
今週の日記#96
好きなYoutuberがプロデュースしているアパレルブランドのポップアップショップが割と近くでやっていたので、行こうかな……でもこんな芋くさい服装で行ける場所じゃないし……と悩んでいた。そしたら、偶然それが開催されている商業施設まで行く機会があり、何も考えずに歩いていたら目の前にそのポップアップショップが現れるという状況になった。
どうする、入るか。ワ、めちゃくちゃかわいい~~~~!!!!入るか????でも私、いまめちゃくちゃ仕事帰りの恰好しとるが大丈夫か???
ここで入らにゃ後悔する。いざ入店。(といってもエスカレーター横のスペースでやっているようなふらっと入れるスペースだった)
とんでもなくかわいい~~!!と思うと同時に、店内にいくつか設置された姿見に映る自分の「THE・冴えない仕事帰りの人間」という恰好に落ち込む。
「イラッシャイマセぇ~」と死角から声がする。3人ほどの客の数に対し、圧倒的に店員の数が多すぎる気がする(実際はオシャレすぎて店員に見えてしまっただけの客もいたかもしれない)。
ハイセンスな衣装の客が、ファッショナブルな衣装の店員と話をしている。カラフルな髪色の店員と目が合った。もし話しかけられたら。「Youtuberの〇〇ちゃんのファンでぇ~……」と返す用意はできているが、その先お洋服の話になりでもしたら、もうついていけない。このパンツのディティールが、テクスチャが、透け感が、はあ、って、この私の服装みたら話が伝わらないことくらい分かるわよね、きっと。
そそくさと店外へ歩く。事前にネットで見かけて気になっていたトートバッグが店の入り口に置いてあった。値段だけでも確認しようと、タグをちらりと見る。 冗談抜きに、厚紙のタグが30枚くらいついていた。なにかの芸術作品的なものだろうか。怖くなってそそくさと店を出た。
帰宅後、ネットでトートバッグの値段をこっそり調べた。その日1日分の私のお給料と同じくらいだった。
◇◇◇
家族が、私の好きな2.5次元作品にハマった。私が実家のでかいテレビで推しを観たいからとわざわざ実家に帰って配信をテレビに映して観ていたら、横でチラ見していた家族がまんまとハマってしまった。いわゆる「布教」をしたつもりはない。とりあえず私が契約している定額見放題サービスで配信中の回をいくつか一緒に観て、DVDも貸すことにした。
私は孤独なオタクだから、人と「語る」ということをしたことがない。仲間が増えたのは嬉しいことだが、正直戸惑っている。
「見るからに戸惑いが隠せてないね」と言われた。
◇◇◇
しかし、久々に実家に帰ってみると、月極駐車場が新築戸建住居になっていたり、飲食店が潰れてドラッグストアになっていたり、新しい病院ができていたりして、新鮮と同時に、知っている街が徐々に消えていくようで、怖かった。もう私が知っている我が街はGoogleストリートビューの上にしか存在しない。
◇◇◇
新しくできる病院から開院のお知らせチラシが届いていた。胃カメラに力を入れているらしく、最新型らしい胃カメラマシンの写真が載っていた。
そういえば、数年前に『医療関係の展示会で新しく開発された胃カメラの紹介ブースで行う操作体験会の補助スタッフ』というニッチなバイトをしたことがある。客が人体模型の鼻の穴(入れやすいよう穴が拡張されている)にカメラを突っ込み操作するのだが、その鼻の穴に突っ込むときに横で支えながら「ゆっくり、この角度で入れてくださいね」と指示する役だった。8割は医療に関心のある一般人(医療に関心のある一般人ってなに?)だったのだが、たまに本職の方が来て、私の指示を無視してスルスルと操作していくので戸惑った。自分は医者だと明かさない状態で勝手に進めるから「わ〜!ゆ、ゆっくり入れてあげてくださいね〜!」と注意するのだけど、大体の医者はバイトの私の言葉を無視した。あれ以来、愛想のない医者がちょっと苦手だ。私の鼻の穴にもあの素早さで胃カメラを突っ込まれるような気がして。
◇◇◇
在宅勤務の仕事を探しているのだが、在宅勤務という椅子を勝ち取るのは大変難しい。なぜなら、「フルリモート」というだけで、椅子を奪い合うライバルの数が、会社から通勤範囲内の人間だけではなく、全国、いや国外にまで、大幅に増えてしまうのだ。indeedの「30人以上がこの求人を保存しました」の文字を見るだけで、ため息が出る。