昭和経済史⑤アメリカ占領下の日本経済
昭和経済史の5回目です。前回はアジア太平洋戦争下での戦時経済をまとめました。今回はGHQ占領下での日本経済をまとめていきます。
1.GHQによる改革
GHQによる占領体制は、これまでの日本政府と行政機構を解体してしまうのではなく、温存させ占領軍の政策を、日本政府を通じて実行させるという間接統治に決まりました。1945年9月2日に東京湾上の戦艦ミズーリで降伏調印が行われ、連合軍が日本に上陸し、日本の占領統治が始まりました。
降伏直後のアメリカ軍の日本統治の方針は、「軍隊の解体」「軍需産業の破壊」「日本の経済規模を生活水準ギリギリまで下げる」大きく分けるとこの三点でした。
軍需産業の破壊という点では、例えば鉄鋼やアルミニウム、造船など平和利用できる産業もあるのですが、軍事利用できる産業は破壊するのだという方針で、人造ゴム、アルミニウム、マグネシム工業は全部破壊され、発電設備、鉄鋼、工作機械、化学工業、大型電気機械、火薬、通信施設、鉄道施設、鉄道車両、造船所、船舶は相当な規模で破壊されました。
1947年1月の極東委員会の決定では、日本の生活水準は1930年〜1934年当時の水準に置くと定められ、一部「日本は、彼らが侵略した国よりも貧しくなるべき」といった意見もあり、厳しい敵対的な意見が多数派でした。
そんな中で、憲法改正や経済の大幅な改革が進められました。経済改革は大きく3つあります。
財閥解体・独占禁止法
当時のアメリカ人は、日本社会は未だに封建的な制度を強く残しているがため、国民は生活水準を押し下げられ、市場が狭くなり、帝国主義的な行動を促したのだ、という理解をしていました。
その封建的な制度の代表格が「財閥」でした。創業家のファミリービジネスとしてはあまりにも巨大であるにも関わらず、経営は閉鎖的で不透明であるのが問題視され、三井、三菱、住友、安田の4大財閥をはじめ、中堅を含む11の財閥が解体されました。当時、4大財閥は日本の全企業の全株式の24.6%を保有するという巨大さでした。
財閥のファミリーは全員追放され、大企業の経営に参加することは禁止されました。1947年には三井物産と三菱商事が解散させられ、両者の社員が10人以上集まって会社を作ることすら禁止されました。
財閥解体の直後には独占禁止法が制定され、トラストの結成、トラスト行為、国際カルテルへの加入、会社役員の兼務、法人が他の法人の株主になることまでも禁止する非常に厳格なものでした。厳格すぎて外資が日本に進出できないということで、1949年には国際カルテルへの加入と法人が他の法人の株主になることは緩和されました。
集中排除政策
独占禁止法のあとにでてきたのが集中排除政策です。
これは市場における自由競争を促すため、独占的な企業が存在できなくする制度を作るというものです。市場の価格や取引量に影響を与える企業を分割するという目的で、1947年12月に「過度経済力集中排除法」が制定されました。
これにより、大日本麦酒(現在のアサヒビール、サッポロビール)、三菱重工業(東日本重工業、中日本重工業、西日本重工業)、王子製紙(苫小牧製紙、本州製紙、十條製紙)など、17社が分割させられました。本来は300社以上が分割させられそうになっていたのですが、後で述べる占領政策の変更により大幅に緩和されました。
農地改革
農地改革は戦時中に農林省により進んでいましたが、アメリカはより地主の支配力を破壊する政策を求めました。小作人の地位向上は農林省の悲願でもあったので、農林省が率先して農地改革案をまとめました。
地主の保有面積は5ヘクタールまでとするという案でしたが、アメリカ側のもっと厳しくせよと指令を受け入れた第二次農地改革案が1946年に採用されました。その内容は、農村に住んでいる地主には1ヘクタールまでの農地保有を認めるが、都会に住んでいるような不在地主は全部取り上げて小作人に売らせるというものでした。
この政策により、長年地主の経済的支配を受けてきた小作人は解放され、経済的にも豊かになっていきます。その一方で先祖代々受け継いできた土地と資産を没収された地主の中には、没落して貧困に陥る者もありました。
そのほかには、労働組合法、労働基準法、労働関係調整法の「労働3法」がつくられ、労使関係の制度的基礎がつくられ、戦時中解散させられていた組合が復活し、労働者の組合加入が進んでいきました。当時の労働組合はストライキや会社側のロックアウトなど戦闘的な活動が行われ、激しい組合運動が行われました。
アメリカがもたらした一連の民主化政策は、大企業による独占・寡占を排除し、地主による小作人の、資本家による労働者の搾取を防ぐことにつながりました。
これにより、工業分野では中小企業の自由競争による技術革新が進んで戦後経済復興を大きく牽引することになりますし、農業分野では小作人が豊かになることで農業技術の発展が進み農業生産量も増えていきます。
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