後に資本主義社会が成立したと言われています。
資本主義のいいところ
自由競争による商品・サービスの質が向上する
価格の自動調整機能を持つ(需要・供給の関係)
資本所有への欲望(=成長意欲)が高まる
資本主義の悪いところ
自分さえ良ければよいという思想がはびこり、物質的には栄えても幸福度は下がる。
本来、流れるべきお金が、特定の資本家に滞ってしまい、消費=実体生産を止めてしまう。貧富の格差が拡大する。
労働力が「お金儲け」の手段 としてより安っぽいマネーゲームに割き、結果、バブル・バブル崩壊の繰り返しに浪費する。
資本主義にもいろいろある
ただ、ひとえに「資本主義」といっても、時代や観点によって、いろんなタイプに分かれるようです。ざっと調べただけでも、これだけあるんです。
自由放任資本主義:初期資本主義。小さな政府、夜警国家
修正資本主義:社会的公正を重視し、修正・改良した資本主義。福祉資本主義、混合経済、大きな政府。
独占資本主義:レーニン主義による用語。帝国主義。
国家資本主義:国家が介入または推進する資本主義。日本型社会主義
超資本主義:ベニート・ムッソリーニによる概念。
無政府資本主義:アナキズム、および右派リバタリアニズムが提唱する資本主義。政府や国家の廃止を提唱
グローバル資本主義
情報資本主義
福祉資本主義
岸田首相が述べた「新しい資本主義」???←2021.10 NEW!
社会システムの歴史
初期の資本主義は、政府の介入はほとんどなく、すべてを市場にまかせていました。その結果、
恐慌
失業
貧富の差の拡大
労働問題
といった弊害が次々に生じました。
これらの弊害に対する解決策として、「社会主義」と「修正資本主義」が誕生します。
資本主義を否定した社会主義の誕生
社会主義とは、資本(お金・工場など)を国が管理して、国が計画的に生産する経済システムのことです。ドイツの経済学者マルクスによる定言で誕生しました。
物資は、すべての国民に均等に配給されます。資本主義の弊害に疲弊した多くの人にとっては、あたらしい「社会主義」は希望の光ですね。
社会主義のいいところ
格差がなく、金銭的に平等
平等な物資の配給があるので、最低限の生活が保障
計画生産のため無駄がない
ちゃんと、「自由放任資本主義」が起こらない仕組みになっていますね。
社会主義の悪いところ
一方で、もちろん社会主義にもデメリットがありました。
頑張っても頑張らなくても同じ。みんなサボって働かない。
ひとそれぞれ違う要望を満たせない。不便なことばかり。
シンプルがゆえに商品・サービスの質が落ちたんですね。このような問題があると、国政を維持することが難しくなります。
そこで、多くの社会主義国は、強制的な政治に変化します。国民に強制労働を強いて、不満を述べる国民を弾圧しました。
このような状況から、社会主義は失敗だったとばかり思われています。社会主義の国々は、長くは続かなかったことは事実です。でも、資本主義の国よりも、平等で豊かな社会を実現していました。
資本主義の悪いところを改善した「修正資本主義」の誕生
一方、イギリスのケインズが提案した新しい主義があります。(自由放任)資本主義にあるデメリットを修正すれば、まだまだ使える!というものです。
これは、政府が積極的に経済活動に介入することで、恐慌は克服できるという理論でした。「需要を補えば恐慌は発生しない」として、政府が主体的に公共事業を行なうことを提唱したのです。
スミスが掲げた「小さな政府」を否定し、「大きな政府」の必要性を説きました。
この思想は、アメリカ・イギリス・日本などに普及し、今に至ります。
でも、経済学者のマルクスは否定的に捉えています。国家が介入したところで、格差などはなくせないのだ、と説いています。
バンクシーは「資本主義」そのものを批判しているわけではない?
ここまでの学びを踏まえ、バンクシーは「資本主義」そのものを批判しているのか?疑問に思えてきました。理由は3つ。
バンクシーが社会主義者だとは言い切れない
資本主義も、修正資本主義も否定しているからといって、じゃあバンクシーは社会主義者なのか?というと、そうとは言い切れないからです。
アート作品からみえるもの
彼の作風からも、「資本主義」そのものというよりは、それに伴う消費社会に対して批判しているように思えます。
例えば、この「Sale Ends」という作品。
聖書に出てきそうな女性たちがひれ伏しているのは、「セール最終日!」の看板。バンクシーは、神聖に近い地位までに成長した消費社会を嘲笑しているようにも思えます。
けど、消費ってそんなに悪いこと?と思いませんか?
ダイヤモンドオンラインで、良記事がありました。
https://diamond.jp/articles/-/2956?page=4
バンクシーがどこまで訴えているかは想像するしかありません。でも、わたしは、余るほど生産してしまう消費社会に対して異議を唱えている、と解釈しました。
バンクシー自身、資本主義のなかで利益を得ている
「バンクシーは資本主義そのものを批判してないと思う理由」に話を戻します。
3つめは、バンクシー自身の活動です。バンクシーの作品も資本主義の中で生産し、価格が設定され、その利益を享受しているじゃないか?というそもそも論の疑問もあります…。
これら3つの理由から、わたしは「バンクシーは資本主義そのものを批判してないと思う」と考えました。
わたしは資本主義社会がいい
先日、ちきりん著「世界を歩いて考えよう」を読みました。
このなかで、「共産主義国への旅」が言及されております。その貧しさたるやとても耐えられない…と感じました。(共産主義とは、社会主義の進化系と捉えてます
▽旧ソ連の状況
洋服も椅子も、1種類ずつしかない
需要>>>供給のため店内は激混み
タクシー運転手が気に入った行先にしか行けない(乗せてもらえない)=労働者は神様
とてもじゃないけど・・・こんな社会で生きていきたいとは思えませんでした。すべての社会主義国がこうであるわけではありませんが、少なくとも、今の日本の豊かさを失うことは確か。
資本主義そのものを否定するのではなく、資本主義によるベネフィットを享受しつつも、その弊害をいかにカバーしていくか?に目を向けるべきではないでしょうか。
きっと、バンクシーも同じ文脈でいるのかもしれません。
この記事が、明日の社会のありかたを考えるきっかけになれば幸いです。
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