まごやん、論者を斬る
エアコンの室外機が唸りを上げて回転している。世間では夏休みが早く終わって登校が始まったと聞いた。きっとまた何人も倒れてしまうだろう。8月も終盤だと言うのに、どうしたものか。
今日も空にはお日様がポツンとあって、あと青い空が広がるだけ。人々が日陰から日陰へ歩いていく。昼には日陰なんてどこにもなくて、ジリジリ焼かれていく感覚を覚える。
焼かれると言えば、WoTで自走砲に撃たれる事を「焼かれる」という事もある。空からあり得ない角度で降り注ぐ榴弾。最近は防ぐのが難しいMAPも増えて、頭が痛くなる。
我らがウンバボ族では、自走砲撲滅運動を標語として、自走砲を破壊することは「鉄の掟」に定められた義務である。
↑クランのブログより
↑クランのディスコードより
さて初夏の事だ。私たちがウンバボ村の田んぼに稲を植えて、安心していた頃だ。
宮殿の門の前で、騒いでいる男がいる。
すぐさまウンバボ鉄血親衛隊が飛び出して来て、その者を捕らえた。男は「まぁ話を聞け」という。
「スコGに乗っていて、アメリカ自走砲の貫通弾を2発も受け、一瞬で死んでしまった。そのうちの1人はウンバボ族だった。ウンバボ族は自走砲撲滅運動をしているのではないのか。」と訴えた。
ちょうど夕方で、夕席が終わって定例御前会議になったのであった。いつも通り粛々と話していたが、誰かがついうっかりその者の事を話してしまった。
激怒したのは副司令まごやん氏だ。
「部族でありながら自走砲に乗るとは極めて悪質である。直ちに見つけ出し斬るのだ。」
宥めたのは、きりしま氏。
「まぁまてまて、その男、本当に信用できるのか。試してみる必要がある。」
族長は「きりしまさんに任せる。」と言って席を立った。
かくして宮殿の中庭に、その男が連れてこられた。きりしま氏は尋ねた。
「部族の者が自走砲に乗っていたのは誠か。」
男は答える。
「本当だ。-UB- と書いてあった。名前は忘れたが、ウンバボでは自走砲に乗るのは許されていないはずだ。俺の戦車を破壊した罪は許されない。Twitterに晒して損害賠償請求をする。」
きりしま氏は言った。
「よく分かった。その者を探しておこう。さらに尋ねるが、その戦場には何両の自走砲がいたか。」
男が言った。
「3両いた。うち1両がお前らのところの自走砲だ。M40なんとかだったと思う。到底許せることではない。」
きりしま氏はさらに尋ねる。
「お前はその戦闘で、部族の自走砲か、あるいは他の自走砲を倒したか。」
男が答えた。
「倒していない。戦闘開始直後の移動中に装輪に見つかって、袋叩きにされた。」
すると黙っていたまごやん氏が口を開いた。
「つまりお前は自走砲を倒す事もできずに、我々に訴えたのか。」
男が「そうだ」と言うや否や、まごやん氏は剣を抜いた。そして鬼の副司令官は叫んだ。
「ウンバボ族の鉄の掟は死んでも従わねばならぬ。鉄の掟には自走砲を抹殺せよと書かれているのだ。にも関わらず自走砲を倒す事もできずに訴えるとは!例え部族でなくとも許せぬ!恥を知れ!」
そうしてまごやん氏はその男を斬ってしまった。
きりしま氏は静かに頷いていた。
後で私がその男の死体を確かめると、1回の斬撃に対して11個の傷痕が残っていた。私は身の引き締まる思いで、静かに手を合わせた。