原典至上主義
大袈裟なタイトルを付けておいた。
バルトークの「子供のために」は子供に弾かせると良い曲集のひとつだ。元来がわらべ歌だし、題名からあれこれ空想して歌詞を作ってあげると子供は喜ぶ。
しかし厳格な人達は何処にでもいる。
すべての曲にオリジナルの歌詞が印刷されている楽譜がしっかりと存在するのである。
歌詞は我々にはまったく馴染みのないものである。国も時代も違うのだ、当然のことだろう。
だが、これが印刷されていると全く違う歌詞や情景を想像して作る気力が削がれるのもまた仕方ないことだと思われる。
ある年代から上の人達は「夜汽車」を知っているだろう。夜汽車の汽笛を知らぬ世代でもあの歌を知れば一種の懐かしさを感じるかもしれない。
この曲は元々はドイツ民謡で「もし僕が鳥だったら、そして2枚の羽を持っていたならば君のもとへ飛んで行くのだが。でもそれは叶わぬことで僕はここにいるのだ」という歌詞である。
遠いところに、恐らくは遠くの恋人に心を寄せるこの歌詞は大変美しい。日本語の歌詞はその郷愁に似た想いを大変見事に再現していると思う。
似た態度でバルトークの「子供のために」に接してみようではないか。
まったく馴染みのない歌詞を紹介されるよりも音楽からあれこれ想像したお話を紡いだ方が子供にとっても良いと思われるのだが。