
「小天天子宮火の神祭り」~悪病退散・無病息災を祈る火渡り神事~(熊本県玉名市天水町)
玉名市指定重要無形民俗文化財。
悪病退散・無病息災を祈り、小天で1,300年続く伝統の「火の神祭り」。
境内の中央に高く積み上げられた松の木・松葉の火の手が夜空を焦がす中、ラッパが鳴り響き、氏子衆の若者たちが拝殿になだれ込んでいく。
大人たちはこれを止めようとし、押し合いの攻防が続く。
拝殿では少年たちの神楽舞が奉納される。

さらに燃え残った熾火が四方に広げられる。
御幣を持ち烏帽子に狩衣姿の少年が熱い炭の上を素足で駆け抜ける。



小天天子宮の「火の神祭り」


令和5年(2023)10月14日。
熊本県天水町小天。
小天天子宮(小天神社・小天少彦名命神社)。
祭神は少彦名命と大国主命、建立は奈良時代の和銅六年と伝わる。


火の神祭り
境内の中央に積まれた「庭木」。

午後7時過ぎ。
古式に則り火起こしされた火が松明に。
高く積み上げられた松の木と松葉に四方から一斉に火がつけられる。






境内の中央で「庭火」が燃え上がると、拝殿で神楽舞の奉納が始まる。


喇叭と太鼓の鳴り響くなか拝殿の攻防
境内に鳴り響く喇叭を合図に、節頭区の若者が榊を先頭に走り込む。


拝殿に駆け上がろうとする若者と、大人たちとの押し合いの攻防が続く。


火の勢いが増し夜空を焦がす中、若者の走り込みが繰り返される。





「庭火」が燃え尽きるまで、走り込みと神楽奉納が続けられる。

1,300年続くこの祭りのはじまりは、8世紀初めの肥後国司「道君首名」が小天で疫病を鎮めるため七日七夜火を焚き祈り、その効験を確かめようと三度火渡りして一切火傷を負わなかった故事に由来する。
火渡りの後疫病は治まり人々も治癒。そこでこの地に神社を建立したという。
火押し
やがて燃え尽き真っ赤な熾火が残ると、「火渡り神事」の準備が始まる。

氏子衆の松明が囲み照らす中、締め込み姿の男衆が「火押竹」を運び込む。
「火押し」のため火押竹3本の先端に、藁の大束33把をくくりつけていく。


藁束を括りつけた「火押竹」で、熾火を拝殿近くまで押し広げる「押火」。



熾火は平たく押し延べられ、「火渡り神事」の準備が進む。


火渡り神事

無病息災・悪病退散を祈願する伝統の「火渡り神事」。
神楽の舞手から神籤で選ばれた少年2人が、烏帽子・狩衣姿に御幣を持ち、熾火を蹴立てながら素足で駆け抜ける。

二人交互に3度ずつ行う。


節頭区は小天の11地区の輪番制で、この年は港区が務めた。
「小天天子宮火の神祭り」は、玉名市指定重要無形民俗文化財。
小天「火の神祭り」保存会により、受け継がれ守り伝えられている。





【小天天子宮・小天神社】(熊本県玉名市天水町小天1170) https://maps.app.goo.gl/ucxaeVdL3sXPt8Jt6
小天天子宮の火渡り神事(玉名市公式ウェブサイト) https://www.city.tamana.lg.jp/q/aview/177/1353.html
撮影日:2023年10月14日 Camera:Nikon Z 50