2階建て新幹線は伝説へ
10月1日の定期運行終了、そして団体列車としても区切りをつけた2階建て新幹線E4系。まずはお疲れさまでした。
食堂車とグリーン車の一部が2階建てとなって新幹線に姿を現したのは国鉄時代の末期。0系ばかりだった東海道・山陽新幹線の新型電車として100系がデビューしたのですが、その注目をグッと集めたのが16両編成の8号車に連結された食堂車と9号車のグリーン車でした。
騒音対策から都市部では線路脇に背の高い壁が設けられて、窓から景色を眺めるのが難しくなっていたなかで、通路を階下部分に通して階上部分にゆったりと客席を設ける。当時の0系の食堂車は通路が山側にあって壁面に窓がなく、そうすると食事中に富士山が見えないということで通路の壁にも窓が設けられたというエピソードも何のその、線路脇の壁も関係なく山側・海側の景色が存分に楽しめるようになりました。
JRになってからも食堂車は階上がグリーン席、階下がカフェテリアに変わったものの増備が進み、東北・上越新幹線でも組み合わせは異なるものの階上グリーン席、階下普通個室のものが1両追加、そしてさらに1両が追加されて東北新幹線では16両編成が実現しました。
同じ頃ぐらいから新幹線通勤も一般的なものとなり、とりわけ上越新幹線では群馬県エリアからの利用者は増加の一途。そこですべての車両が2階建てとなる編成を投入することになって、12両編成の巨体がお目見えしました。初代MAX、E1系でした。
E1系はその持ち味から人気を博しましたが、12両編成という組み合わせの関係で、さらに弾力的な運用ができればということで8両編成を基本として、列車によっては2本つないで16両でも運行できるようにしたのが、今回引退したE4系でした。いかり肩といってもいい大きな長方形の断面から絞り出されている、カモノハシの如くのずんぐりむっくりの前頭部はなかなか不思議なかたちをしたものでしたが、風切り音や風圧を逃がす当時の最適解がこのかたちを生み出したといわれています。
目的に通勤輸送があるため、一部の車両は3ー3配置の1列6人がけという思い切った構造となっていましたが、2編成連結したときの1,634名という着席定員は高速列車として世界最大級の輸送力を誇ったものでした。
時代が進むともに新幹線はさらなる高速化へベクトルを向け、登場当時は十分高速であった240km/hという営業最高速度は、2021年現在で最も遅い速度となっていました。東北新幹線は320km/h、上越新幹線も北陸新幹線が金沢まで到達した頃には275km/hが当たり前となっていたのです。
そして寿命ということもあって、2019年度には定期列車から撤退する流れに向かっていたE4系なのですが、台風通過による大雨で長野の電留線が水没して、車両不足が生じたことから撤退が先延ばしとなりました。初期のスケジュールでは既に過去帳入りしたはずだったというわけです。
今後の展開においては当面出てくることがないと思われる2階建て新幹線。E4系については新潟県の新津鉄道資料館で先頭車が展示されています。
東海道・山陽新幹線の2階建て新幹線については、愛知県のリニア・鉄道館で食堂車が展示されています。
他にも数両が工場などで保管されており、一般公開の時に見ることができる車両もあります。
2階建て新幹線を見学に行く機会がありましたら、その大きさをぜひとも実感してみてください。
それでは次回の投稿まで、ごきげんよう。