楽音と雑音
楽音とは物理的には雑音だ。
ピアノにおける雑音の最大は鍵盤が棚板を打つ音だ。
では鍵盤は棚板にぶつからないように弾けば美しく聴こえるのだろうか?これはこれで全く違うのである。
浮ついた音で弾いてはいけないと言われる。その時の音がこの音なのである。腑抜けた音だと言われることもある。
では更にもう一歩前に進んでみよう。
この腑抜けた音は使い物にならない音なのだろうか?それもまた違う。
所謂レジェロはこれに近い。ある時にはこの音そのものである。また、例えばショパンの「エオリアンハープ」の細かい音に代表される音も、ひとつひとつは言うところの浮いた音だ。
メロディにおいて、或いはマルカートにおいて浮いた音はいけないと注意されるのは当然だが、全ての音を弾き切って良いはずもまた無い。
つまるところピアノの音とは様々な雑音の組み合わせだと言える。(棚板を打たぬ音にしてもやはり物理的には雑音であるから)
ひとつ確実に言えることがある。それはハンマーが弦を打つポイントにエネルギーが集中することが極めて大切なのだということ。
それを逃して棚板を打つ力が最大になった時、楽音という雑音は雑音という楽音になり下がるのである。