そういえば そういえば、俺の玉は妙な形をしている。気がする。 いつからかはよく覚えてない。高校生の時には既にこの形だった。どんな形かといえば、なんだかぼこぼこしてる。そんでもってちょっと、重たそうにだらりと垂れ下がっている。 なんというか、袋のなかにさらにいくつもの小さな玉が沢山あるみたいだ。 それも左側の玉だけ。ちょっと嫌だなとか、気持ち悪いな、なんて思う。でも痛みもないし、日常生活に支障はない。まぁ、こういうものなんだろう。そう思うしかない。 楽観してみれば、
私の夫は文字が苦手らしい。 苦手というか、興味がないらしい。 歴史上の人物、有名な本の名前、ことわざとか、ちょっと昔からある様式についてのことばとか。 英単語もちょっとあやしい。中学から英語はあまりやってこなかったという。 「この本おもしろかったよ、読んでみる?」といっても読まない。 じゃあ見て読むのが好きでないなら、私が短編でも読み聞かせてみようかといって声を出して読んでいると、三分と経たないうちに寝ているかスマホをいじって聞いていない。 読めないわけではないのに。と
恐らく作家という生き物は、その作家自身の身辺や、関係性、近所の噂話、ひいては世間情勢について記録し後世に残して伝えていきたいと思うものである。 それもまさに自分こそが正当なこの世界の伝承者、語りべであると。 たとえ歴史の教科書には自分の名前ではない「琵琶法師」といったような刻まれ方をしたとしても、後世に自分の語りが脈々と、細々としてもいい、とにかく伝えてこれからを生きる人の武器になればそれで満足だ。 それが果たせて初めて、自分が生まれ背負ってきた使命を果たせたと思うのであろう
ときどき、自分の存在に耐えるのが辛いときがある。 生き続ける努力をやめたくなる。 今自分の身に絡まる細い糸を全部断ち切りたいと思う。 インターホンの音。電車の音。車の音。家の外を歩く人々の声。階下や上階の生活音。テレビの音。スマホの通知。差し込む光。 優しく照る月の光も恐ろしくなる。 ジュースを飲んでもそのつくられた甘さに人の思考を感じる。 テーブルやラグ、マグカップにも。 それらは自分の思考や生活に合う気がして手にいれたものなのに、ときどきとっても攻撃的で私の手に負えな
アボカドは難しい 彼女ほど中身のわからないやつはいない 彼女?彼?中性名詞かな 奴らはスーパーにズラリと並んでいる。 一斉にこちらを向き、「私こそが美しいわよ」とか「俺の柔らかさはこのスーパーイチだ」とか「剥きやすいわよ」とか訴えかけてくる。 私は何度かネットでアボカドの選び方をまとめているサイトをみたが、いまいち頭に入らない。 色だとか、ヘタ?が何色だとか、表面のブツブツ具合だとか。 何を基準にして選べばよいのかさっぱりだ。 一応ひととおり、並んでいる彼らを眺めて色
去年、20代後半にさしかかった私は帯状疱疹になった。 季節は5月の終わりから6月にかけて。 去年は5月後半に真夏のように暑い日があり、その暑いなか私は自転車をこいで汗だくになったりしたこともあり、最初は汗疹かと思っていた。 しかし、妙な違和感、つまり痛み、痒み、不快感があり、もうこれは汗疹ではない!と思い病院へ行った次第だ。 そもそも帯状疱疹とはもともと体に潜んでいたウイルスが、加齢やストレスによる免疫低下によって引き起こすもの。 水ぼうそうにかかったことがある人なら誰でも
お昼ごはんを食べ食休みが済むといつも眠くなる。 お腹がすくと不機嫌になる。 人にはよく、お前は赤ん坊か、と言われる。 だから、わたしは赤ん坊だっ!た、と答える。 間違いではない。 ちなみに低気圧がくると調子がわるくなったり、満月近くになると眠くてたまらなくなったり、女の子の症状についても同様に調子が悪くなったり眠くなったりする。 わたしは身体にとことん素直なのだ。 さて。 今日は昼食後、眠気をこらえて起きて作業をしていた。 でも、おわかりであろうがほとんど仕事はすす
八月十三日、晴れ。 今日、弟が二十歳になった。 ついこの間まで、悪ガキを引き連れて市内を自転車で走り回っていた、無鉄砲でおちゃらけていたあの弟が。よく作戦会議とかいって悪ガキ集めて家に遊びに来ていたっけ。本当に悪ガキのなかの悪ガキだと私は思っていた。 一度、弟たちが「庭に防空壕をつくる」と言って、うちの狭い庭に大人一人が優に入れるくらいの深い穴を掘った。弟たちが「明日は横に広げるぞ」と喜んでいたその後、帰宅した父が庭を見て激怒した。 弟やその友達はもちろん、その時
夕方。 強い雨がざーっと降った。在宅ワークでパソコンの前に張り付いていた私は椅子から立ち上がり、窓辺に立った。 「雨粒が大きい」と思わず一人呟いた。 あまりにも粒が大きいので確かめてみたくなった。窓を開け外に手を差し出す。 案の定、手がびしょびしょになった。 私は夫にメッセージを送った。 「雨すごいね」 再び机の前に戻り、行き詰まっていた仕事に手をつける。 「うーん」と唸って左手に額を乗せた。 やはり進まない。 それでもなんとか、ここまでは終わらせたい、という気持ちがあり、
二日前、プワン・・・と嫌な臭いが部屋の一部に漂った。 家の中を移動していると、どうも臭う箇所がある。鼻をスンスンさせ、うろうろ、ゆっくり歩く。「どこだ、においのもとはどこだ」 二日前は雨がしとしと降り続いていた。雨が降ると、いつもよりにおいがしやすいって夫が言っていたけど、どうやら本当らしい、と信じ始めていた。 「ねえ、これ何のにおい?なんかにおってる」と夫に聞くと、夫は 「え?わかんない。なに?」と鼻をスンスンさせて聞き返してくる。 はっきりと異質なにおいが、部屋の一部で
昨晩、事件がおこりました。 私にとってはそれなりの事件。事件と言うか、精神的な打撃というのかな。 ヤツは突然現れました。ただ、確かな存在の証拠を残していたので、ある程度予測はしていました。でもやっぱり現れると、ドキッとしますね。 昨晩、夕飯の支度でレタスをちぎって水に浸していたところ・・・ 芋虫が出ました。最初の1、2枚ちぎったあたりでもう大きなフンちゃんがでてきました。いくつもありました。 ああ、いる、絶対いる!どこかにいる!やつがいる! と震える手でなんとかレ
私がお風呂に入っていると、頃合いを見計らって夫がお風呂に入ってきます。 お風呂の時間はわたしの大事な一人きりのプライベートな時間。 正直、来ないでほしい。 限られた空間と反響する音、こもる湯気と暖まる体、体の汚れやその日たまったモヤモヤも流して、開放的で、心地よくなっているときに、腹立たしいかな、夫が入り込んでくるのです。 「頃合いを見計らって」と書きましたが、それはつまり、わたしの機嫌が悪くならないよう、ある程度スッキリした頃を狙ってくるのです。むかつきますね。 不思
私の学校には「真実のお姉さん」という人がいるという噂がある。その人は校舎三階の空き教室にいて、私たちがお父さんやお母さん、兄弟、先生達に聞けないことを答えてくれるという。しかも、親たちみたいにはぐらかしたりしないで、正直にありのままに答えてくれるらしい。 昨日、親友のマミが昼休みに「真実のお姉さん」の教室に行くと言った。私が「何を聞くの?」と尋ねたら「秘密。」と言われてしまった。私たちは親友だって話していたのに、なんで教えてくれないの?とマミを責めたい気持ちに駆られたが
感じやすい人 世の中には、「これ。わたしのことだ」と思う人が沢山いるだろう。 わかりやすく言えば、目に見えないものが見えたり、感じたりできるひと。いわゆる霊感。 もしくは「明日晴れるな」とか「雨降るぞ」と気づく人。気圧とか、地球の動きを感じやすいのかもしれない。 あとは「この人なんか悲しんでいるな」とか、人の気持ちに敏感な人。共感する力が発達しているのかな。 ほかには「このタレント売れそう」とか「この本面白いはず」と一見してすぐ可能性に反応できる人。 それぞれが、あらゆる
「今週は雨が降るな。」 私は偏頭痛持ちで、雨の日や気圧が激しく変化するその日、またその数日前から、高確率で頭痛に襲われる。(一部怠惰によるダラケや生理痛を含むが。) 年に3回くらい、自分では「爆弾」と呼ぶ偏頭痛が天候の事情により投下される。 その時の状況を詳しく説明すると、まず頭痛の1日、2日前くらいからチカチカと銀色の粉のようなものが視界に舞う。舞っている時間はほんの1分だったり、長くても10分くらいだと思う。それが1日のうちに何度が起こる。 そしていよいよぐわんぐわんと