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聖杯/カップの10

聖杯/カップの10

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大まかな意味(正位置の解釈)

  虹のかかる平和な光景で、2人の成人した人物が身を寄せ合って喜び合い、また子供2人は踊り合って楽しさを享受しています。空には雲一つなく、丘も緑で生い茂っており、建っている家も高価な赤い塗料で屋根が塗られています。まるでおとぎ話の終わりのようなめでたしめでたしの結末です。
  一貫して他の人物との喜びの共有や理想の甘美さを語っている「聖杯/カップ」のスートですが、果たして本当にそこまで他者に重きを置いた物語だったでしょうか。2人以上の人物が描かれたのは「聖杯/カップの2」、「聖杯/カップの3」、「聖杯/カップの6」、「聖杯/カップの10」の4枚のみです。この少なさは「剣/ソード」のスートの“3枚”に次ぐ数字です。他にも「棒/ワンド」、「金貨/ペンタクル」のスートも4枚ずつ多人数のカードが出現していますが、関係者の数の少なさで言えば「剣/ソード」を思わせます。知性も他人との交流や関係で発揮されるものですが、主観が大きく混じります。同じことは「聖杯/カップ」にも言えます。「棒/ワンド」の行動や情熱は多人数を巻き込みますし、「金貨/ペンタクル」の豊かさや洗練は社会的なものです。そのため、やや客観的に測れるスートではあります。「聖杯/カップ」の満足や理想は他者を巻き込むものではありますが、満ち足りるかどうかについては個々人の心次第です――そのため、「聖杯/カップ」のスートは同じく非常に主観的な「剣/ソード」のスートと同じく、人物の数が少なく描かれているのではないかと考察しています。
  「聖杯/カップの10」は4人の人物を描いていますが、表情が判然とするのはせいぜい青いチュニックの女児らしき人物ぐらいです。「金貨/ペンタクルの10」のように、各人の思惑が分かるわけではありません。確かに、今は全てが調和している理想的な状態かもしれません。ですが、そこに情熱はありますか?現実に根差していますか?知的に解剖しても望ましい状態と言えますか?それが「聖杯/カップ」のもたらす甘い陶酔感で誤魔化されていないかだけが心配なカードです。これらの条件をクリアしているならば、この酔いしれるような幸福感、対人関係上の理想の実現は一度は経験してみたい人生の甘露です。夢や理想、ロマンスや全ての精神価値を共有“できているような”幸福こそ、人として生きる意味なのかもしれません。人間が良くも悪くも非常に精神的な動物であることを、このカードは指し示しています。
 ★大まかな意味:蕩けるような陶酔感、理想や愛情が完全に共有できているような感覚、当人同士の陶酔感がとても強い関係(多くは健全な関係だが夢見がちな空気が強い)、とてもロマンチックなひと時
 ★人間関係/恋愛上の意味:「大まかな意味」と同じ。その人が思い描いている理想の関係に近い、というニュアンスが強くなる。
 日常における物事との関連:人間関係における幸せの絶頂、おとぎ話のめでたしめでたしに憧れる人物、絵本や児童書、恋愛小説、ロマンス映画、社員の多くが理想を共有しあっている企業など

逆位置

  逆位置になると、正位置で語った懸念が的中します。恐らく、情熱、現実、知性、あるいはそもそも「聖杯/カップ」が示す精神性や共感力が足りずに、「聖杯/カップの10」で語るような理想が実現できないのでしょう。そのため、このカードは誰かと理想が共有できない状態、理想に手が届かないと悲観している状態、そもそも理想を共有できる人物がいないために全てを否定的に捉えてしまっている状態を示すことが多いように思います。「聖杯/カップの10」の理想自体がそもそも間違っている場合もあり得ます。あるいは、世間一般で言う幸せではあるが、自分が実現できるかわからない(多くは情熱、金銭/権力、相手方の内の何かが絶対的に噛み合わず、実現不能に陥っていることが多い)、あと少しのように見えるのに、理想が手に入らない状態を示します。正位置で示す強すぎるほどの幸福感が翻って、咽び泣くような悲しみが暗示されるカードです。
  このカードを得ている人物は、自分も他人も大切にできていないことが多いです。理想や心とは誰かとの間で育まれるものです。何かの理由でそれが、特に理想の核心部分が共有できていなければ、そもそも自分や他人を含む誰かを慈しむための土壌すら培えないのです。何より世知辛いのは、理想は理想のままにしておけば却って虚しさが募るだけである点だと言えます――やはり理想の実現には、情熱、現実、知性、感性の4つが揃わないといけないのです。
 ★大まかな意味:自分は理想には届かないだろうという悲観、純粋に理想を欲しがるが自分はきっと手に入らないだろうという絶望、壊れた家庭や人間関係、何かが根本的に機能不全を起こしている状況
 ★人間関係/恋愛上の意味:かつては共にいられた関係が静かに別離へ向かっていく様あるいはそのような気持ち、かつての栄光を失って冷えていく関係、もう共に歩めないような悲観
 日常における物事との関連:人生を悲観している人物(そしてそうするに足る根拠がある場合が多い)、壊れた家庭、修復不能な人間関係、形骸化した理想、時代に取り残された理想のあり方

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