Take Five
翼が傾くと
空の底に柔らかな満月
夜の水の荒野のはてに
とろりと広がる陸がある
フジツボのように薄く光る
寂しいビルディングが
ふつふつと増えていき
わびしい町があらわれては消え
曖昧な道路が暗闇のなかを
かすかに光りながら
はかなげにつながっていき
か細く互いをさぐりあう
震える神経細胞のように
やがてすこしずつ明かりが増えて
百億の
絶えず点滅し続ける光たちに
べっとりと覆われた
都市へと続く
光の粒のひとつひとつが
意志と欲望を育み
なぐさめを求め
完結した物語を紡ぐ
一千万の暮らしと
絶望とよろこびと嘘とこだわりと
冷たい後悔と救いがたい希望と
あこがれと憎しみと蔑みと無償の愛とが
瞬きながらひしめき合う
隙間のない都会へ
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