Zoomを使いこなしている企業は会議のあり方を考え直した方が良いという話
『ふふーん♪ リモートワークになって、Zoom使いこなして仕事してるもんね。イマドキでしょ?
えっ、なになに。Zoomはディスカッションする思想のもと作られたサービスじゃない?たくさんの機能を使いこなせばこなすほど、生産的な仕事からは離れていく?
ちょっと、どういうことよ!詳しく説明しなさいよ!』
はい、というわけで、催促されたのできっちり説明させていただきますね。
一気に普及したリモートワーク
コロナが世界中で流行、日本も勿論例外ではありませんでした。
感染拡大防止の観点から「三密」を避ける動きが広がり、特にオフィスワーク系の業種・職種で、一気にリモートワークが普及しました。
それに伴い、リモートワークを実現する手段の一つとして、ZoomやMS teams、Google meetなどの「オンライン会議システム」が使われるようになりましたね。
リモートワークを実現するために必要な要素はオンライン会議システムだけじゃないんですが、これは仕事論、組織論、life-work-balance、キャリア形成、人の幸せとは…、云々かんぬん、語りだすと長くなるので割愛します。
まあそんなわけで、これまでリモートワークなんて夢のまた夢だった会社でも、「オンライン会議システムって結構便利じゃん!」「これがあれば、意外に仕事ってできるもんなのね」という意識が浸透し、実際に上手く仕事を回せている企業も増えているようです。
各種オンライン会議サービスには思想がある
とはいえ、オンライン会議システムって、会社で誰かが決めたサービスを使っているだけのことも多いんですよね。あるいは、流行っているものをとりあえず使ってみるくらいでしょうか。
Zoomを始めとして、サービスを企画・開発をする人たちは、
・このサービスではどんな価値を提供しようか
・ターゲットユーザーはどういう人にしたら良いだろうか
・どこで差別化しようか
・価値実現にはどのような機能が必要だろうか
などなど、たくさんのことを考えてサービスの提供に至っています。(ここも話すことはたくさんあるのですが、長いので割愛)
何が言いたいかというと、サービスごとに思想があり、全ての機能に目的がある、ということです。
各サービスの主な特徴
今回は、特に多くの企業で導入していそうな
①Zoom
②Microsoft teams
③Google Meet(旧 Google Hangouts)
の3つを比較していきたいと思います。
定量ではなく、定性情報からの仮説です。(以下、賛否両論あるとは思いますが、個人的な意見として書いていきます。)
思想の話に入る前に、私が考える各サービスの主な特徴を挙げておきます。
あんまりきれいな整理じゃないかな…でも直感的にはこれがわかりやすいと思います。
①Zoom
・1対N [Nは数十~数百人程度の大人数]
・情報の配信・発信
・中央集権
・研修・講義・講演向き
②Microsoft teams
・N対N [Nは数人~十人程度]
・音声グループ通話・グループチャット(画面共有付き)
・日常業務の中でちょっと相談したいとき向き
③Google Meet
・N対N [Nは数人程度]
・動画・画面イメージでの情報を共有しながらの双方向ディスカッション
・少人数のチームディスカッション向き
①Zoomの思想
言わずとしれた「Zoom」。アメリカのZoom Video Communicationsという会社が提供しているサービスです。
Zoomの機能を見てみると
・デフォルトはカメラオフ・マイクミュート状態で参加
・主催者の利用可能機能 >>> 参加者の利用可能機能
(参加者のビデオ・マイクオフ、スポットライトビデオなど)
・ブレイクアウトルームの作成
などなどがあります。
Zoomで特徴的だな、と思うのが「参加者は、デフォルトでカメラオフ・マイクミュート」という部分です。主催者→参加者のベクトルがメインで、参加者→主催者のベクトルは、許可されたときに初めて生じる、ということですね。
この他、ブレイクアウトルームは、人数が一定数参加している前提で、それを分割する、という考え方ですよね。
こういった特徴から、Zoomは大人数、研修・講義・講演などの一方向コミュニケーションをターゲットとして、中央集権的な思想で作られていそう、ということが読み取れます。(もちろん、研修・講義・講演は完全な一方向コミュニケーションではありませんが、双方向と言っても局所的双方向、という状態だと思います。)
さて、冒頭のタイトルに戻りますが、MTGでZoomの機能を使いこなしている、ということは、1対N、超大人数、一方向、中央集権、のMTGをしている可能性が高いのではないか、と考えられます。
よく大企業で見られる光景ですが、関係者を端から会議に呼んで(レポートラインが複雑で1人では意思決定出来ない、意思決定はできるが責任を持ちたくないなどの理由で)、大半のメンバーは一言も声を発せずに終わる、というというものを見かけますよね。
情報共有のためだけに、大人数が集まる、ということも度々見かけます。情報発信者が参加者を募り、発信者→参加者のベクトルで情報を共有。一部質疑応答。
あれ…?これって、もしかしてZoomの思想にぴったり?笑
でも…。そのようなMTGって、何か決まるんでしたっけ?仕事は前に進みそうですか?
折角リモートワークが普及してきたのに、本質的な仕事の進め方が変わらないのはもったいないですね。
何も決まらない系会議は捨てましょう。物事を前に進めたいときは、Zoomの最小限の機能だけを使ってみると良いかもしれません。
※補足ですが、ZoomのQuality観点での売りは、通話品質です(のはずです)。Zoomの圧縮技術のおかげで、回線が細くてもかなりの通話品質が保たれます。通話品質は他のサービスと比べて圧倒的じゃないかなあ。数年前にリモート会議サービスがいくつか出てきた際に色々と試しましたが、他のサービスに比べて圧倒的に通話品質が良かった記憶があり、個人的感覚では、今でも回線が不安定なときでも最も快適につながるのはZoomです。
②Microsoft teamsの思想
Zoomのことを書いていたら力尽きてしまったな…。笑
頑張って続けます。
Microsoft teamsは、Microsoftが提供するサービスです。
日本では、MS日本法人の営業力の強さなのか、メーラーやMicrosoft 365(旧 Office 365)などを既に導入している企業も多く、その流れでteamsを使うことになった企業も多いようです。
Skypeをご存知の方はどのくらいいらしゃるでしょうか?
Skypeは、その昔「電話の代替」として登場しました。電話回線を使わず、ネット回線があれば世界中どこでも音声通話ができる、というものです。
音声通話=電話のみ、と思っていた人たちは、海外と繋いでいるのに通話料金が跳ね上がらない?!何ごと?!と思ったことでしょう。
今はLINEなどが普及しているため、Skypeの有り難みを感じることもなくなりましたが、当時は画期的なことでした。
さて、話を戻します。そんな経緯もあってか、teamsは「電話の代替」という当時のコンセプトを、今もどこかに残していると思われます。電話をサクッとかけるノリで、ちょっとコミュニケーションを取る、ちょっとチャットをする、というところに、基本的な設計思想がありそうです。
各サービスの主な特徴で書いた、「音声グループ通話・グループチャット(画面共有付き)」というのは、こういった話から来ています。あくまで画面共有は一要素でしかなく、メインは数人の通話やチャット、ということですね。
また、"teams"という名前からわかるように、「チームコミュニケーション」を志向しているものと思われます。チームコミュニケーションって、ディスカッションや意思決定だけではなく、ちょっとした会話も含まれますよね。
※補足と蛇足。teamsは一時期、通話品質が悪すぎて音声通話機能があまり使われない時期があったようです(画面共有のみteamsで、音声通話は電話を利用している会社がいたとのこと)。このサービスのコアの1つを「音声グループ通話」と捉えている私から見ると、サービスの核の部分が使われないって結構悲しい出来事だなあ、と物思いにふけっていました。あったらうれしいなレベルの機能は削ってでも、サービスのコアは絶対に落としちゃいけない、という話。これだけで記事1本書けそう。
③Google Meetの思想
さて、ラストはGoogle Meet(旧 Google Hangouts)です。
サービス名の通り、Googleが提供しているサービスです。
元々、hangoutという名称だったものが、最近Meetに統一されました。
hangoutは「たまり場」という意味で、正直こっちの名称の方がサービスの思想に合っているので好きだったのですが…。Meetってどういう意図でつけられたんでしょうね。教えてGoogleのひと。
Meetは、Zoomと違って、「デフォルトでカメラ・マイクオン」なので、参加型のコミュニケーションを志向しています。
最近は変わってしまいましたが、hangoutとmeetが共存していた少し前までは、ビデオのタイル表示は「最大4人まで」でした。これって、結構重要な思想が現れていると思うんですよね。ちなみに、Zoomは9人とか、12人とか、もっとたくさん表示出来ます。
誤解のないように言っておくと、現在は4人よりも多い人数が、タイル表示されるようになり、オンライン飲み会でも使いやすくなっています(最大何人まで行けるんだろう?少なくとも9人はできた)。
タイル表示の話で、「最大4人まで」って何を意味するのかな、と考えたときに、Googleの仕事の仕方がここにフィットしているのでは、という結論に至りました。
例えば、企画・エンジニア・デザイナーの3人でサービスの開発を進める、エンジニア3~4人で担当箇所の開発を相談しながら進める、などです。プロジェクトとしては超巨大プロジェクトでも、実働は3~4人を1つの小さなチームとして動いているために、hangout(meet)が必要十分なんじゃないかと思います。
そもそも、Googleの社内ツールなので、彼らが欲しいものを作っているはず。
日本では少ないですが、ビジネスサイドとエンジニアサイドが2人1組となって、仕事を進めるなど、異なる役割の人で、同じモジュールやサービスを担当している人が、「たまり場」に来て、あれこれと話をして、仕事を進める、という仕事の仕方をしている企業・人には、meetはフィットしそうです。
※補足。HangoutとMeet、通話品質ではMeet > Hangoutだと感じでいます。Meetは真面目に圧縮かけているのだろうか。Google勤務の人たちって、ネットワーク環境整っているだろうから、サービスとしてはそういうことへの対応は落とし穴になっているのかも、というか、環境が整っていない人はターゲットにしていなかったのかも。これまでそうだったとしても、昨今の状況では、ネットワーク環境がイマイチな人も使えないと話にならない、ということで、Meetの通話品質上げにかかったのかなあ、と勝手に想像しています。
編集後記
この記事を書く気になったきっかけは、「え、Meetで十分足りるじゃん。zoomにわざわざお金落としてまで、セキュリティ緩いサービス使うのなんで??機能変わらなくない?しかもMeetの方が安くない?」と思ったことでした。マーケティングの上手/下手(というよりは、マーケティングする気のある/なし?笑)が一番の違いで、モノとしては別に違わないだろうな、と思っていたものの、考えていったら結構違いがありそうだったので、面白くなって、記事としてまとめることにしました。(長々書きすぎました…笑)
身の回りのサービスの思想も、歴史も、紐解いていくのは楽しいなあ、と改めて思ったのでした。
この記事をきっかけに、仕事の仕方を見直したり、自分たちに合う仕事の進め方・ツールは何かを考えたりしてもらえると嬉しいです。