旅の伴にした本(49)ーあの日、小林書店で。
話には聞いていたけど、聞いていたとおりの感動ものでした。
「あの日、小林書店で。」川上徹也著、PHP文庫。
商店街にあるまちなかの本屋さんと、出版取次会社に就職して何の縁もない土地に配属された新入社員のやりとりを土台とした物語……なのですが、場面展開がとてもユニークで、新入社員フェーズと本屋さんフェーズの切り替わりが明快で、その構成が作品の世界により没入できるようになっているのがたまりません。
少し前までは街を歩けばそこここにあったように思える本屋さん。本を読む人が減っているとはいえども、本がある限りはそれを並べて、お客さんに手に取ってもらいたいと願うようすが作中にも出てきます。一方で、数多く出版されている書籍群が心地よく巷間を流通しているのかというと、そうでもない状況が取り次ぎ目線や書店目線においても描写されており、書籍業界の課題も浮き彫りになっている作品でもあります。
書店の主人が語るエピソードの数々。後半に進めば進むほど、先へ先へとしっかり読みたくなってくる内容となっており、しかもそれだけの揺さぶりを読者にもたらしてくれる。
読書が好きで、本屋さんも好き。もし未読ならば是非とも書店で購入して読了していただきたい。もちろん、後から読むなんてことではなく、前からじっくりと読み進めてもらうのが王道です。
それでは次回の投稿まで、ごきげんよう。
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