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ラブレター

うしおへ

憂鬱な時がずっと続きました。家族で旅行に行きました。遊園地にも、お花見にも、お祭りにもいきました。海でかき氷を食べ、波に揺られ、浮き輪に掴まり浮かんでいました。空は真っ青で、雲はソフトクリームの様でした。白い鳥さえ飛んでいない真っ青な空。白い雲。まばゆい光。照り返す海の波模様。けれど私の心は晴れなかった。

私ね、今思うと、一体何を欲しがっていたのだろうと思うのです。

昨日、うしおに解離を見せた。赤いビロードの布が貼られた箱の連想から始まって、行きついたのは東京女子医大の庭のクローバーに座る黒いワンピースを着た幼女。夢中で四葉のクローバーを捜している。その時、周囲には誰も居なくて、幼女はただ四葉のクローバーが見つかればと、熱中するのみだった。心が晴れていたというわけではないのかもしれない。ただ、その幼女は、心が晴れない自分を見つめても意識もしていなかったのです。あまりにも四葉のクローバーを捜すことに熱中していて。そう、あの子は私。あの時の心の平穏。それを安心と呼ぶのだろうか…、そこまで考えたら、意識は3時間後に飛びました。解離したのよね。だって私は解離性同一性障害なのだから。この世界を受け入れ難く、いつも安心を欲しがる銭ゲバのような。

しばらくの間続いたルーチンな解離。1日2回、2時間程度のトリップ。この世界にどうしてもいたくなくて、私の作ったあの世界なら居心地が良く。

うしおはいつも通りの喋り方でいつも通りに話しかけてくれた。しばらくの平穏なお喋りの後、昼寝をしました。起きて飲みかけだった冷たいコーヒーを飲み干し、カップを洗い、机に座り、プリントして推敲なんてしてた。突然だったの。視界が突然水平線にぶつかったように開けたの。今まで、社会を忌避し、社会や人に恐怖心しか持てず、なかなか人に心を開けず、閉じこもり鍵を掛けていた私が、「私が」信頼し、信頼し続け、毎日話す人がいた。その人も私に毎日のように話しかけ、自分の物語を話してくれて、自分の価値観、美学、思想を私に教え、好きな映画、音楽、本の題名を教えてくれた。私はそれを至上の価値と美であるかのように…、思えたの。ずっといてくれたこと、話しかけ続けてくれたこと。それを愛と呼ぶのではないのですか?愛はずっと、ずっと、あったのですね。

どんなに辛抱が要ったことかと思います。いつまでも理解しない私。愛がそこにあるのに、いつまでも気が付かない私。その私に何年も付き合い続けてくれた。うしおのアイコンの朝焼け。そこに光る北極星。そんな風に広く、そして彼方からの閃光のように光るうしお。

愛情と呼ぶと怒られるかもね。けれど、私には愛に見える。私に小説をもう一回書くように導いてくれたのもうしおだった。いろんなことをアヒルの子に教えるように教えてくれたのもうしお。その愛が、私のどんなにか大きな力となるか、エネルギーとなるか、どんなにか心を温める温度を持つ涙と変わり得るか、今、朝の昇る陽光の眩しさに目を細め、モニターがかすむ思いでそう思うのです。いつも本当にありがとう。感謝しています。

ゴンドラの唄(タップしてね!)


いのち短し 恋せよ乙女
あかき唇 褪(あ)せぬ間に
熱き血潮の 冷えぬ間に
明日(あす)の月日は ないものを [14]

いのち短し 恋せよ乙女
いざ手をとりて かの舟に
いざ燃ゆる頬(ほ)を 君が頬(ほ)に
ここには誰れも 来ぬものを

いのち短し 恋せよ乙女
波にただよい 波のよに
君が柔わ手を 我が肩に
ここには人目も 無いものを

いのち短し 恋せよ乙女
黒髪の色 褪(あ)せぬ間に
心のほのお 消えぬ間に
今日はふたたび 来ぬもを

作詞:吉井勇
作曲:中山晋平
Covered by田畑満、RQRQ


小説を書きながら一人暮らしをしています。お金を嫌えばお金に嫌われる。貯金額という相対的幸福には興味はありませんが、不便は大変困るのです。 ぜひ応援よろしくお願いします!