技能実習のベトナム離れ、終わりの始まり
先日、愛知県大府市の「株式会社Minobordo」の代表取締役 井村稔さん(下写真)に話を聞く機会があった。
同社は技能実習生や特定技能人材を含め、企業の外国人受け入れに関するアドバイス業務を行っている。
代表自らが運営責任者を務めるウェブサイト「ガイコクジンコネクト」には、建設、ビルメンテナンス、食品加工、自動車整備等、様々な業種の受入企業から問い合わせがあり、独自のハウツーと外国人ネットワークを駆使して相談に応じている。
このコロナ禍においては、雇止めで実習停止となった案件の監理団体支援や、帰国困難者となった実習生の転職相談など、従来には無かった新しいタイプの相談も出てきているそうだ。
今年3月の実習生入国再開から約半年が経ったが、ビフォーコロナと比べて、今現場ではどのような変化が起きているのだろうか。
井村さんは、「技能実習の本格的なベトナム離れが始まっている」と語る。実習生全体の6割を占めるベトナム実習生については、以前から質の低下が囁かれてはいたが、それが顕著になってきた。
「まず、日本語能力のレベルが相対的に下がりましたね」と井村さん。
コロナ禍により、多くのベトナム送出機関が日本語教師のリストラや事業の縮小を余儀なくされた結果、教育力が低下し、以前の水準を保つことができなくなっているとみている。
日本語能力が足りない状態で入国してしまうことで、日常生活におけるルールを理解することができない。職場でも円滑なコミュニケーションが取れず仕事の覚えも悪い。結果、想像していた実習生活とのギャップから精神的に追い詰められる。
この悪循環が失踪を誘発し、ベトナム実習生の悪評に至っているのではないかと井村さんは憂慮する。そして「建設職種については、もうベトナムは厳しいかもしれません」と重ねる。
特にとび、鉄筋等、とりわけ過酷な作業については面接が成立しないケースさえも出てきているそうだ。
ベトナムは年々賃金が上昇し、日本との経済的格差が縮まっていることから、実習生として出稼ぎに行くメリットは減っている。そこに最近の円安が大きく影響を与えていると井村さんは分析する。
日本で得られる給与はベトナム通貨換算で、一昨年に比べて25%も目減りしている。月30時間程度の残業をこなしてようやく以前と同レベルの収入になるといった具合なのだ。
これでは苦労してまで日本語を学び、来日しようとする熱量が上がらないのも仕方がないのかもしれない。
かつて中国からベトナムへシフトしたように、今ベトナムから次なる第三国への移行が始まろうとしている。
技能実習制度を意義あるものとして継続していくためには、日本側が一方的に選ぶという構図ではなく、いかに選んでもらうかという視点を持つことも大切であろう。
(※このコラムは、ビル新聞2022年9月26日号掲載「技能実習、ベトナム離れの始まり」Vol.42を加筆転載したものです。)
実習24時」を加筆転載したものです。)
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