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小さなお気に入りの【火鉢】で、屋久島からきた月桃茶を

屋久島の友人から送られてきた月桃(げっとう)の実。動植物にかなり詳しい人生を送ってきた僕でも、屋久島に旅するまでは知らなかった。南国の植物はいいよね、植物というものの深みをしみじみと感じさせてくれる。

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月桃はショウガ科ハナミョウガ属の常緑性多年草で、日本では南九州以南に自生する。屋久島では民家の庭先にあるほど身近な植物で、僕は取材で滞在していたロッジの入り口で見た。2mほどにもなる葉っぱはいかにも南国的で、花が綺麗だしその匂いもいい。

そして実はお茶にもなるのだが、ムーミンに出てくる「リトルミー」の頭みたいなそれがお茶になるとは知らなず、ほんのり甘く香るその実をしばらく棚に飾っていたのだ。きれいなミニ竹かごなんかに入れてくるもんだから単なるアロマグッズかと勘違いしてたんだよ。

薬草茶は金属のヤカンは△で、土瓶(どびん)で煮出すにかぎる。それもガスや電気じゃなく、炭火でコトコトがいいね。うちには小さな火鉢があるので、ようやく寒くなってきたこともあり、今シーズンの火鉢を始動したばかりだった。

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この火鉢は群馬の山里で暮らしていたとき、定期的にひらかれる地元の神社の骨董市で見つけたものだ。一辺が30㎝の直方体で、けやきの木でできているためにそれほど重くないので、持ち上げて好きな場所に移動することもできる。

家の中に小さな火があるのはプチ・キャンプ気分が味わえて愉しい。実際、お茶をわかすだけでなく、小さな焼き網で干物なんかを焼いて食を楽しんだりもできる。もちろん暖としての炭火はやわらかく、しかも香ばしい。そう、炭にはその原材料の木固有の香りがあるんだよ。

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さて、この炭の着火の方法なんだけど、バーベキューをやるときのように着火剤なんて大げさなものはいらない。だいいち室内でそんなことしたら煙が出てたいへんだろ! 僕のやり方はこうだ。

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100円ショップで買った真鍮(しんちゅう)の針金で自作した小さな焼き網。その上に炭のかけらを4〜5個のせて、ガスレンジの上にのせて火をつける。2〜30秒もすれば炭が赤くおこるので、それをそっと持ち上げて落とさないように火鉢に移す。

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このとき火鉢には、あらかじめいくつかの炭を小山に組んでセットしておいて、その上にこの赤くおきた炭をのせ、口をすぼめて上から息を吹きかける。吹くたびに炭が明るく発光し、顔に熱が上がってくるだろう。

火というものは、下から上に立ち昇るもので、着火剤はふつう薪の下のほうに置く。しかし、火鉢の炭の着火はこの逆で上からのほうが早い。最初の炭の赤い火が下の炭に確実に移ったら、もう放置してもひとりでに火は奥にすすんで大きくなっていく。不思議である。

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屋久島に最初に訪れたのは今から10年以上も前のことだが、まだ群馬の山に暮らしていた僕らは酔狂にもオープンカーのコペンで群馬から往復した。それは世界遺産の白川郷や、鹿児島と山口の野生のツルを見にいく旅でもあった。

旅からちょうど10年後、ひょんなことから【大地の再生】というテーマの講座を取材することになり、再び屋久島に向かったのだ。そしてそれから6回も足を運ぶことになるのだが・・・。

今シーズンの薪火ライフの始まり。僕はこのようにして、毎朝の茶をたしなんでいる。月桃の香りで屋久島の海と山を思い出しながら。

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