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懐かしい愛おしさを連れて

夏のコンクールも終わり、部活を引退した。 朝練のために早い時間に登校する必要もなくなったけれど、変わらぬ時間に友人の家のインターホンを押している。変わったのは、毎日家に上がるようになったこと。 友人が髪を直したり身支度しているのを感じながらボーッとしたり、昨夜聴いたラジオの話をしたり、朝のニュース番組をふたりで観ながらぽつりぽつりとリアクションする。そうしてテレビが決まった時刻を映したら登校する。それが日課になった。 ある日、いつものようにふたりで朝のニュース番組を観ている時

    • 小説「クラバート」

      ドイツの一地方に伝わるクラバート伝説をもとにしたプロイスラーの長編小説「クラバート」。荒地の水車場で働くこととなったクラバート少年は親方から魔法をならうが、三年後、自由と愛を得るために生死をかけて親方と対峙する。 クラバートに助力する友人が出てくるのだが、親方に勝つには自分の意志力が必要だと説く。意志力をきたえるためにふたりは特訓をする。そうして自分の意志がいかに重要なのかを度々こちらに教えてくれるわけだが、ふたりの特訓が描かれるくだりには「ほねのおれる仕事」というタイトルが

      • 映画「すばらしき世界」

        この作品を表す時に、タイトル以上の言葉はないのではないかと思わされた映画「すばらしき世界」。殺人を犯した三上が、13年の刑期を終えて出所したあとの日々が描かれている。短気だが優しい一面もある三上。困っている人を見過ごせないような三上には社会は生きづらそうだった。三上が自分を抑えて悪意に迎合する時、私も胸が爆発しそうだった。これでいいのか?これが「自分を大切に」社会に順応することなのか?正直わからなかった。 終盤、三上に贈られたコスモスは心の目でのみ見られる大切なものを形として

        • 産毛に見たもの

          緑のガーベラを買った。とてもかわいい。変わった形をしている。花屋さんによると、花開く前に収穫したガーベラらしい。開花していなくてもこんなにもかわいい。これから開花しようがしまいがずっとかわいいだろう。そしてわたしもそうだ。何ができようとできまいと関係ない。一生かわいくて尊い。 帰り道、包装紙からぴょこんと飛び出したガーベラに何度も目をやる。茎の産毛が柔らかな陽の光に透けていて愛おしいと思った。

          いとしいマンサク

          少し前に花屋さんでマンサクを買った。ひと月くらいを共に過ごしてくれた。とてもよく水を吸い上げる子で、花瓶の水が少しずつ減っていくのが可愛くておもしろかった。 朝起きて温かいものを飲む。大抵は何かをしながら飲むことが多い。 少しずつ減る花瓶の水を見た時に、枝の根本から先、葉っぱや花の端々まで水が浸透していくのを想像した。 次に温かいものを飲む時は自分の身体に潤いが満ちていくのを想像しながら飲んでみようか。そしたら少しずつ、ハートにも浸透していかないだろうか。

          いとしいマンサク

          味噌と塩の相乗効果

          味噌汁をぶちまけた。テーブルも床もびちゃびちゃだ。最悪だ…と思いつつ、このくらいの災難が大きな災難の身代わりになってくれたのかもと思案する。 …テーブルの引き出しの中も味噌汁の湖じゃないか。 前言撤回。最悪だ。これは大変な掃除となる。今日はもう何も上手くいく気がしないから大きめの決め事は明日の私に任せることにした。 拭いたり捨てたり磨いたり、初めて塩まで撒いたりもして。そうして清らかな空気が漂う部屋で、今日は自愛に徹することとする。 (追記) 失くしたイヤリングも見つけ

          味噌と塩の相乗効果

          母の日

          今日は母の日。LINEを開くとカーネーションを差し出す子と愛おしそうに抱きしめる母の動くイラストが出てきた。ウッ。涙腺を刺激される。最近こういうものにめっぽう弱い。自分の卒業式でも1度も泣いたことがないし、日々励んだ部活の引退の時に周りが涙涙の中、泣き真似をしたらすぐに親友にバレたくらいには感涙とは縁遠かった昔。それが今となっては。 テレビのワイプで涙する芸能人を見てニヤニヤしてしまうティーンの私が聞いたら驚くかな。実は今日、すでに2回感涙してます。(PM2時)