2025年度大学入試の数学について01
1.学習指導要領(平成30年告示)の数学
はじめに
2022年度から始まった新課程における数学は、旧課程と異なる部分が多い。
気をつけたい部分は『数学A』「数学と人間の活動」の内容である。今までは「整数の性質」として扱われていたが、名称・内容が変更となった。旧課程と同じと考えていると、平面や空間において点の位置を表す座標の考え方を学習せずに終えてしまうことになるので注意したい。
以下は、新課程の数学で扱う内容について掲載している。
数学Ⅰ
①数と式 ②図形と計量(三角比) ③二次関数 ④データの分析
数学A
①図形の性質 ②場合の数と確率 ③数学と人間の活動 ①図形の性質 ②場合の数と確率 ③数学と人間の活動 ※
※「数学と人間の活動」では,整数の約数や倍数,ユークリッドの互除法や二進法,平面や空間において点の位置を表す座標の考え方なども取り扱い,人間が数や空間などをどのように捉えてきたかを歴史的な視点なども交えて考察させることとした。
数学Ⅱ
①いろいろな式 ②図形と方程式 ③指数関数・対数関数
④三角関数 ⑤微分・積分の考え
数学B
①数列 ②統計的な推測 ③数学と社会生活※
※「数学と社会生活」では,散布図に表したデータを一次関数などとみなして処理することも取り扱うこととした。
数学C
①ベクトル ②平面上の曲線と複素数平面 ③数学的な表現の工夫※
※「数学的な表現の工夫」では,工夫された統計グラフや離散グラフ,行列などを取り扱う。
数学Ⅲ
①極限 ②微分法 ③積分法
2.2025年度からの共通テスト数学
試験科目・時間
グループ①『数学Ⅰ、数学A』、『数学Ⅰ』試験時間70分
グループ②『数学Ⅱ、数学B、数学C』試験時間70分
変更点
出題範囲が「数学Ⅱ」、「数学B」及び「数学C」となり、選択解答する項目数が2から3へ増加するため、70 分とする。
『数学Ⅱ、数学B、数学C』の出題範囲のうち、「数学B」及び「数学C」は、「数学B」の2項目の内容(数列、統計的な推測)及び「数学C」の2項目の内容(ベクトル、平面上の曲線と複素数平面)のうち3項目の内容の問題を選択解答。
今後の動き[2022/09/11現在]
科目構成が大きく変わる数学は,各出題科目の全体の構成がわかる試作問題(配点付き)を作成するため、事前に目を通しておく必要がある。
大学入試センターが発表しているのが次の流れである。
詳細は以下より
3.各大学の個別学力検査の数学について
東京大学[2022/07/15発表分]
《数学Ⅰ・Ⅱ・A・B・C》
数学Ⅰ・Ⅱ → 全範囲から出題
数学A → 全範囲から出題
数学B → 「数列」,「統計的な推測」から出題
数学C → 「ベクトル」から出題
《数学Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・A・B・C》
数学Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ → 全範囲から出題
数学A → 全範囲から出題
数学B → 「数列」,「統計的な推測」から出題
数学C → 「ベクトル」,「平面上の曲線と複素数平面」から出題
東京大学の出題範囲は
2024年度までの出題範囲から
『数学B』「統計的な推測」が新しく出題範囲に追加
となったため、
東京大学を志望する高校生は、
数学の学習範囲が広くなったと言えます。
また、『数学A』は文科省では2単位の履修を想定していますが、東京大学では全範囲を指定していますので、実質3単位分の学習が必要となります。こちらに関しては、2024年度までと大きな変更がないですが、後述の大学では、①図形の性質,②場合の数と確率、のみを指定している大学もあるので、注意が必要となります。
大阪大学[2022/05/20発表分]
《数学Ⅰ・Ⅱ・A・B・C》
数学Ⅰ・Ⅱ → 全範囲から出題
数学A → 「図形の性質」,「場合の数と確率」から出題
数学B → 「数列」から出題
数学C → 「ベクトル」から出題
《数学Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・A・B・C》
数学Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ → 全範囲から出題
数学A → 「図形の性質」,「場合の数と確率」から出題
数学B → 「数列」から出題
数学C → 「ベクトル」,「平面上の曲線と複素数平面」から出題
東京大学の出題範囲と異なり、
『数学A』「数学と人間の活動」が除外
『数学B』「統計的な推測」が除外
されています。整数の約数や倍数,ユークリッドの互除法や二進法,が出題されない可能性があります。平面や空間において点の位置を表す座標の考え方は『数学C』の「ベクトル」で学習します。
大阪大学の出題範囲は
2024年度までの出題範囲から
『数学A』「整数の性質」が除外
※厳密に言えば,整数の約数や倍数,ユークリッドの互除法や二進法が除外
された形で出題される可能性が高いと言えます。
筑波大学[2022/05/20発表分]
《数学Ⅰ・Ⅱ・A・B・C》
数学Ⅰ・Ⅱ → 全範囲から出題
数学A → 全範囲から出題
数学B → 「数列」から出題
数学C → 「ベクトル」から出題
《数学Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・A・B・C》
数学Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ → 全範囲から出題
数学A → 全範囲から出題
数学B → 「数列」から出題
数学C → 「ベクトル」,「平面上の曲線と複素数平面」から出題
筑波大学の出題範囲は東京大学・大阪大学とも異なります。
筑波大学の出題範囲は
2024年度までの出題範囲とほぼ変更なし
と捉えてよいでしょう。
東京学芸大学[2022/05/20発表分]
《数学Ⅰ・Ⅱ・A・B・C》
数学Ⅰ・Ⅱ → 全範囲から出題
数学A →「図形の性質」,「場合の数と確率」から出題
数学B → 「数列」,「統計的な推測」から出題
数学C → 「ベクトル」から出題
《数学Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・A・B・C》
数学Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ → 全範囲から出題
数学A → 全範囲から出題
数学B → 「数列」,「統計的な推測」から出題
数学C → 「ベクトル」,「平面上の曲線と複素数平面」から出題
筑波大学の出題範囲は東京大学・大阪大学とも異なります。
筑波大学の出題範囲は
2024年度までの出題範囲から
『数学B』「統計的な推測」が新しく出題範囲に追加
『数学A』「整数の性質」が除外
※厳密に言えば,整数の約数や倍数,ユークリッドの互除法や二進法が除外
と捉えてよいでしょう。
北見工業大学[2022/09/09発表分]
《数学Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・A・B・C》
数学Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ → 全範囲から出題
数学A → 全範囲から出題
数学B → 「数列」,「数学と社会生活」から出題
数学C → 「ベクトル」,「平面上の曲線と複素数平面」から出題
北見工業大学の出題範囲は特殊と言えるでしょう。
北見工業大学の出題範囲は
2024年度までの出題範囲に「数学と社会生活」が追加
と捉えてよいでしょう。
ただし、「数学と社会生活」を扱う学校・塾・予備校はかなり少ないため、各自の対策が必要となる可能性が高いでしょう。
4.まとめ
東京大学を目指すような学校では
数学A → 「図形の性質」,「場合の数と確率」,「数学と人間の活動」
数学B → 「数列」,「統計的な推測」
数学C → 「ベクトル」,(「平面上の曲線と複素数平面」)
を学習する必要があると言えます。
今後、指導が難しい点としては
生徒の第1志望によって、数学の出題範囲が異なる点
です。
2025年度に関しては、既卒生も存在するため仕方ありませんが、高校生の負担を少なくするためにも、出題範囲は統一してもらえると助かるものです。
[東京大学系] 今のところなし?
[大阪大学系] 奈良女子大学・埼玉大学
[筑波大学系] 三重大学
[東京学芸大学系] 今のところなし?
[北見工業大学系] 今のところなし?
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