聖杯／カップの７

聖杯／カップの７

大まかな意味（正位置の解釈）

　　虚空から様々なものが入った聖杯が7つ現れて、絵の人物はそれにとても驚いている様子です。このカードは様々な選択肢が目の前に展開されている状況を示すいわゆる「ウィッシュ・カード（願望成就の暗示が強い、恵まれた状態を示すカード）」とする人も多いですが、筆者は吉凶混合と読みます。
　　聖杯の中身を一つ一つ見てみましょう。上段左から、これは美しい女性でしょうか、美少年でしょうか。それを得られるのでしょうか。一つ飛ばして、上段右。金色の蛇がこちらに向けて出てきています。蛇は知恵の象徴でもありますが、同時に危険や悪知恵の象徴でもあります。蛇毒を使って作る血清が目的でもない限り、取らない方が無難そうです。続いて、下段左。崖の上に建てられた城でしょうか、教会でしょうか。堅牢な建物を得られるのでしょうか、それに相応しい地位を得られることの暗示でしょうか。筆者は、この聖杯の中身を見ると大アルカナの中でも最強の破壊作用を持つ「16、塔」を思い出して、この聖杯には手を伸ばしたくないような心境になります。次に、宝石の入った聖杯があります。即物的ですが、本物であれば悪くはない報酬です。右から2番目の聖杯にはなんと勝利を示す月桂冠が描かれています。素晴らしい！と思いきや、聖杯にドクロらしきものが浮かび上がっています。どうもこの勝利には死が付き纏うようです。わざわざ警告されているということは、大勢が死ぬのか、この人物にとって大切な人が害されるのか、あるいはこの人物自体が落命の定めを辿るのか。救国の英雄になるために命をも投げ出す覚悟がある人物でもない限り、容易に手を出して良い代物ではなさそうです。下段一番右には、有翼の竜がこちらを見て威嚇をしているようです。この聖杯は試練をもたらすのでしょう。竜はキリスト教においては悪魔を示します。1人の力で立ち向かうことは困難でしょう。
　　最後に、説明を飛ばした上段中央の白いヴェールを被った人物らしき存在です。赤い光を纏っており、あからさまに絵の人物に対して“私を選んで！”とアピールしているようにも見えます。未知のものですが、タロットにおいては白色は純粋な力や神の意思を暗示します。これを選んで間違いはないのでしょう。――7つの聖杯に幻惑されているこの人物が正しく選べればいいのですが。この絵柄から「聖杯/カップの7」はトリップや酩酊状態、現実逃避ができるような精神薬や酒類、タバコやギャンブル、時折色事への依存を示すカードでもあり、非常に注意が必要なカードの一枚になっています。
　★大まかな意味：白昼夢、様々な可能性が目の前にある状態、吉凶のどちらに転ぶか分からない状況、様々な選択肢を前に浮き足立つような状態、（飲み会の後などの場合）明らかな飲み過ぎや酩酊、（カードの組み合わせによっては）薬物や物質や人間関係への依存
　★人間関係/恋愛上の意味：「大まかな意味」とほぼ同じ。特に相手の全容や本性が見えておらず、幻想を強く抱いている状態が示唆される。「月」と似たような意味を持つため、かなり注意が必要。
　日常における物事との関連：酩酊、様々な選択肢、引っ張りだこの状態だが全員が善意とは限らない状況、敵も味方も入り乱れているがどこか楽しさを感じてしまう危険な状態、薬物や酒類や人間関係などの刹那的な快楽に弱い人物

逆位置

　　逆位置になると、7つの聖杯からそれぞれの贈り物や呪いが落ちていきます。酩酊するような心境から、何を選ぶべきなのかがはっきりしたのかもしれません。あるいは、何を選ばないことが正解だと気づいたのかもしれません。浮き足立つような楽しい心境から一転、急に現実を見せられてげんなりするようなこともあるでしょうが、いつかは対処しなければならないことが人生にはあります。いつまでも空想の中にいられるわけではないことをこのカードは示しています。実体のないものに縛られ続けられる期間は、人間が物質を持った生き物である以上は意外と短いのです。空から地面に落ちたような気分にもなりますが、地面がある分まだ歩くことができます。
　　ところで、「聖杯/カップのエース」〜「聖杯/カップの5」、「聖杯/カップの6」の物語を見てみると、やはりこれは「聖杯/カップの5」の人物が失意の中で過去を「聖杯/カップの6」のように思い出し、そして心を癒すプロセスの中で未来に向けての「聖杯/カップの7」のような吉凶入り混じった可能性を見ているのではないかと筆者は解釈しています。当然、「聖杯/カップの5」の遠景で見えていた城壁都市が「聖杯/カップの6」の集落とも似ているため、「聖杯/カップの5」の人物が見た「聖杯/カップの6」の光景の後に、突如として「聖杯/カップの7」が示す様々な可能性が顕現したとも取れます。そもそも、これほど多くの選択肢は「聖杯/カップの6」が示すような豊かな環境がなければ提供できないものです。
　　また、正位置の物質依存の文脈で語るならば、このカードは辛い離脱症状やリハビリ中の人物を示すこともあります。この場合、必要なのは周囲のサポートです。それが受けられるように取り計らえるといいですね。
　★大まかな意味：夢から覚める、現実を叩きつけられる（大体は楽しい気分から一気に血の気が引くような形）、幻滅する、限界を知ってそこから見極める、詐欺やペテンに気が付く、うまい話には裏があることに気がつく
　★人間関係/恋愛上の意味：「大まかな意味」とほぼ同じ。今まで感じていた幻想が成立していかないことに気づくようなニュアンスが強い。関係が遠い場合は幻滅の印象が強まる。
　日常における物事との関連：幻滅、ペテンが暴かれる、嘘がバレる、薬物依存からの回復、リハビリ、何かの悪癖を断ち切ることやそのための事業など